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| ■外為取引規制、実務への影響は徐々に解消 ■ESCAPの07年経済見通し、タイは4.7%成長 ■07年タイ経済はどう動く 1. ■外為取引規制、実務への影響は徐々に解消 12月18日、タイ中央銀行(BOT)がバーツ高抑制策として発表した外為取引規制だが、日系企業の取引にも、影響が及んでいる。しかし、規制発表当初から見ると、混乱は解消の方向に向かっているようだ。 ある在タイ邦銀ディーラーは「今のところトラブルというほど、大きなものはない」とした上で、このように述べた。 「各社ともまったく何もできない訳ではない。ただし東京からバーツでタイに送金する場合など、バーツ建てでの送金に障害がある。このためバーツ以外の通貨で送金するよう変える動きが出ている。しかし、一部規制が緩和され、当初出来なかった取引が出来るようになっている。タイ国内への投資については、制約がなく対米ドルでもゆがんだレートにはなっていないが、シンガポール・東京ではバーツの調達が難しく、バーツの需給が逼迫しており、タイと比べてもバーツ高となっている」 また別の邦銀ディーラーは「規制の影響は少しずつ、解消の方向にある。各社とも、対応策が、いろいろ出てきているようだ」と説明している。 同規制解除の見通しは、現状では不透明。日系企業は、多様な対応で乗り切るしか方策はなさそうだ。 ■ESCAP、07年タイ経済4.7%成長の前提 暫定政権の政策・信頼維持 アジア太平洋地域の経済見通し
国連のアジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)は昨年12月14日、アジア太平洋地域の07年経済見通しを発表した。同委員会によると、今年のタイのGDP(国内総生産)は前年比4.7%の成長が見込まれるという。 昨年9月19日の軍事クーデター後、新憲法制定と国民投票、それに基づいた総選挙実施を目指し1年間の暫定政権が発足。しかし、ESCAPは「同政権が歳出、特に公共事業費の透明性を高め、GDP成長のために確固たる役割を担うことが、4.7%成長の前提となる」と指摘した。 一方でESCAPは、現暫定政権が、91年の軍事クーデター後、軍事政権と市民が衝突、多数の死者を出した92年の「暗黒の5月事件」のような政治的不安定を誘発、投資家・消費者の信頼感に大きな影響を及ぼす「最悪のシナリオ」も想定する。 同シナリオでは、GDPは前年比3.1%の成長にとどまり、インフレ率についても前年比約10%の上昇が予想されている。また92年と同様に、消費・投資も前年比2〜3%、第3次産業(特に観光業)の輸出も4%減少。さらにバーツが1米ドル=約46バーツと前年比20%以上下落。バーツ下落で輸出が増加するものの、消費・投資・観光業の大幅な減少が経済成長の足を引っぱると懸念される。 暫定政権はタイ国内の経済的安定や投資家信頼感を維持する責任があるのと同時に、投資政策を策定、歳出の透明性を確保することが重要だ。 ◆中国経済の影響 ESCAPでは07年のアジア太平洋地域全体の経済成長率を前年比プラス6.9%と見通す。同委員会のラヴィ・ラトナヤケ・ダイレクター(貧困撲滅・開発部門)はその理由として、「中国・インドの急速な経済成長」「日本経済の回復」「タイをはじめとする東南アジアへの積極的な投資」などをあげている。 一方で、昨年のアジア太平洋地域全体の経済成長率は前年比プラス7.1%の見通しだが、07年の経済成長率はそれより0.2%減速することになる。理由は、「原油価格の急騰」「中国の成長停滞の可能性」「米国経済の停滞」「回復基調にある日本経済の先行き不透明感」「電子機器の世界的な需要低下」などがあげられる。 特に中国の経済成長が停滞した場合、タイをはじめとする東南アジア各国の輸出に悪影響を及ぼす恐れがある。 ■07年タイ経済はどう動く 1. 世界の金余り状況は続く 今後もタイは買いの対象になる
みずほの出資・コンサルティング会社、MHCBコンサルティング(タイランド)の長谷川光伸社長に、昨年のタイ経済を総括、今年の経済見通しについて、語ってもらった。 ――昨年のタイ経済を総括すると? 「しかし、第4四半期の国内は9月19日深夜に発生した軍事クーデターによる先行き不透明感から、民間消費の部分が伸び悩んだ。これに加え、クーデター後の暫定政権成立後、同政権はプミポン国王陛下が提唱された「足るを知る経済」を提唱。これに呼応する形での投資抑制ムード醸成という側面もあった」 「また10・11月には洪水・台風の作柄不良を背景に、農村部の所得も伸び悩んだ。政局混迷による、予算確定遅延により、メガプロジェクト発動など建設投資もマインドが萎縮。GDP成長率は、鈍化したとみられる。 タイ経済は、輸出(財・サービス計)がGDPの約75%を占めるなど輸出比率が高く、輸出の動向に経済が左右されやすい」 「輸出先のうち特に米国が15〜16%を占める。06年が比較的堅調だったのは、米国の好調な個人消費、設備投資にタイの輸出が引っ張られた形で国内消費の低迷を補った事が主因の1つと言える。年初から見て対米ドルで約15%上昇したバーツ高も克服、輸出は伸張。