3/12/2007

旧iTV、既存番組の行く末は?


 6日、首相府報道局が1000億バーツに上る権利料未払い分と違約金の支払いを求めていた民間放送局「iTV」の事業免許取り消しを閣議が承認、同報道局は「8日午前零時からiTVの放送を一時中止する」と発表した。

しかし、翌7日、国の法律専門機関、法令委員会が「首相府報道局が同局の経営を引き継ぐことが可能」と判断、放送事業の継続は可能となった。

 同局はそもそも91年の軍事クーデター、92年5月、流血の事態に及んだ民主化弾圧事件の際、既存テレビ局が軍のいいなりだったとの反省から報道専門局として95年に誕生したタイ初の独立放送局だった。

 その後、タクシン前首相が支配するシン・コーポレーションが大株主となるなど、政治に翻弄されてきた放送局とも言えるだろう。

 筆者にとっては、iTVは比較的よく見ていた局だ。というのも同局が毎週放送している報道番組「トート・ラハット(直訳すれば「暗号を解読する」の意)」を楽しみにしていたためだ。

同番組は社会問題の背景などを探り、不正などの実態を暴くというものだ。MCOT(9チャンネル)が放送していた、同ジャンルの番組「ルム・ダム(ブラック・ホールの意)」も以前はお気に入りだったが、年明けから、タイトルを変更し、ソフト路線に走ってしまったため、「トート・ラハット」への期待をますます高めていた矢先の、同放送中止決定だった。

 02年、修士論文作成のため、iTVを訪問したことがある。当時タイで盛り上がっていた日本大衆文化のタイでの普及状況や影響などをテーマとしていたため、日本のテレビ・ドラマを数多く放送していたiTVの担当者にインタビューするのが目的だった。その際の雑談で、「『トート・ラハット』が好きなんですよ」と筆者が話すと、同担当者は「同番組の製作者は命がけでやってます」と回答。その言葉が今でも印象に残っている。

 タイの放送局ではバラエティー・歌番組などが多く、ハードな社会派報道番組はあまり多くない。今後もトート・ラハットが継続して放送されることを熱望しているが、今のところ予断を許さない状況だ。

 いずれにせよ、iTVから名称変更した「TITV」が、どのような変化を遂げるかは気になるところだ。【written by 井田】 

3/09/2007

タイはマッサージ天国

 バンコクの街中には、いたるところに気軽に入れるマッサージ店があり、筆者も時折立ち寄るのだが、先日ふと気づいたことがある。

 ある店でフットマッサージを受けていたところ、日本人の中年旅行客3人組が入ってきて、隣の席に座った。2人が女性で1人が男性だった。

 店にはひとり掛けのソファが横一列に並ぶ。こちらは心地よくマッサージを受けていたのだが、隣の中年女性2人が文句を言い出した。

「おしゃべりしないで集中してやってほしいよね」。マッサージをしてくれる店員たちは仲間同士でおしゃべりをしていたのだ。

 そういえば、タイに住み始めた頃、店もたくさんあるし安いから気軽にマッサージに行ける、とあちこち行っては、店員がマッサージをしながら仲間や携帯で話しているのに驚いたことがあった。日本ではおそらくあり得ないからだ。

 でも、今ではそんなおしゃべりにも慣れてしまった。それでマッサージの手が止まるわけでなければ、むしろ楽しいものとして聞こえてくる。【written by 雪々】

3/08/2007

不安感じたアイススケート・クラブの安全管理


 昨年12月に都内ラチャダピセーク通りにオープンした複合商業施設「エスプラネード」は、日に日に客足が増えている。連日のように各種イベントが開催されており、若者の集いの場として定着しつつあるようだ。

 そんな中、3月1日、アイススケート・クラブ「サブ・ゼロ」(写真)が同施設最上階にオープン。ウィンター・スポーツが大好きな筆者は、さっそく行ってみた。「常夏の国に住むタイ人はどの程度、アイススケートに関心があるのかな?」と思っていたのだが、予想以上に多くの若者や子供たちで賑っていた。

 日本のアイススケート・リンクと比較すると規模は小さいものの、クラブ内にはDJブースやバーが設置され、エンターテインメント性に優れている。

 しかし、その一方で、安全面の管理には非常に不安が残る。

 滑走中のマナーやルールが明記されておらず、危険な滑走を行う客に注意を促す係員もいない。Tシャツなどの薄着で、手袋をつけずに滑っている客や、無理な暴走を続ける若者客を多く見かけた。

 アイスホッケーをやっていた友人によると、頑丈な専用グローブを着けていても、スケート・シューズの刃で指を切断してしまうことがあるという。初心者の客が多いタイだからこそ、運営者には安全面の管理に特に気を配ってもらいたい。【written by 黒田】

3/07/2007

テロの脅威を実感した週末

 仏教日などに、南部のイスラム教分離独立派によるテロが首都バンコクの繁華街で起こされる可能性があると、日本大使館やオーストラリア大使館、英国大使館が注意を促している。軍政もその危険性を明らかにした。

 さる3月3日は、仏教日の中でも重要なマーカブチャーだったこともあり、軍事政権も警戒を強めていた。その日の午後、筆者はあるホテルのスイミングプールで昼寝をしていたが、階下の道路をパトカーがサイレンを鳴らして何度も通り??ひょっとしたら??と不安になった。実際には何事もなく、ほっとした。年末に連続テロが発生し、今やバンコクでのテロにも現実味があるのだ。

