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| ■バンコク連続爆弾テロ、日系企業は状況を静観 ■連続爆弾テロ事件、航空・旅行業界にも影響 ■07年タイ経済はどう動くか2. ■バンコク連続爆弾テロ、日系企業は状況を静観 早期の全容解明を要望
昨年、大晦日から元旦にかけ、バンコク都内複数箇所で発生した爆弾テロ事件は、多くの死傷者を出すなど、在タイ日本人にも大きな衝撃を与えた。しかし、現在のところ、容疑者の特定・逮捕もされておらず、事件の全容解明にはまだ時間がかかりそうだ。同テロは在タイ日系企業のビジネスにも影響を与えるものと見られるが、現在のところ状況を静観しているところが大半だ。 一昨年からの反タクシン運動以降、政治に経済が翻弄されてきたタイだが、昨年末から今年の年明け早々、バンコクで爆弾テロ事件が発生。しかし政治的背景など、現在のところ明らかになっていない。そのため、日系企業各社も状況の進展を見守っているところが、大半だ。 東部ラヨン県に本社を構える自動車部品メーカー社長は「皆、比較的冷静に今回の事態を受け止めている。こちらで事実を確認し、日本の本社に連絡している状況。本社から、特にテロ対策等の指示はない」と説明。同社長は「今回のテロ事件について、正確な背景が分かっていない。事実が分からない上で、おかしな推測はできない。前政権の関係者が起こしたとの見方もあるようだが、あらゆるケースを考える必要があるだろう。短絡的に前政権関係者と結びつけるのはよくない。小売業で一時的に消費が落ち込んだが、通常通りの状況に戻っているとの話も聞いている。しばらくは冷静に状況を見るしかない」と述べた。 一方で、すでに影響が出始めた業界もある。大手総合商社副社長は「現段階では同テロについてコメントできない」としながらも、「日本の本社から特にテロ対応への指示はでていない」と今のところ事態をそれほど重く見ていないことを示唆した。同副社長は「日本企業の海外渡航にあたっての判断は外務省の渡航危険情報に基づいているので、商談に来る予定の客先が、渡航を取り止めるなど影響は出ている。現時点ですでに1〜2社が渡航を取り止めた」と現況を説明した。現在の政治状況について同副社長は「早く政権が安定して欲しい。憲法が制定された上での早期の民政化を望む。政党政治でないのは困る」と訴えた。 また大手AV機器販売会社のゼネラル・マネージャーは「すでに、『しばらくショッピング・モールのような人が集まる場所に、立ち入るのは止めよう』という動きが出ている」と自社の販売にも影響が及ぶ可能性を示唆。同ゼネラル・マネージャーは「テロの背景などがまだ分からないので、今回の爆弾テロの当社に与えるインパクトは今のところ図りかねている。どの程度販売が低下するか現在、検討中だ」と説明した。一方で、外出が控えられることは逆にチャンスでもあることも指摘。同ゼネラル・マネージャーは「外出しないということは、家の中で過ごす時間が増えるということ。01年の米国同時多発テロでもその傾向が示された。屋外で使う製品の販売は確実に落ちるだろうが、屋内で使用する製品についてはよい部分もある。しかし全体的に見れば3月いっぱいはきついかなという印象。観光客だけではなくタイ人にも大きな被害が及んでおり、津波の時より、回復には時間がかかると思う」と楽観できる状況にないことも示した。 また、テロなどに敏感に反応する金融業界だが、証券会社駐在員事務所所長は「テロ以降、タイ証券取引所(SET)の平均株価は下がっている。株式市場はネガティブな反応を見せている」と説明。さらに同所長は「昨年9月のクーデターの際もそうだが、今回も格付け機関がタイの格付け見直しの検討に入っている。日本の本社からは事態を報告し、職員の安全を確保するよう指示が出ている。日本が休みだったこともあり、不要不急なら出勤しなくてもよいと言われている」と述べた。今回の事件にかかわらず同所長は「現暫定政権には粛々と仕事をしてもらい、目に見える成果を挙げて欲しい。また早急な民政化が望まれる」と期待を込めた。 各社各業界により同テロの受け止め方は異なるが、事件の背景がはっきりしない現在、状況を静観するしかないというのが現状のようだ。今後の状況解明・事態の悪化などで各社の見方・対応も変わってくるはずだ。 ■連続爆弾テロ事件、航空・旅行業界にも影響 キャンセル出始める