みずほグループでは、昨年通年のGDP成長率を4.9%と見通している」 ◆エマージング・マーケットに共通する資金流入 ――バーツ高をきっかけに短期資金のタイへの流入を抑制する目的で外為取引規制施行となった。バーツ上昇の要因は何か? 「国際収支の動きを見ると、04年第4四半期〜05年第3四半期まではタイの経常収支が大幅に赤字化したが、資本収支の2項目(証券投資・直接投資)で相殺していた。一方、05年第4四半期から今年の第3四半期にかけては、経常赤字幅が大幅に縮小。両資本収支の流入額に変化があまりないにもかかわらず、総合収支黒字額が大幅に増えたことで外貨準備高が拡大。それがバーツ高に結びついている」 ――バーツ高・外為取引規制の影響は? 「このような背景もあり、金融当局としては、1米ドル=35バーツを割り込んで、34バーツ台に突入する前に何とかしたかったのが本音だろう。インフレ率が低下してきたことから、おそらく、金融当局が昨年、インフレ抑制のため引き上げてきた金利を、まずは、引き下げる方向で対応するものと見られていたが、18日に外為規制を発表した」 「投機の抑制は金融当局としては、当然の対応だが、方法論に問題があったのではないかと見る向きもあり、米ドル金利との格差拡大を回避するため、苦汁の選択だったと推測する」 「この規制は流入資金に突如税金をかけたようなもので、海外からの信任を失うことに繋がりかねない。また規制対象に株式・不動産等を加えたことも海外投資家を失望させた。(後日、対象から除外)。このほか、日本の親会社からタイ子会社に対するいわゆる親子ローンも規制されるなど実務上の影響も大きい。今後のタイへの外国直接投資にも悪影響が及ぶのではと憂慮している」 「一方、中央銀行は01年4月から採用している『14日物債券レポ・レート』を今年1月から、『オーバーナイト債券レポ・レート』に変更し、よりきめ細かな為替・金利の運営を目指している。また、同規制導入によって、タイ嫌気売りという図式で株式市場は一度下げたが、世界的な金余り現象が変わらない限り、依然タイ市場は魅力的な市場だ」 「しかしながら比較論として、規制を突然発表したタイの代替投資先として周辺国が選択されていく傾向も出てこよう。直接投資の面では、タイ敬遠傾向が長期的な動きとなれば、競合度の高い、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピンが、主要な受け皿となる可能性が高いと見ている」 ――暫定政権および政策についてはどうか? 「また、1月のタクシン前首相一族による通信大手、シン・コーポレーションの株式売却をきっかけに、外国人事業規正法改正の動きが出てきた。外資企業を締め出すような法律の内容となった場合は、外資中心に経済を発展させてきたタイにとって、マイナスの側面が出てしまう可能性が高い。あまり過度な規制内容にならない事を希望している」 ◆人材面の底上げがないと投資先としての魅力が低下 ――今年のタイ経済の見通しは? 「バーツは外為取引規制以後、1米ドル=35バーツ台から36バーツ台にバーツ安に戻しており、まだある程度はバーツ安に進むだろう。今後は金利動向が焦点となるが、タイの金利は米国金利追随型といってよいほど、米国金利の上げ下げに連動してきた。恐らく、今後、タイの金利は引き下げの方向に進んで行くだろう。現在5%だが、今年年初で4.75%、年央で4.5%程度としている。また金利の引き下げおよび同規制の影響を受けて、バーツも今年中は叙々に下がっていくはずだ。今年末では1米ドル=38バーツ程度まで下落するだろう」 「繰り返しになるが、世界の金余りの状況は当分続く一方で、タイへの資金流入のスピードが若干落ちると思われるが、アジア買いのトレンドが続くのは間違いない。その一環として、今後もタイは買いの対象になるだろう」 ――タイ経済の問題点・課題は? 「例えばバンコクから1〜1.5時間程度離れた場所にある製造業拠点で見ると、課長クラスの管理職の給与はマレーシアより高くなっている。またタイとベトナムを比較すると、ベトナムの給与はタイの3分の1の水準に過ぎない。新規の外国直接投資は賃金の安いベトナム向けがタイを上回っている」 「人材の質の面でも、教育による低中レベルの労働者のスキル底上げが急務。タイの人口は多いが、人材面での底上げがないと、製造業の投資先としての魅力は低下するだろう」 「これまで説明したように、給与・人材面などを含め、足下の直接投資環境は悪化している。タイは今まさに、外国資本にとって継続的に魅力的な投資対象国になれるかどうかの瀬戸際だ。昨年発生した様々な問題はある意味で、タイに喫緊の課題を突きつけたという点ではチャンスとも取れる。東部臨海工業地域を見れば分かる通り、自動車産業を中心に産業集積が進んでいるが、これほどの集積が進んでいる地域はアセアン諸国ではほとんどない」 「昨年12月20日に、ラオスとタイを結ぶ第2国際橋が開通した。これでいわゆる、ベトナム中部とミャンマーまでを一直線で結ぶ東西経済回廊が結合された訳だが、現在、南北・南南回廊の建設も進められるなど、タイには地理的優位性もある。こうした利点を生かしていくためにも、タイにとって今必要なのは人材の教育・育成だろう」
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