|
1022号の経済ニュース
■ミレア・ライフ・インシュアランス(タイランド)
- 日系生保 初の本格展開
■タイ初の国産ゲームソフト - 世界に向けて発売
■いすゞグループ - 二〇〇五年にグローバル展開
■タイ武田 飛躍の時期到来
- 3年以内にトップテン目指す
ミレア・ライフ・インシュアランス(タイランド)
日系生保 初の本格展開
10年計画で大手仲間入りを目指す
「タイはまるで欧米の生命保険会社のメジャーリーグ。ここで伍していくためにも新しいビジネスモデルを作っていく」。ミレア・ライフ・インシュアランス(タイランド)の石井一郎社長の決意は固い。
ミレア・ライフ・インシュアランス(タイランド)は、日本最大手の損害保険会社・東京海上火災保険が二〇〇一年六月、同社グループが中心となって形成するミレア保険グループの共同事業として、タイのチャルン生命保険に二五%出資して設立。経営権を譲り受け、社名を現在のミレア・ライフ・インシュアランス(タイランド)に変更し、今年三月から営業を開始した。
従来、生命保険業はローカル色が強いため、海外進出は進んでいなかった。これまでタイでは日本トップの日本生命が現地会社に数%出資していたが、本格的に活動するのは今回のミレア・ライフ・インシュアランス(タイランド)が初めての会社となる。
タイの生命保険市場は、二〇〇一年度総収入保険料九百四十二億バーツと前年比で二五%成長。加入口数を人口で割った加入率も一五%と、同様の計算で一〇〇%を超える日本と比べ、市場はまだまだ成長過程にある。
ただ、九七年に保険業界の自由化に関するWTO(世界貿易機関)の合意に基づき、新たに十二社が営業免許を取得したため、現在は二十四社がしのぎを削っている状況だ。
代理店独自育成で販売網構築
石井社長によれば、新参会社であるミレア・ライフ・インシュアランス(タイランド)の最大の課題は販売網構築にある。
タイは日本と違い、保険代理店(保険の販売員)の大半がほかに定職を持つパートタイマー。各代理店が個人的なコネクションを使い、親類や知人に保険を販売している。こうした代理店システムは、最大手のAIAが持ち込んだ古いスタイルで、販売網構築の手間は掛からないが、営業効率が悪く、代理店の教育・統括をきっちり行えないため、顧客からの苦情も多いという。
また、九七年に参入した欧米資本のメジャーな会社には本国から短期間で成果を上げることを課せられた会社もあり、そうした会社では他社の代理店を根こそぎ買収するケースもある。だが、こうした引き抜きは代理店が移動する際、十分な説明なしに顧客の保険を移動させてしまうことがあり、後々顧客の信用を失うことにもなりかねない。「いずれの販売網も当社では実践できない」(石井社長)。
そのためミレア・ライフ・インシュアランス(タイランド)では、今年十月から代理店を独自に育成していく。現在はその前段階として代理店を統括するマネージャーの教育研修を行っており、八人のマネージャー候補に保険販売のイロハを叩き込んでいるという。最終的にマネージャーを軸に代理店のユニットを形成し、それを集めて独自の代理店網を組織する計画だ。会社がここまで組織的に代理店を育成するケースはタイでは初めてのケースだという。
また、保険の販売でもこれまでタイで主流だった貯蓄性≠セけを強調する手法を採用せず、保険本来の保障≠ニいう側面もアピールしていく。
「こういうアプローチは他社が行っておらず、顧客の関心も高い。まだ会社の知名度が低く、保険加入につながっていないが、やり方は間違っていない」と石井社長は新しいビジネスモデルの方向性に自信をのぞかせる。
当面は団体保険に注力
現在、タイの生命保険業界では早くも淘汰の動きが訪れようとしている。
例えば業界八位のサウスイーストと十一位のインターライフ・ジョン・ハンコックが統合する話や、九七年に参入した十八位の英国資本のCGUライフが事業を売却して撤退する噂など、短期決着を望む欧米のプレイヤーはすでに動き出しているようだ。
だが、石井社長にあせりはない。
「タイではまだ生命保険に加入するという考え方が国民全体に浸透していない。じっくり腰を据えて戦略を進めても手遅れではない。すでに十年計画でやると東京本社に伝えてあり、それでGOサインも出ている。当面は同じく東京海上火災が出資するシームアン保険(損害保険)の販売網を使って日系企業へ団体保険を売り込む。五年後の二〇〇七年度に団体保険で上位五番手に入りたい」と気炎を上げる。
