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号(2007年12月24日)の政治ニュース
 

PTT民営化訴訟、労組、消費者団体を告訴へ
国王陛下、「遵法と正義」を強調
ソンマイ副財務相、禁固刑判決受け辞職
タクシン前首相の1年、海外から存在をアピール
タクシン派、不在者・在外投票に不信感
民主党、国民党との連立に意欲


■PTT民営化訴訟、労組、消費者団体を告訴へ
「国民を誤解させ国に損害を与えた」

 国有石油ガス会社「PTT」(元タイ石油公社)の民営化取消を求める訴訟は、最高行政裁判所が今月14日に「民営化は合法」と判断、同社はSET上場廃止を免れることになった。しかし、今度はPTT労組が、「あらぬ噂を広めている」として原告である消費者団体幹部を相手取り、裁判を起こす構えをみせている。

閣議決定の内容などを従業員と株主に説明するプラスートPTT社長

 民営化訴訟では、「PTTが所有する天然ガスパイプラインと敷設地を国に移譲すること」が命じられたことを「部分的勝訴」とする消費者団体は、これを足がかりに刑事・民事訴訟で、「PTT民営化による国への損害」について責任の所在を明確にするとの声明を発表した。

 PTT労組が問題視しているのはこの声明の内容。同労組のティラポン副代表は、「消費者団体幹部の社会活動家は、PTT民営化についてPTT、労組、エネルギー相の間に利害を巡る確執があると吹聴している。我々は自らの潔白を証明する」と話す。

 また、同労組のナタコン代表は、「国民を誤解させ、国に損害を与えた」と批判。また、上場企業PTTの経営に悪影響を及ぼすことは避けられず、証取法に抵触するとして、証券取引委員会に提訴することも検討中という。

 一方、天然ガスパイプラインなどの国への移譲は、先の閣議で正式に決定。パイプライン、そして、2001年の民営化以前にPTTの前身・タイ石油公社(PTT)が収用した土地などを含め総額151億3000万バーツ相当の同社資産の所有権が国に移されることになった。

 ただ、PTTが所有するパイプライン全体の7割を占める海底パイプラインは引き続きPTTが所有、運営する。

 PTTは今後、天然ガスパイプラインの使用料を支払うことになるが、プラサート同社社長は、使用料は5%であり、今後30年間で合計88億バーツ、資産移譲に伴う納税が20億バーツ程度と見積もっており、PTTにとって大きなダメージではないとのことだ。

 なお、消費者団体の訴えで、最高行政裁が、タイ発電公社(EGAT)の民営化を無効としたことがあることから、市場関係者は、PTTの上場廃止が回避されたことに胸をなで下ろしている。タイ発電公社の場合、すでに株式会社化が完了しており、タイ証券取引所(SET)への上場も決まっていたが、これが最高行政裁判所の判決で覆された。市場関係者は、この大型上場が国内証券市場に活気を与えると大きな期待を寄せていたが、民営化が非合法とされたことで、同社は国有企業のタイ発電公社に戻されることになった。


■国王陛下、「遵法と正義」を強調
新任裁判官の認証式で

 プミポン国王陛下は12月17日、チトラダ宮殿で執り行われた新任裁判官の認証式で、「非合法な活動や偏見に惑わされずに法を遵守し、正義を守ることが大切だ」と強調された。

 まずウィチャイ最高裁長官率いる新任裁判官が認証式に臨んだ。ここで、陛下は、「間違った道、偏った道を好む者がいまだにいる。そのような者たちは、いつも裁判官を騙そうとしている。しかし、裁判官は心を強く持って正義を守らなくてはならない」と訓示。

 さらに、「悪者は法で定められた処罰を受けぬよう裁判官を欺こうとしていることを忘れてはならない。法が正しく運用されなければ、悪が蔓延り、国が滅びることになる。このため諸君には、ここでの宣誓を肝に銘じてほしい」と忠告された。

 その後に行われた軍事裁判所新任裁判官の認証式でも陛下は、「裁判官が利己的になれば、国民が対立し、国のために仕えることが難しくなる」と、遵法精神の大切さをご指摘。「偏った考えが正しい行いを妨げる。また、偏った考えは、利己的になることで生ずる。このため、滅私奉公を常に心がけることが非常に大切」と諭された。


■ソンマイ副財務相、禁固刑判決受け辞職
国有会社役員を不当に処分

 ソンマイ副財務相が12月13日、刑事裁判所から名誉毀損の罪で禁固2年の有罪判決を受けたことから、閣僚を辞職することになった。現行憲法182条には、上級審への控訴の有無にかかわらず禁固刑を受けた者は閣僚の資格を失うと規定されている。

