2007年
1256号(2月5日〜2月11日)
仕事の動機

 多くの日系企業で、「現地化」を掲げる背景は色々あると思いますが、その中で共通しているのは、現地社員が頑張れる企業作りを願う思いだと感じます。しかし、現地社員がどのようなことに惹かれるのか、その動機の所在を理解するのが難しい、と悩んでいる日系企業が多いように思います。

◆途用のミスマッチ

 最近、世界銀行とタイのプロダクティビティー・インスティチュートが共同で、地場、欧米企業を含む約1400社を対象に「生産率・投資状況サーベイ」を実施しました。この調査によると、「法律のあいまいさ」や「インフラストラクチャーの未整備」と並んで、「人材不足」を多くの企業が取りあげています。

 これは、従業員の動機の所在を見出すのが難しいといった点と深く関わってくると思います。動機を見極めずに採用すると、職務に適さない人材を雇う傾向が強くなったり、仕事がこなせない人材を昇格させてしまったりするのです。「優秀かもしれない人材を雇って仕事を覚えてもらおう」「昇格したら期待にこたえてもらおう」という考えです。

 この結果、スキルを持った人材が不足するタイでは、登用のミスマッチが起こりやすくなります。そして「ミスマッチ」 「仕事がこなせない」 「評価の結果が悪い」という悪循環に陥りがちです。 これでは従業員はせっかく頑張ろうと思っているのに、本人の努力の及ばないところで評価が左右されてしまうことになります。

◆グローバルで多様化する従業員の動機

 企業が利益や人材を求めるのと同様に、従業員も企業と仕事内容、それに見合ったキャリアや報酬を求めています。これらの関連性を明らかにし、またコミュニケーションしていくことによって現地社員の動機が少しづつ明らかになってくるのです。

 現在、人種やジェネレーション別のニーズが多様化している欧米においては、従業員の多様化した動機に企業が応えようとする動きが多々あります。人材がどのようなことを企業から望んでいるのか日々リサーチをしています。

 しかしながら、日本では従業員のプロファイルが欧米ほど多様化していないので、企業から従業員、また従業員予備軍にメッセージが送られることはあっても、逆に、従業員や従業員予備軍の声を拾う動きはほとんどないように思われます。

 しかしタイは日本とは異なります。現地スタッフの声を拾い、彼らの働く動機を理解してマネジメントに反映させていくことが大切です。

野瀬 千景

◆マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング
組織・人事の分野において世界最大の米系経営コンサルティング会社。アジアでは11カ国、17拠点に550名を擁し、日系企業のグローバル化を支援する特別チームを持つ。

野瀬 千景

グローバル人事戦略コンサルタント。ウィスコンシン大(心理学)卒。マーサーアメリカで米系企業のグローバル人事戦略に関するコンサルティングを経て、現在バンコクを拠点に日系企業の人事・組織行動全般のコンサルティングに従事。