(倉田 陽平記者)
タイ初の国産ゲームソフト -
世界に向けて発売
韓国製に劣らない出来栄え
タイではゲームソフトも、音楽CDやVCDと同様、コピー商品が幅を利かせている。そのため、国内ではソフト産業がなかなか育たず、これまでゲームソフトといえば、日本など海外から輸入されていた。
そんな折、脚本からデザイン、プログラミング、デバッグ(不具合を取除く作業)、テストまで全工程をタイ国内で製作した初のタイ製コンピュータ・ゲームソフト「マジカル年代記」が間もなく世界発売されるという。
同ソフトを開発したのは、IT(情報産業)ビジネスに八年以上携わってきたサイバー・プラネット・インターアクティブ社(CPI)。
同社のチャニン・マーケティング部長は「世界のゲーム市場は拡大を続けており、オリジナルゲームを製作するビジネスは将来性が高い。タイのゲーム市場は日本や米国に比べ小さいため、今回は世界に向けて発売することになった」という。
マジカル年代記の製作期間は三年。開発人員は二十人。プレイヤーが資金や武器を駆使して自分の帝国を築いていくロールプレイングゲームだ。
登場するのは人間、人型ロボット、動物など百種類以上と豊富で、それぞれ特徴的なキャラクターを与えられている。難易度を指定することもでき、ゲームを勝利に導くには、時間や資源の管理といったマネージメント能力が問われる。LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)やインターネットを通じて、他のプレイヤーとゲームを楽しむこともできるという。
また、洗練されたグラフィックスなどクオリティが高く、誰もが初のタイ国産のゲームソフトだとは気づかない出来だという。事実、試作品をプレーした海外の有名な出版社は、「ストーリー展開など最近注目を浴びている韓国製ゲームにも劣らない」と高い評価を与えている。
CPI社では、年内にもマジカル年代記を四百バーツで販売する予定。また、コンピュータだけではなく、携帯電話用ソフトとしても発売する計画で、カラー液晶携帯端末の普及に合わせ、こちらも年内には発売したいという。
じつはCPI社は、同ソフトのキャラクターや背景を作る地道な作業にいそしんでいた開発初年度に、財務省から中小企業ベンチャー・キャピタル・ファンドの対象企業に選定され、昨年にはファンド管理者のワン・アセット・マネージメント(OAM)から、自社株式の四四・四四%と引き換えに八百万バーツの融資を得ている。
このように順風満帆に思えるCPI社だが、チャニン部長は「商品にはシリアル番号とパスワードを付けてコピー対策を図るが、それでも一〇〇%防げるわけではない。タイ初の完全オリジナルゲームの価値を政府がもっと認めてサポートして欲しい」と心配顔だ。
どうやらタイのソフト産業も、コピーを心配する会社が登場するレベルまで成長したようだ。
いすゞグループ - 二〇〇五年にグローバル展開
3年内に年間生産台数25万台
タイでもGMとの連携を強化
五月に発売した新型ピックアップ・トラックの売れ行きが好調ないすゞ。同グループは二〇〇五年までにタイでの自動車生産台数を現在の約二・五倍に引き上げ、年間二十五万台強とすることを計画している。そこで同グループの「生産計画」、「GMとの連携」、「購買方針」などについて上下二週にわたって紹介する。
「ピックアップのフルモデルチェンジを機会に体制を変える。グループの既存の資源を最大限生かすようにする」。タイ国いすゞ自動車(以下IMCT)の香坂佑二社長は開口一番こう話す。
新型ピックアップの投資額は約三百億円。そのうち約二百四十億円はいすゞグループの能力増強に、残りの六十億円はGM(ゼネラル・モーターズ)ラヨン工場での委託生産のために利用される。
新型ピックアップの国内向け生産は今年四月末に始まった。年末までにこのモデルを六万五千台生産する。一月―四月に生産した旧モデルの台数を合わせると今年の国内向け生産台数は八万二千台以上となる。十一月にはオーストラリア向けの生産を開始し、年末までの二カ月で二千台程度を生産する。
来年以降は国内向け十万台、輸出向け二万台の生産体制とする予定。