 ソンマイ氏は、国有海運会社「タイ・マリタイム・ナビゲーション」の理事長を務めたことがあるが、その際、「怪文書に基づいて停職処分を受けた」とタサポン副社長(当時)から理事4人(当時)とともに訴えられた。その一審判決が先に刑事裁判所によって下された。 
 
 この裁判では、「怪文書の内容を調査中にもかかわらず、当時のソンマイ理事長ら5人は不当に副社長を処分した」とされ、被告5人を有罪とし、禁固2年の刑を言い渡した。

 タサポン氏によれば、ソンマイ氏など被告は、自分たちのミスで会社に1億バーツに及ぶ損害を与えたことを隠蔽するため、同氏に罪をなすりつけたものという。

 刑事裁判所は、被告5人の犯した罪から判断すれば禁固3年が相当だが、これまでの社会貢献を考慮し禁固2年に減刑したのとことだ。

 また、スラユット首相は、ソンマイ副財務相の辞職を受け、チャロンポップ財務相と対応を協議したが、新たに副財務相を任命する必要はないとの結論に至った。現内閣は、総選挙に伴う新政権誕生でその役目を終えることになるが、スラユット首相によれば、ソンマイ副蔵相については、やり残した仕事もなく、新しい副大臣を探す必要はないとのことだ。


■タクシン前首相の1年、海外から存在をアピール
英国・日本・香港など飛び回る

 昨年9月19日、国連総会出席のため訪れていたニューヨーク滞在中に起きたクーデターで失脚したタクシン前首相。その後、タイに帰国せず、ロンドンを拠点とした海外生活を送りながらも、常に海外からその存在をアピールしている。タクシン前首相の1年を振り返る。

タクシン前首相の人生を変えた軍事クーデター

 2007年1月11日、タイ外務省はタクシン前首相の公用旅券を無効としたことを発表した。前首相が各国を訪問し、要人と面談していることに業を煮やした政府の措置であるが、これに対して前首相は、「将来、外相と外務省高官の責任を追及する」と怒りを露にした。というのも、それまでタイでは首相離任後も外交特権を受けられる公用旅券の所有を認めるのが慣例だったからだ。

 4日後の15日には、アジア・ウォールストリート・ジャーナルのインタビューで、「現政権の経済政策は間違っている」との政権批判を披露。「まさかこの時代にクーデターが起きるとは夢にも思わなかった」との心情を吐露するとともに、「今後、政治にはかかわらない」と発言した。しかし、このインタビューは軍部が放送自粛を求めたことから、タイ国内では放送されなかった。そして、このことは、タイ国内のマスコミから、「行き過ぎたタクシン封じ込め」との反発を生むことにもなった。

 また、タクシン氏が同月、シンガポールを訪問した際、副首相など複数との閣僚と会談したことで、タイ政府が態度を硬化。月末に予定されていたシンガポールとタイの公務員交換プログラムが無期延期となっている。

 その後、オーストラリアで家探しをしていることなどが報道されたが、2―4月は目立った言動はなかった。

 しかし、5月に入るとまた話題を提供。FAプレミアリーグに所属するサッカーチーム、マンチェスター・シティーFCの買収を計画していることが大々的に報道された。そして、70億バーツともいわれる買収資金の調達元ががぜん注目されることになり、政府委員会は監視の度を高めることになる。

 そして、同月30日には、歴史的判決が憲法裁判所により下された。タイ愛国党が政党法違反容疑で有罪となり、解散を命じられたのだ。さらに、役員111人が5年間の公民権停止処分を受ける。つまり、選挙に立候補できず、政党の役員にもなることができないなど、表舞台での政治生命を奪われることになった。これにはタクシン前首相も、「厳しすぎる判決」と驚きを隠さず、元党員に対しては、政治活動を継続するようエールを送っている。

◆拓殖大で客員教授に就任
 6月7日、拓殖大学茗荷谷本校で客員教授に正式就任したことを発表する記者会見が実施された。そして、7月5日に、「アジア型経営経済モデル」をテーマにした、初の講義を行い、350人の学生と教職員を集める。

 6月に入ると、政府特別委員会によるタクシン前首相の不正疑惑追及は一気に厳しさを増すことになる。同月11日、タクシン前首相の銀行口座が一時凍結されることになった。第1回目の対象は520億バーツ。この口座凍結はその後、家族・親族にも広がっていく。すでに解除された口座もあるが、大半はいまだ凍結中だ。

 しかし、この資産凍結のなか、7月、ついにマンチェスター・シティーを58億バーツで買収。会長に就任する。

 調査が加速するなか、法務省特別捜査局は、都内一等地の土地不正取得容疑で7月26日までにタイに帰国し、出頭するよう前首相に命令する。だが、タクシン氏は「総選挙が終わるまでは帰国しない」と公言。このため、政府は生活の拠点とみられる英国政府に対して、身柄引き渡しを要求することも検討したが、実行には移されなかった。

