2007年
1254号(1月22日〜1月28日)
組織は何に従うか?

 「組織は戦略に従う」は、経営史家であるアルフレッド・チャンドラーの言葉です。ビジネスにおけるさまざまな課題には、それを解決するための最適な戦略が存在し、組織はその戦略に従って変動するというものです。しかし、本当に組織は最適な戦略に従って変動しているでしょうか。「最適な戦略とは何か」という問いは次の機会に考えるとして、今回は組織の変動の実態について考えてみたいと思います。

◆組織改革の流行

 それぞれの企業が抱えている問題は多様です。それなら、それらを解決するための最適な戦略も多様であるはずです。しかし、組織が変わろうとしている方向性は、驚くほど似かよっています。

 例えば、「現地化」。アジアに進出する日系企業は、現地化という視点で欧米企業に比べて遅れをとっているといわれています。そこで「現地化を進めなければならない」という風潮に圧され、現地化推進の方針を打ち出し、必死になって現地化に取り組んでいます(もちろん、風潮だけが現地化のトリガーではありませんが)。このため、現地化推進の方針を打ち出し、必死になって現地化に取り組んでいます。

 海外現地法人にとって「現地化」は必要不可欠な転換であります。しかし、現地化を推進しようとしている日系企業の中には、日本人が就かなければならないポジションに、現地人を登用している場合もあります。このような企業が最も「現地化」に苦しんでいるようです。

◆トップの世界観

 海外現地法人の日本人トップには、任期があります。つまり、いずれは日本に帰るのです。前の日本人トップが打ち出した戦略に従って、現地では一生懸命、組織改革を行ってきました。しかし、その日本人トップが交代すると、まったく違う組織に「改革しろ」という命令が降りてくるケースは多々見受けられます。前の日本人トップが打ち出していた戦略と、やっとの思いで実現した組織改革はいったい何だったのでしょうか。

 課題を解決するための最適な戦略が存在し、組織はその戦略に従って変動するならば、その前の日本人トップが打ち出していた戦略が最適でないということなのでしょうか。少なくとも現地法人のトップならば戦略は「最適」であってほしいものです。それとも、組織というのは、トップが替われば、その形態を変えざるを得ないものなのでしょうか。

 結局、組織は何に従うのでしょうか。少なくとも、「流行」や「トップの世界観」に従っていたら、真の現地化は達成できないような気がします。

内村 幸司

◆マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング
組織・人事の分野において世界最大の米系経営コンサルティング会社。アジアでは11カ国、17拠点に550名を擁し、日系企業のグローバル化を支援する特別チームを持つ。

◆内村 幸司

グローバル人事戦略コンサルタント。早大大学院修士(国際関係学専攻)。精密機器メーカー(中国駐在を含む)を経て現職。主にASEAN・中国における日系企業の人事・組織行動全般のコンサルティングに従事。