現在、準備作業を続けているGMラヨン工場での委託生産は来年六月に開始する計画。生産台数は年間四万五千台で、全て輸出向け。
いすゞでは以上の他に輸出向けのノックダウン・コンポーネントの生産も計画している。これは来年十月から生産する計画で、そのための投資は来年本格化する。生産規模は完成車に換算して九万台と大きい。
これらの生産計画を合計すると、いすゞグループのタイでの年間生産台数は二〇〇五年までに現在の約二・五倍の二十五万五千台となる。
世界標準を満たす新型ピックアップ
いすゞグループは、タイのピックアップ・トラック市場ではシェア一位を続け、全車種でもトヨタに次いで二位にある。
タイの自動車販売台数は今年に入って急回復している。同業界では当初、今年の国内販売台数を前年比一〇%増の三十二万台程度と予測していたが、現在では前年比三〇%増の三十八万台程度になると見られている。このような状況の中、いすゞでも今年の生産台数計画を年初予定の八万二千台から上方修正することを検討している。
同グループの戦略車として期待されるのが五月に発売したばかりの新型ピックアップ「D・MAX」だ。これはプラットフォームを今やいすゞの親会社となった米国ゼネラル・モーターズ(GM)と共同開発したもので、タイ国内のみならず、世界標準を満たすように設計されている。
セールスポイントをいくつか挙げると、まず車体は前モデルよりも一五%程度も大きくし、他社モデルと比べても最大となった。これは大型指向のタイの潜在ニーズに合わせたもの。車体の強度を高めるため頑丈なワンボックス構造も採用している。乗り心地の面では、サスペンションにアブソーバータイプを採用し、インテリアをグレードアップして乗用車並にした。エンジン音の低減にも成功している。
これだけの改善を加えたにもかかわらず、国内販売価格は三十九万九千バーツから七十六万三千バーツで、従来価格からの値上げ幅を平均で二%に抑えている。
香坂社長は「D・MAXは発売早々、消費者の高い支持を得て、六月末までの一カ月余りで二万台の予約が入った」と顔を綻ばす。
強力な新モデルの投入で、いすゞグループの国内ピックアップ市場におけるトップの位置はまだまだ揺るぎなさそうだ。
最先端設備を持つGM工場
いすゞグループは九七年からGMグループのディーゼルエンジンを専門に開発・生産する中核企業としての役割を担うようになった。このいすゞとGMの連携強化はタイでも進められている。それは共同開発車D・MAXのタイ国いすゞ自動車での生産に止まらず、GMのラヨン工場で同社車種を委託生産するに及んだ。
GMは二〇〇〇年五月にラヨン工場の操業を開始した。この工場は生産能力十三万台に設計されているが、今年の生産台数計画は七人乗り多目的ミニバン「ザフィーラ」約四万台とアルファロメオ四千台に過ぎない。いすゞはこの工場を活用するため、日本の藤沢工場で生産している輸出用ピックアップの生産をGMの工場に委託する。
生産するピックアップは、タイ国いすゞ自動車が生産しているD・MAXと同モデルで、現在いすゞが輸出しているオーストラリア以外の国に輸出する。輸出先は中南米、南アフリカなど百三十カ国に及ぶ。
委託生産の方法について、いすゞグループの購買・輸出を担当しているいすゞ(タイランド)の菊地隆社長は「全ての部品は当方でセットにしてGMの工場に搬送する。GMはそれを組み立てるだけで、独自の部品調達はしない」と話す。
これら輸出向けピックアップは、国内向けとほとんど同じだが、部品の現地調達比率の点で異なる。国内向けは現調率がおよそ九〇%から九五%と高いが、輸出向けのピックアップは六〇%程度と低くなる。その理由は、輸出先が求める条件、特にエンジンがタイ市場と違うためだ。タイではディーゼル・エンジンが標準装備となっているが、輸出先によってはガソリン・エンジンを求めるところがある。またディーゼルでも上位クラスのエンジンが必要になる。それらタイ市場の標準ではない部品については日本から輸入することになり、その分だけ現地調達率も低下する。
IMCTの香坂社長は「GM工場の特徴はタイの日系工場に比べると操業が最近で、設備が最先端なこと。様々な輸出先に合わせて多品種少量生産が容易にできる」とGMの生産技術を高く評価する。