 また、7月からタクシン前首相に関連する書籍の出版が続く。同月、香港で開催された「香港書籍フェア2007」では、中国語で書かれた共著本「タクシンの24時間」が発表される。同書には、クーデターで人生がどのように変わったかが中国語で記されている。

 翌8月は陸軍系「チャンネル7」の女性リポーター、スニサ中尉が、ロンドン滞在中のタクシン前首相の生活を紹介した「タクシンはどこに?」が出版された。しかし、これは軍内で問題視され、同中尉は除隊を余儀なくされている。

 9月には、「タクシンはどこに?」でタクシン氏との親密な関係が指摘された若手女性歌手、リディアさんが「タクシンはここにいる」を出版。同月7日に出版記念パーティーを行い、愛人説を否定した。

 11月に入ると、自らがオーナーとなったマンチェスター・シティーを利用してのパフォーマンスが登場。同月16日には、バンコクで記者会見を行い、タイ代表チームの3選手と入団契約を結んだ。この記者会見では、タクシン会長のビデオメッセージが流された。

 そして、12月、訪問先の香港で「すべての政党が協力・結束して困難に立ち向かう政権を2年間設置し、その後、新憲法下で総選挙を実施するのが望ましい」とする挙国一致政府樹立を提案している。


■タクシン派、不在者・在外投票に不信感
中央選管 「記録的な投票数」

 不在者投票、在外選挙の結果に対して、タクシン支持陣営から「ごまかしではないのか」とする意見が出ている。

 中央選挙管理委員会によれば、今回の総選挙は国民の関心の高さを反映し、全国で不在者投票した有権者は約300万人という記録的な数字となった。これまでの国政選挙では、政府の呼びかけにもかかわらず、不在者投票する人は有権者の一部分にすぎなかった。 

 しかし、チャトゥロン元タイ愛国党党首代行によれば、不在者投票のための用紙が事前に大量に用意されており、政府が投票者数を水増しして発表した疑いがあるという。関係筋によれば、不在者投票を操作することで、政府が反タクシン派に有利な開票結果をでっち上げるではないかと懸念する声も出ているとのことだ。

 また、不在者投票は、本籍地以外で投票することになるため、本籍のある選挙区で誰が立候補しているかがよく分からず、誰に投票するか迷う人が少なくなかったという。アユタヤ県で不在者投票をしたある男性(本籍・ナコンラチャシマ県)は、「3年も故郷を離れているため、候補者についてよく知らない。故郷の家族に電話して誰に投票するかを決めた」と話していた。

 一方、外務省の報告によれば、在外選挙では、これまでを上回る海外在住のタイ人が選挙人登録をし、投票を行った。登録者数に占める投票者数の割合が100%、すなわち登録者全員が投票した国も少なくなかったという。外務省では、外国で暮らすタイ人が民政復帰に向けた今回の総選挙に強い関心を示していることが高い投票率につながったと説明している。

 昨年9月のクーデターで実権を掌握した軍部は、「政権奪取が目的ではない」とし、新憲法制定、総選挙という民政復帰のスケジュールを決めた。軍部が設置した現スラユット暫定政府も、総選挙に伴う新政権誕生でその役目を終えることになる。


■民主党、国民党との連立に意欲
バンハーン党首、態度を保留

 アピシット民主党党首は12月19日、バンコクのセントラルワールドSC内センタラホテルで行われた政治討論会の席上、民主党がタイ国民党と連立政権を構える意向であることを明言した。

 タイ国民党(バンハーン党首)は、タクシン氏が創設したタイ愛国党(すでに解党)を中核とする連立政権に参加したことがあり、また、反タクシンを明確にしている民主党とも協力関係を維持している中堅政党。タクシン前首相を支持する市民の力党と、民主党が接戦を繰り広げる今回の総選挙で、キャスティングボートを握るのはタイ国民党との見方が強まっている。

 討論会では、アピシット党首が、「(選挙後)まず最初にタイ国民党に電話する」と話すと、タイ国民党支持の聴衆から喝采が起きた。タイ国民党幹部のスチャート氏も笑みを見せたが、「バンハーン党首が決めるべきこと」と明確な態度を示すことは避けている。

 一方、タイ国民党のバンハーン党首は20日、同党と連立政権樹立を求めるアピシット党首に対し、「申し出には感謝する。だが、返答は投票が終わってからにしたい」と応じている。

 なお、民主党のライバルである市民の力党や国土のため党が、タイ国民党に連立を持ちかけていると一部で報じられているが、これについて、バンハーン党首は全面的に否定した。