工場内の大型機械、設備などは、忙しいときはメンテナンスもなかなかできるものではありませんので、今年については、設備メンテナンスに集中しようと考えているところも多いのではないでしょうか。同時に管理体制のメンテナンスの絶好の機会でもあるのではないかと思います。
工業系の低迷は、深刻ともいえる状況になりつつあり、従業員の半分を解雇したという企業も現れ始めました。大規模なリストラを予定している企業も少なくないと思いますが、単に代償金を支払って解雇するだけというのも、少し、もったいない気がします。
「就業規則作成方法」の項で少し、述べていますが、日系企業の就業規則は、タイ企業と比較すると、かなり親切で、良心的です。たとえば、有給休暇は、法律上では、「勤続年数満1年以上は6日」であり、2年だろうが3年だろうが、6日でいいのですが、「2年以上は7日、3年以上は8日」など、年数に従って増やしているところも多いのではないかと思います。ボーナスは、法的には支払う必要は全くないのですが、「6月と12月に1ヶ月以上を支給する」となっていたり、婚姻についても「祝金・・・バーツ、3日間の有給休暇」、となっていたり、そのほか退職金など、支払う必要がないものをあまりにも多く、定めてすぎているように思えます。

こういった就業規則の作成経緯をきいてみると、会社設立時にタイ人マネージャーが作った、というケースが多いのですが、彼らは被雇用者であって、経営者ではありませんから、放っておくと、自分にも都合がいいように作りたがるのは、ごく自然の心理といえるでしょう。設立当初は、タイの事情もよくわからないところがあり、そんなときに、「タイではこれが一般的」「タイ人社会ではこうだ」とタイ人に言われれば、まあ、それなら仕方ないかな、とついつい思ってしまうもので、だんだん事情がわかってきはじめると、なんだ、全然、一般的じゃないじゃないか、と腹が立ってくる経験というのは、タイに長く住んでいる人であれば、誰しもあるのではないでしょうか。
企業は「人」ですから、従業員のことを大切に思うのはいいことなのでしょうが、今のこういった不景気の時期に突入すると、コストダウンは当然のことですし、利益がない状況でボーナスを払うというのもおかしな話です。経営者の側からすれば、コストダウンは当然の処置であっても、従業員の側からすれば、就業規則に定められているのに払わないのは「不誠実」「嘘つき」と映るでしょう。
景気がよければ、従業員に利益を還元する、景気の悪いときには、従業員にも辛抱してもらう、従業員もそれで納得する、そういう労使関係が築ければ一番いいわけですが、就業規則にいろいろ入れてしまうと、管理体制が硬直化してしまい、従業員から嘘つき呼ばわりされかねません。柔軟性、適応力を持った管理体制を作るには、就業規則を法律最低限にしておくことが必須だと思います。

たとえば、就業規則では、ボーナスは定めておかず、景気がよく、利益が発生したときにいくぶんかボーナスを払っておけば(どうせ法人税で持っていかれるわけですから、会社の純利益には、それほど影響はないでしょう)、景気の悪いとき、払わなくても、就業規則には定められていないんだし、景気が悪いんだから辛抱してくれ、景気がよくなったら、また払ってあげるから、と説明すれば、その言葉にも説得力が出てくるのではないでしょうか。少なくとも、従業員の受け止め方は違ってくると思います。
「管理体制のメンテナンスの絶好の機会」「単に代償金を支払って解雇するというのも、もったいない」というのは、大規模リストラを決行する前に就業規則を見直し、余計な部分を削ってはどうか、ということです。まず、余計な部分を削って法律最低限にし、賛同できない者は、代償金を支払うから辞めてくれ、とするわけです。どうしても辞めさせたくない従業員が手を挙げてきたときは、基本給を上げるなどして慰留し、どうでもいい従業員であれば、代償金を支払って、そのままサヨナラ、さらに辞めさせたい従業員も同時に解雇すれば、捨て金ともいえる代償金も単なる捨て金とはならず、長い目で見れば、意味のある出費になることでしょう。
何も考えずに解雇すると、そのときは、一時的に人件費が節減できるかもしれませんが、長期的視野でのコストダウンを考えた場合、事前に各方面でいろいろな布石を打っておくことが必要になってきます。

最低限にするというのは、従業員を締めつける、というのとは、全然意味が違っています。景気のいいときは気にならなくても、景気が悪くなってくると、どうしても従業員に支払うボーナス、手当が気になってきます。ボーナス1ヶ月、と規定されているにもかかわらず、払わなかったら、従業員は、当然、不満を持ちます。しかし、会社側としては、会社の体力、今後の見通しを考えると、カットせざるをえない、そうなると労使関係が悪くなります。最低限にしておくことは、コストダウンばかりでなく、将来的に発生するかもしれない労使関係悪化を防ぐ布石として、重要な意味を持ってくると思います。
その他、社内のブラックホールを1つ1つ、潰していったらどうかと思います。これも管理体制のメンテナンスの1つと言えるのではないかと思いますが、たとえば、労働許可などは、外部のコンサルタントに丸投げして、どうなっているのか、自身でも全然、わからない、というケースも多いのではないでしょうか。元来、コンサルタントの役割は、最終的には自分が必要とされないようにお客さんをフォローすることのはずなのですが、簡単なことも難しく言ったり、重要な書類は隠していたりなど、お客さんを逃したくないという気持ちはわかるのですが、本来の役割とは、ちょっと外れているコンサルタントが多いように思えます。

社内でもやろうと思えばできるが、今、ちょっと忙しくてやっていられないから、外部のコンサルタントに任せる、というのであればともかく、最初から丸投げしてブラックホールを作ってしまうと、そのコンサルタントと何かトラブルがあった場合、あるいは経営が苦しくなって会社を閉めてしまうようなことがあった場合、こちらもその影響を受けてしまいます。また、一通り、社内でもできるようにしておけば、忙しくて手が回らず、コンサルタントに任せることになった場合、その見積もりが妥当なのかどうなのかという判断もつくでしょうし、強気で値切ることもできるでしょう。
労働許可、ビザの申請、延長は、確かに注意しなければならない事項も多いのですが、ポイントさえ理解しておけば、単に書類を提出するだけの作業ともいえます。タイ語で文書を作成したり、タイ語のフォームに内容を記入したりしなければなりませんので、タイ文字がわからないとできない、という思い込みがあるかもしれませんが、タイ人従業員にフォローさせれば、決して難しいことではありません。 今年に入って「することがない」とボヤくお客さんが増えてきましたが、何をしていいかわからないときに何をするかが、将来的に重要なこととなってくるでしょう。こういう時期は、社内の体制にもメスが入れやすいはずですので、管理体制、業務システムを見直してはいかがでしょうか。 |