2007年
1258号(2月19日〜2月25日)
横綱昇進論議に見る「適材適所」の本質とは

 先日ある新聞で、大相撲の横綱審議委員の方が、横綱昇進について、「人気回復を狙うあまり、安易な昇進で『横綱を作る』ことは絶対にしてはいけない」と語っていました。

 横綱への昇進条件というのは、「相撲の力量・品格とも卓抜であると衆目の一致するところの力士」だそうです。

◆「衆目の一致するところ」とは?

 ここでの「衆目の一致するところ」とは、「皆の認識が一致している」という意味です。今回の場合であれば、「彼ほどの力量・品格の力士なら、十分に横綱に値する」と周りの皆が納得している状態を指します。

 ただ、やみくもに「衆目が一致する」といってもはっきりしないので、「力量」については、評価基準を設けているようです。どうも、13勝以上で2場所続けて優勝すれば、横綱昇進は確実なようです。

 つまり、誰もが横綱にふさわしい力量であると「衆目が一致する」レベルを、「13勝以上で2場所続けて優勝」と定量的に定義している訳です。

◆私には理解できない!

 勝負事である大相撲であれば、勝ち負けという「成果」が明確に現れます。この目に見える「成果」を基にすれば、「誰もが納得する評価・昇進」が可能になります。

 人種・文化・言語の異なる外国で、部下をマネジメントされている皆さんにとって、このような「目に見える成果による処遇」は大変重要です。

 日系企業で人事評価制度等の改革プロジェクトを進める際に、「社内の評価や昇進の基準があいまいである」といった不満が現地社員からよく出ます。「なぜ、あの人がマネジャーなの? 私には理解できない!」といった類の不満です。

◆見える基準と周囲の納得感

 大相撲では、パフォーマンス(力士の力量)を評価するために、目に見える成果のモノサシ(白星の数)を評価基準に設定しています。そして明確な達成レベル(2場所続けて13勝以上)を設定することで、周囲からの納得感のある処遇(衆目が一致する昇進)を実現しています。 

 このような透明な「評価・昇進の基準」を持つことで、はじめてそのポジションにふさわしい人材を選抜できますし、周囲の人間の「納得感」も生まれます。

 いくら「適材適所」を狙った昇進であっても、周囲の人間の納得感が無ければ、組織としてうまく機能することは難しいはずです。皆さんの組織の中でも、今一度検証してみてください。

前川尚大

◆マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング
組織・人事の分野において世界最大の米系経営コンサルティング会社。アジアでは11カ国、17拠点に550名を擁し、日系企業のグローバル化を支援する特別チームを持つ。


◆前川尚大


グローバル人事戦略コンサルティング。問題解決・意思決定プロセスのコンサルティング会社を経て現職。現在はバンコクを中心に、在アセアンの日系企業のコンサルティングに従事。東南アジア経験は約7年。ご意見・ご質問は、takahiro.maekawa@mercer.comまで。