2004年
1113号(05月10日〜05月16日)
第141回:タイ人管理者をプロの工場管理者にしろ

1、ラインのムダが分からない
 私はタイの日系工場のタイ人管理者を「プロの管理者」に育てるコンサルタントを行っています。5Sから始まり生産性向上の技術や管理技術も指導しますが、最も重要視しているのは受講者の考え方を「プロの管理者」に変えることです。この考え方が変わらない限り、どのような技術論を教えて現場で指導しても、身に付かないのです。

 先日ある工場のタイ人管理者から「10人のラインを改善して1人減らして9人にしましたので見て下さい」と言われました。早速ラインを見てみると確かに9人になっていたので感心しました。

 ところが、しばらくするとラインの頭にいた作業員が歩いてどこかに行ってしまったのです。当然ラインは止まってしまい手待ちのムダが発生しました。管理者に「あの作業員は何のために、どこに行ったのだ」と詰問しても答えられません。作業員が戻ってきたので私が直接聞いてみると「不良品が出たので不良品に貼りつけるタグを取りに行っていました」との回答でした。さらに作業員に尋ねると不良品は1日数個発生するが、発生するたびにラインを離れてタグを取りに行っているとのことでした。

2、正しい考え方が理解できていない
 上記の問題から次の事が良く分かります。
(1)管理者が技術偏重になっている
ラインの生産性向上を高めるためIEの知識ばかり教えられており、ラインを止めてはいけないとの本質が理解されていない。

(2)管理者が現場を見ていない
データを元に会議室や紙の上でライン編成を決めて、現場に通達して終わっている。自分自身で現場を見て問題点を確認していない。

(3)作業員に聞いて確認していない
ライン編成後に現場の作業員やリーダーに問題点、不具合を聞いておらず一方的に押しつけている。

3、プロとしての価値観を教えろ
 管理者に技術論だけ教えていけばデータ上は10人のラインが9人になりますが、他のムダが数多く発生して現場での実質的な生産性向上には繋がっていないケースが多いのです。

 上記の問題は管理者に基本的な考え方を教育していない、あるいは理解させていないまま、技術論だけ教えて育成した結果と言えます。

 日本人駐在員の中には「大学を出たばかりの人を採用しても理屈ばかりで使えない」と嘆く人が多いのですが、これは大学では知識ばかりで基本的な考え方が身に付いていないから使えないとの意味になります。

 しかし工場に入ってからも生産性向上の技術論だけ教えて基本的な考え方やプロとして正しい考え方を教えていなければ、結局は現場で使えないまま終わってしまいます。

 私の指導方法は全く逆で、初期の段階では生産性向上や品質管理の技術論は教えず「プロの管理者として基本的な考え方」を徹底的に教え込みます。そして5Sや改善など生産性向上や品質管理に繋がる基本的な活動を徹底して行わせるのです。管理者として正しい考え方が身に付けば、あとは技術論を教えても現場で効率的に実行できるように成長するからです。

 考え方の教育は価値観教育になりますから、タイ人管理者の価値観を破壊して新しい価値観を植え付ける作業になります。当然、時間も掛かるし、教える側、教わる側にとっても大変な努力が必要になります。しかし一度、価値観が変わってしまえば、あとはプロの管理者として自分で正しく判断して行動してくれるようになりますから、安心して現場を任すことが出来るようになるのです。

ユニバーサルビデオコーポレーション管理者セミナー講師
立川剛