2007年
1255号(1月29日〜2月4日)
タイで日本の健康保険が使える日

わが国は現在5カ国と2国間社会保障協定を結んでおり、その他2カ国については発効準備中です。更に2カ国とは具体的な交渉が現在進んでいるようですが、2010年までには13カ国に締結先を拡大する予定のようです。

◆年金単独から健康・労災保険まで

 社会保障協定と呼ばれてはいますが、我が国が締結している協定の場合、その半分が年金のみに関するものです。欧米他国の間で見られるような健康保険や労災保険に関わる相互協定は、昨年のベルギー・フランスとの協定から漸く導入されております。

 もっとも、日本企業の負担感は、派遣国と日本における年金保険料の二重払いに集中していたため、年金以外の社会保障制度が当初の協定において議論の俎上に上がらなかったとしても不思議ではありません。

◆健康保険協定

 2年以上前になりますが、我が国とタイの間で経済連携協定が盛り上がっていた頃、タイ側担当大臣から「健康保険の相互協定を結ぼうではないか」といった提言がなされていました。当事のタイでは国民健康保険制度整備が一息ついた頃で、理論上は協定締結が可能でした。しかし、議論は進みませんでした。

 タイ側の皮算用では、タイでの医療行為の支払いに日本の健康保険が直接適用可能になれば、現地の医療機関を利用する日本人が増えるはずでした。

 ところが駐在員の場合、現地医療機関を利用する際、ほとんどが民間保険会社の医療保険で対応していることから、あまり注目を浴びなかったのかもしれません。

 但し、現地採用にて一定期間タイで就業される日本人の方にとっては、日本の健康保険証がタイでそのまま使えるメリットは小さくなかったと言えるでしょう。

◆社会保険庁廃止の影響

 欧米各国では、ドイツ、米国を筆頭に、相当以前から多数の国との間で社会保障協定が締結されており、日本は後塵を拝しております。政府は経団連等、我が国経済界の要請を受け、漸次協定数を増やす計画のようです。

 しかし、社会保険庁が同協定協議の中心的実施機関であることから、それが解体されますと締結交渉が遅延する不安はあります。

 他方で、国民年金保険料徴収不備等の度重なる不祥事に鑑みますと、寧ろ社会保険庁が交渉主体から外れた方が、スピードも上がり、年金以外の制度の協定への組み込みが進む可能性もあります。そうなると、日・タイ健康保険協定も幻でなくなるかもしれません。

大久保 信一

◆マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング
組織・人事の分野において世界最大の米系経営コンサルティング会社。アジアでは11カ国、17拠点に550名を擁し、日系企業のグローバル化を支援する特別チームを持つ。

大久保 信一

グローバル人事戦略グループ・シニアコンサルタント。アジア経営大学院(フィリピン)卒業。長銀総合研究所、ODA調査・コンサルティング会社を経て現職。
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