いすゞグループでは、GMへの委託とは別に輸出用ノックダウン・コンポーネントの生産もタイで始める。いすゞはタイの自動車市場が急成長していた九〇年代後半にバンコク近郊のチャチェンサオにあるゲートウェイ工業団地に工場用地を取得し、家屋も建設した。しかしその後の自動車需要低迷で、眠ったままになっている。ノックダウン・コンポーネント生産のためこの工場を使う事を検討している。
タイのグループ体制再構築
タイでの生産・輸出が格段に増えることから、いすゞグループはタイでのグループ体制を再構築する。これまではタイ国いすゞ自動車が完成車組み立て、いすゞエンジン製造がエンジン組み立て、いすゞ(タイランド)が購買・輸出、トリペッチいすゞが国内販売というように役割が別れていた。これを見なおす。 新体制では、いすゞ(タイランド)がこれまでの機能を大きく変えて製造統括会社となる。同社の株式は日本のいすゞ自動車が八〇%、三菱商事が二〇%を持つ予定。
一方、販売に関しては今年三月に設立したいすゞ・オペレーション・タイランドが統括する。この会社の持ち株比率はいすゞ二〇%で三菱商事が八〇%。
いすゞ(タイランド)の菊池社長は「新体制の構築は、日本からの生産移管も含め、いすゞグループにとってタイを地域拠点化するための一環にある。タイをベースに完成車、ノックダウン・コンポーネントをグローバルに輸出していくための体制固めだ」と話す。
(次週に続く)
タイ武田 飛躍の時期到来 - 3年以内にトップテン目指す
病院市場で急成長
医薬品情報提供者育成に注力
「タイで三十三年間やってきたが、ちょうど今が飛躍の時期。現在タイで二十位だが二〇〇五年までにトップテンに入る」と力強く抱負を語るのはタイ武田の中堀俊幸社長だ。
タイ武田は日本最大手の製薬会社である武田薬品の現地法人として一九六九年に設立された。販売する医薬品は二十五品目で、これをタイ国内だけでなく、ベトナムやミャンマー、カンボジア、シンガポール、マレーシアなどの周辺国にも販売している。
同社の「飛躍の時期」には二つの根拠がある。一つは、糖尿病治療薬など新薬が好調なことだ。
例えば降圧剤ブロプレスや糖尿病治療薬アクトスはグループ全体でも売上げが三割アップしており、タイでもこれらの医薬品が業績改善に大きく貢献したという。
さらにタイでは、期待の新薬である勃起不全改善剤イクセンスが、今月中にもラインナップに加わる。
タイの勃起不全改善剤は市場規模がおよそ二億バーツ。現在はファイザーのバイアグラが市場を独占しているが、イクセンスは「性行為の二十分前に使用」とバイアグラよりも効き目が早く、バイアグラの牙城を切り崩し、年商五千万バーツを期待できる。
ここ二年ほど、同社の医薬品が病院市場で高い評価を得ていることも、中堀社長にとっては心強い。
タイの医薬品市場はおよそ八百五十億円。対前年比で一割ほど成長したのだが、タイ武田の医薬品は病院市場でそれを上回る三割近く販売を伸ばした。これは新薬効果だけでなく、MR(医薬品情報提供者)の教育を徹底した成果でもあるという。
「MRは五十人体制。人数を増やしたわけではないが、数年前にマネジメント体制を再構築し、会社の戦略を直接彼らに伝えるようにした。病院市場強化もその一つで、こうした地道な取組みの成果があらわれてきた。最近ではトップテンの会社からもMRが転職してくる」と中堀社長は笑顔を見せる。
もちろん不安要素もある。タイでは政府系病院が医薬品市場全体の五割を占めるており、今年から全国で実施されるようになった「タイ人患者を対象にした三十バーツ診療」など医療保険政策の今後の動向からは目が離せない。
また、ジェネリック薬(新薬の成分を真似た後発薬)が金額ベースで市場全体の三割と、日本の七%に比べはるかに大きな規模に成長してきており、今後もどんどん増えていくと予測されている。幸い中国やインドで製造される悪質なコピー薬のタイへの流入は、ビタミン剤など数品目に限られているが、こちらも対策が困難なだけに気がかりだ。
だが、それでも、医薬品市場が成長し、強い新薬があり、MRも育ってきた今を逃すとトップテン入りは難しいという。
「今期の売上高は前年比二割増の十二億円予定。二〇〇五年十二月期には二五億円を狙っている。まだまだシェアは小さいがチャンスは大きい」。中堀社長は決意をあらわにする。
(倉田 陽平記者)
|