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2007年
1274号(6月11日〜6月17日)
仕事の報酬は仕事
成果主義に対する批判として人間は金銭のためだけに働くのではなく、「仕事の報酬は、次に与えられる仕事だ」と言う主張があります。やりがいのある仕事、面白い仕事こそが、人をその会社にひき留め、次の仕事に向かう原動力になると。生活保障のために必死に働くワーカー層にとっては、もちろん、現金収入=報酬とならざるを得ません。しかし、生活レベルがある程度保障されている一部のホワイトカラーたちのリテンション(定着)には、「仕事の報酬は仕事」という視点が必要ではないでしょうか。
■お金が作業をストップさせる
東京大学の高橋伸夫教授は、著書『虚妄の成果主義』の中で、心理学者デシの実験を紹介しています。実験の内容は次のようなものでした。
大学生に制限時間内でパズルをいくつ解くことが出来るか、休憩時間を挟みながら3セッション行いました。ある学生には解いたパズルの個数に対して1個1ドルの報酬を提示し、他の学生には無報酬でした。
パズルはそれ自体が十分にチャレンジングで楽しめるものに作ってあります。すると、面白いことに、報酬をもらえる学生が休憩時間にしっかり休みを取って次のセッションに備えている一方で、無報酬の学生は、休憩時間でも必死になってパズルを解いていたのです。
実験は別のパターンでも行われましたが、結果は同じで、金銭報酬を与えられない学生の方が、与えられた学生よりも一生懸命に休憩時間も取らず、パズルに没頭していたことが観察されました。
これは、作業と金銭報酬を結びつけると、それに見合った合理的な働き方を計算してしまうものであることを示していると思います。逆に、現金報酬と結びつかない方が、興味の趣くままに時間を忘れて作業してしまうという傾向があるのです。
■ニューリッチの転職は何のため
ところで、皆さんのタイオフィスで働いているホワイトカラーの現地スタッフは、比較的富裕な家庭出身者が多くないでしょうか。子供の頃から、十分な教育を施され、海外留学で習得した英語や日本語を武器に入社してきたスタッフです。
そういった、もともと金銭的に困っておらず、社会的ステイタスや自己のキャリア研鑽のために外資系企業に勤めて高収入を得ているニューリッチ世代は、果たして1000バーツの給与アップのためだけに転職を考えるのでしょうか。
もちろん、市場報酬のベンチマークをし、自社の給与水準を自社が対象とする市場において、平均値を下回らない水準に保っておくことは必須です。
しかし、これだけ豊かになってきたタイ都市部のニューリッチにとって、自分の給与水準が市場の50パーセンタイル(給与水準を表す際に用いる指標。市場全体を100とした場合の50番目を指す)にあるのか、75パーセンタイル(前述75番目を指す)にあるのかという給与の差は、決定的な転職理由にはならないのではないかと思います。
むしろ、仕事を通して、達成感・満足感を得られなくなったとき、このままでよいのかと立ち止まり、そこに達成感・満足感が得られそうな仕事があれば、転職を考えるのではないでしょうか。
■達成感・満足感のある仕事
では、仕事で達成感・満足感を得られるとはどのような状態を指すのでしょうか。我々が日ごろ行っている意識調査などから浮かび上がってきたのは以下の2つです。
@社会・お客様・一緒に働く仲間などにとって、自分が役に立っていることが実感できる(他人を喜ばせられる)
A自分の能力向上が感じられる(自分を成長させられる)
部下に、仕事を通して達成感・満足感を感じさせるには、まず上司自身が、達成感・満足感がある仕事とは何かを分かっている必要があります。あなたが仕事をしていて、他人の役に立っていることが感じられる瞬間、自分の成長が感じられる瞬間は、どんなときですか?
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