昨年12月31日〜1月1日に発生した連続爆弾テロ事件は、航空・旅行業界にも影響を及ぼし始めている。日本航空によると、「昨年9月19日の軍事クーデター時程の影響はないが、日本からタイへの出発便についてキャンセルが出始めている」という。同様に複数の旅行代理店でも、日本からタイへのツアーのキャンセルが出始めており、旅行代理店関係者からは「タイへの渡航を考えるお客様の間に不安が広がってきている」、「今後さらに同様の爆弾テロが発生した場合、キャンセルが増える可能性が考えられる」、「今後の予約を考えていたお客様がタイへの渡航を控えることが懸念される」などの声が聞かれた。 一方、軍事クーデター時と比較してキャンセルが少ない理由として、「関係省庁が年末年始休暇中で情報の伝達が遅れたこと」、「1月2日に大手新聞が休刊で、あまり大々的な報道がされなかったこと」などがあげられた。 今回の連続爆弾テロ事件の全容はいまだ不透明。現時点では今後の見通しを立てづらく、タイへの旅行者のための安全対策については検討中という旅行代理店がほとんどだ。しかしジャルパックでは現在、タイで安全に過ごすための注意書きを日本国内の各空港で同社利用客に配布、安全面でのフォローを行っているという。 ■07年タイ経済はどう動くか2. タイの経済ファンダメンタルズは強い SET指数は今年末で750〜760ポイント
タイ証券取引所(SET)上場の証券会社、ユナイテッド証券の此下竜矢最高経営責任者(CEO)に、昨年のタイ経済を総括、今年の見通しについて、語ってもらった。 ――昨年のタイ経済を総括すると? 「タイの経済は発展途上国から先進国に移る段階に入っている。日本で言えば、1960年代のいざなぎ景気の時のような段階。しかし、昨年1年だけを振り返れば、タイには非常にマイナス要素が多かった。年初からタクシン前政権は、反政府運動にさらされた。また同政権は解散・総選挙に打って出るも選挙無効で、暫定政権が継続。このため、予算執行を含め、政府が決断することができなかった」 「その後、タクシン前政権はクーデターで崩壊するなど、政治・経済的に厳しい状況があった。そのような状況でもタイ経済は昨年、なんと、4.5%の経済成長を達成したと見られている。タクシン前政権の進めていたメガ・プロジェクトを中心とするインフラ整備の進行などが大幅に遅延したにもかかわらず、これだけ経済が成長できたというのは、評価に値する。基本的にタイ経済は強かったということだ」 「経済の話をする際に言いたいのは、『表層的なカレントの動き』と『ベース』を完全に分けて考えるべきと言うこと。昨年のタイ経済は、カレントの点では最悪と言える状況だったが、ベースの点で見れば、強かった」 「昨年1年間を通じて、SETは政治情勢の影響を受けるなど、売り買い自体が少なかった。このため、売買ボリュームが少なく、証券会社の立場で言えば厳しい1年だった。しかし、タイの株式市場に上場している銘柄は非常に割安だということ。例えばPER(株価収益率)で見ると、日本の東京証券取引所が22倍となっているのに対し、タイは8〜9倍。中国が20倍、ベトナムでさえ22倍となっており、他国と比べてもタイの株式が割安であることが分かるはずだ。また、配当の点でも、日本が0.9%と低水準なのに対し、タイは4.4〜4.5%と高配当。効率のよい魅力的な市場であることが理解してもらえると思う」 「9月19日の軍事クーデター後、一旦、株価は下げたが、すぐにクーデター前の水準に回復している。一時的な株価下落はニュース等、カレントの動きに左右されたことを示している。しかし、買い戻す力が強かった。これはタイ経済のベースに対する信頼感の裏づけと言えるだろう。それよりも株式市場に大きな打撃をもたらしたのは、昨年12月18日、タイ中央銀行が発表した外為取引規制。この規制を受けて、翌19日には外国人投資家を中心に株式が売り込まれ、資金が流出した」 ――今年のタイ株式市場は? 「タイの経済ファンダメンタルズ(基礎的条件)そのものは悪くないため、SETは魅力的な市場だが、同規制により投資家の信頼感を失った。タイのイメージ悪化は否めない。