 次のテロ警戒日は、イスラム過激派結成記念日の3月13日から15日にかけてとされる。さらにその先は4月半ばのタイ正月、ソンクラン、そしてカオパンサーと限がない。

 中国正月の2月18日に最南部で大規模な連続テロが起き、南部情勢は行き着くとこまで行った観がる。最近はタイ国軍によるテロ組織への攻撃も続き、多くのテロリストを殺害した。新聞等には容疑者の釈放を求めるイスラム教徒女性の姿が大写しになっている。

 テロリストに対しては断固とした姿勢が必要だ。しかし、その一方で、力と力の応酬の結果、ますますバンコクへの拡散が危惧される。

 タイ最南部はかつてマレーシア領だったという歴史的な経緯から、長らく分離独立運動が続いてきた。しかし、この3、4年は情勢が急激に悪化している。その背景には米国同時テロ以降、国際的なイスラム過激派の活動が活発化していることがあるだろう。

 スラユット暫定首相は、南部問題の解決には数年を要するとの見方を示しているが、何をもって「数年」としているのか分からない。その間にどんな調整方法があるのだろうか。イスラム教徒がタイのことを自国と思えるようにするにはどうしたらいいのか。タイが解決できれば、世界的な見本となるのだが??。【written by 水谷】

3/06/2007

文化相、女子大生の素行に苦言


 2月28日、バンコク都内ワットポーで行われた式典に出席したカイシ文化相は同行した記者から「寺院内で露出度の高い制服を着用した女子大生が外国人と異常に親しげに話している」との報告を受けた。

 そこで、文化相はその学生に近づき、「どこの大学の学生ですか」と尋ねたところ、かなり乱暴な言葉使いで、「ラチャパット大学よ。何でそんなことを聞くの」と答えが返ってきたという。このような対応に免疫のない文化相はびっくり。「これがデパートであるなら問題はないが、寺院に相応しい服装であるかどうか分からないのか。ましてや女子学生が寺院で喫煙するとは……」と憤りを露にすることとなった。

 これを受け、ラチャパット大学スワンドゥシット分校では翌日、問題の女子学生を文化省に連れて行き、文化相に謝罪している。(大学側では、英会話の課外授業の一環であったと説明しているが、服装に関しては事前に注意しなかったことも認めている)

 最初は寺院内での服装を問題視していた文化相であるが、その後、大学構内でもある程度の制服規制は必要との認識を示し、全大学に検討するよう通知した。

 先日も、タマサート大学の女子学生が出席した映画祭で露出度の異常に高い服装をして大学から厳重注意を受け、15日の社会奉仕活動を命じられたばかり。今後、女子大生の制服論議がいっそう高まることになりそうだ。

3/02/2007

子豚殺し、仏教徒としての問題は?

 昔、小学校社会科の教科書で、収穫され過ぎたため、供給過剰による値崩れを恐れた農家が、トラクターでキャベツを踏み潰している光景が紹介されていた。当時、アフリカなどの貧困地域で、飢えに苦しむ人々の姿と見比べながら、子どもながらに「もったいない。飢えている地域に送ればよいのに」と矛盾を感じたものだ。需要と供給によって商品の価格が決定されるということを、理解していない子どもながらの発想だが、何か腑に落ちない感じはいまだにある。

 タイ中部ナコンパトム県で先日、豚肉価格の下落を不満とする養豚家が民衆の前で1500頭以上の子豚を殴り殺した。供給過剰による値崩れに反発し、起こした行動のようだ。しかし、その対象が植物のキャベツと動物の子豚では、意味が随分、異なる。

 タイは殺生を禁じる上座部仏教徒が国民の大半を占める国だ。その一国民が衆人環視の中で、1500頭もの子豚を殴り殺したというのだから、一般のタイ人に与えた衝撃は相当なものだったはず。もちろん、屠殺場では毎日、数多くの家畜が殺されているが、それと今回の子豚虐殺事件とは話が別だ。

 自身の生活がなりたたなくなるという恐怖感を持った養豚業者の心情は理解できるが、政府への抗議方法は異常としかいいようがない。

 しかし、こういう事件をみると、生活が宗教や信条を凌駕するのか、とすら思えてくる。いずれにせよ、動物好きの筆者としては、やるせない事件だ。【written by 井田】


2/27/2007

過剰な広告が変える街の顔


 バンコク都内のギャラリーで、元上院議員クライサック・チュンハワン氏の個展(※)を観た。クライサック氏はチャチャイ元首相の息子で、首相やバンコク都知事のアドバイザーを務めたことのある人物。クーデター直後には暫定政権から外相の打診を受けた政界の有名人だ。

 展示されていたのは、タイの風景を撮影した写真をプリントしたもので、同じ場所の2枚の画像が対でひとつの作品となっている。1枚は広告のあふれる風景、もう1枚にはそれらを取り去った風景が写っている。

 2枚を見比べると、街中の広告の多さに驚く。

 アメリカの歌手サリナ・ジョーンズは、来タイした折、「バンコクの高速から見える大きなビルボードはカリフォルニアを思い出させる」と言っていた。確かに、去年10年ぶりにバンコクを訪れた時には、空港からの高速道路をタクシーで走りながら、高層ビルと大型の広告看板の多さに驚いた(写真はスワンナプーム空港へ向かうタクシーの車窓からの風景)。

 東京に住んでいたときは気にも留めなかったが、いま東京の映像を見ると広告の多さに改めて気づかされる。

 しかし、過剰な広告に限った話ではなく、新しいものを見ることによって見失うものもある。見失ったものを想像する力も必要だということを、クライサック氏の作品は訴えている。【written by 雪々】


※「Imagine the Sky」
カトマンズ・フォトギャラリー(シーロム通りからパン通りに入った左側)にて。3月28日まで