2008年
1340号(9月15日〜9月21日)
【第16回】 
ゴミ山スラムでの生活


タイ西部ターク県の田園地帯にあるゴミ山

  『スカイ・ブルー・スクール』と名づけられた小学校に近づくとゴミと水の強烈な腐敗臭が鼻をついた。

 学校の裏側にはゴミ山がそびえており、上部にはシャベルカーが乗っている。そのゴミ山には家も点在していた。

 『スカイ・ブルー・スクール』は、タイ西部ターク県メーソート郡に隣接するメーパー郡の田圃地帯にある。ゴミ山のスラムは通常、バンコク、マニラ、プノンペンなど大都市にあり、国境の地方都市にある例は珍しい。同校は2年前に設立され、現在、幼稚園生から小学4年生まで105人が学ぶ。教師は6人だ。

 ゴミ山は町から外れた田圃の中にあるため、ゴミ山の周辺に出来たスラムの住民らは、子どもを都市部にあるミャンマー人労働者のための学校に通わせることができない。それでいて、子どもたちがいては働くことができない。 

ゴミ山の家に住む子ども

 そこでできた小学校が『スカイ・ブルー・スクール』。地元のNGO「ビルマ人外国人労働者教育委員会(BMWEC)」の支援により運営されており、授業料は無料だ。

 しかし、すべての子どもがこの恩恵に預かれるわけではない。ゴミ山の家に住むシュマちゃん(仮名)は12歳の女の子。このゴミ山に住んで2年になる。小学校は2年の時に辞めた。「両親がゴミ山で働いているので学校に行かせてくれないの。将来のことなんか考えたことない」と下を向く。1日ゴミ山で働くと、50バーツ前後になるという。もっとも、大人が働いても1日50バーツから100バーツであることからすると、子どもといっても立派な労働力だ。シュマちゃんは、雨季特有の強い雨が降ってきてもゴミの分別作業を続けていた。

 人間の尊厳を傷つけ、健康を害する有害物質と悪臭に満ちたゴミ山での生活。不法滞在の外国人移民労働者にとって住居・職業の選択肢はそう多くない。

「スカイ・ブルー・スクール」で学ぶ生徒。ここはゴミ山とは別世界だ

 小学校の教室で一所懸命勉強する子どもたちの生き生きとした顔。それに対して、黙々とゴミを選別するシュマちゃんの無表情な顔。その違いには愕然とさせられる。

 子どもは、生まれる場所を選ぶことはできない。『スカイ・ブルー・スクール』の名称とは、あまりにも対照的なシュマちゃんの顔と生活。仕事柄、各国のスラム、ゴミ山、貧農に行くことは多いのだが、それでも、ここのゴミ山での人々の生活には言葉を失った。ゴミ山の家から空はどのように見えるのだろうか。『スカイ・ブルー』の文字が空しく見えた。




(社)SVA常務理事兼アジア地域ディレクター
八木沢克昌