SETは外国人投資家が主体のため、今後は、世界とつながっている投資家をタイ市場につなぎとめられるかどうかが鍵だ。97年の通貨危機後、マレーシアでも同様の規制が、施行されたが、下落前の株価に戻るまで5年ほど時間を要した。また昨年大晦日から今年元旦にかけてのバンコクでの爆弾テロ事件の影響はカレント的なものだが、今後1〜3カ月間は株価は弱含みで、600ポイントを割り込む可能性も十分にある。しかしタイの経済ファンダメンタルズを考慮すれば、今年の「憲法制定」、「選挙」、「民主的な政権の成立」など、節目節目に向けて株価は上昇していくだろう。同規制前は、憲法が制定され、民主的な政府が成立すれば、今年末くらいに、株価は800ポイントを上回るレベルまで上昇するとみていたが、テロや規制の影響で750〜760ポイント程度に止まる見通し。将来的に予想される株価指数、1200〜1500ポイントの上値も重くなった」 「タイ以外の国から見るとクーデターで軍事政権が成立することは、確かにマイナスの部分がある。これまでタイは東南アジアの中でも民主主義の優等生的評価があったが、5〜10年程度のスパンで見るとマイナスの評価は否めない。しかし、現在、世界的な注目を集める中国は、共産党の独裁体制への世界的な不信感があるにもかかわらず、経済は順調に推移している」 「暫定政権の役割は前政権との糸を断ち切るのみで、それ以上はやるべきでない。また、経済政策については、前政権の進めた政策と何も変わっていない。また資本家よりのタイの政治家の基本的姿勢は変わらないと見ている。暫定政権の問題点について言えば、昨年10月に北部を中心に拡大した洪水に対し、機動的な動きが出来なかった。スラユット首相は早急に現地入りすべきだった。洪水対策に政府が積極的に取り組んでいる姿勢を見せられなかったことはマイナスだ。これでは世論の支持を得られなくなる。いずれにせよ国民が選挙で選んだ人物が政府を作るべきで早くそうなることが望ましい」 ――昨年はバーツ高が進行。バーツ高の背景をどう見るか? また為替・金利および今後のタイ経済見通しについては? 「バーツ高については、タイが魅力的な市場のため、外国人投資家の資金が大量に流れ込んだということ。タイ政府はタイ人の海外投資に規制を設ける方針をとっており、タイ人が海外に投資するのは難がある。そのため、外国人、タイ国内双方の資金により、過剰流動性が高まったことがバーツ高の要因。株式市場についても、中国やインドといったBRICs(前記にブラジル・ロシアを含めた新興経済国)やベトナムの株式は割高だったからだ。これらの国々は投資時期ではないと判断され、タイへの投資が拡大した」 「為替は時々の状況に敏感だが、対ドルについては、今年、来年で見ると予断を許さない。一方で、対円で見ると円安バーツ高となるだろう。円は現在、20年近い円高傾向から円安への転換期にある。5〜10年で巨額の財政赤字を解消するには、インフレを起こして、債務を削減するしかない。そのため歴史的に多くの国で紙幣の増刷が行われてきた。つまり将来的に、日本円の価値は下がるため、円を持っている人には厳しくなるはずだ。今は海外に投資し、数年後に円に交換して利益を得ることを考える時期に来ている。今年のタイ経済の基調としては、昨年同様、よいだろう。公共投資等を政府の後押しで進められればさらによくなると見ている。金利についてはインフレも沈静化しており、上げるべき要素はない」 ――タイの主要貿易相手国である日本と米国の経済はどうか。 「日本経済は長い目で見れば成長していくが、拡大幅は小さくなる。また日本円の価値は落ちていく。米国経済は非常に微妙な時期に来ていると言えるだろう。今年あるいは来年には調整局面を迎えるはずだ」 ――タイ経済の懸念は? 「給与水準が上がっていること。4〜5年前までは米系大手のコーヒーチェーンで、一般的なタイ人がコーヒーを飲むことなどは考えられなかったが、今では当たり前になっている。また5年前までは仕事があればよしとする状況だったのが、スキルのない大学新卒者で1万2〜3000バーツを要求するようになっている。少し前では考えられなかったことだ」
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