ガーンタラート---タイ市場のマーケティング考
事例1 携帯電話 Panasonicの失敗(上)
携帯はアクセサリー
先週末、サイアムスクエアにあるショッピングセンター、マーブンクロンに行ってきた。携帯電話を購入するためだ。今やバンコクではスーパーのレジやコンビニエンスストア、BTS(高架鉄道)の駅でも携帯電話を購入できるし、価格や商品ラインアップもそれほど変わらない。それでもタイ最大の携帯電話マーケットであるマーブンクロンに行くメリットはある。タイの人気商品が分かるからだ。
タイでは携帯電話は高級品で、アクセサリーのひとつといえる。若い女性の中には携帯の高級機種をペンダントのように首から下げて見せびらかしている人もいる。これは日本の状況と全く異なり、日本人は自分で携帯電話を購入するまで理解できない。
日本では携帯サービス会社がメーカーから買い取り、消費者に対して長期のサービス利用契約と引き換えに只同然で販売している。携帯電話とサービスの料金がごちゃ混ぜになっているのである。消費者にはサービス会社が携帯電話の料金を一時負担しているということは見えず、「携帯電話は只みたいなもの」「使い捨て」との認識がある。だから携帯電話の機種によって他人と優劣がつくことはない。
ところが日本以外の国ではこういったビジネスのやりかたはしていない。基本的に携帯電話とサービスは別物であり、消費者は直接携帯電話を購入する。このため携帯電話の価格は品質や機能、サイズによって価格が大幅に違ってくる。タイでも三万バーツを超えるものから、三千バーツを切るものまで様々で、持っている携帯によって他人との差がつく。
数ヶ月もタイに滞在したことのある日本人なら、タイ人が見栄っ張りであることがわかる。金持ちの乗用社は必ずといって良いほどベンツかBMWで、日本車なら百万バーツ以上するカムリやセフィーロを乗っている。本物か偽物かわからないがロレックスをはめていたり、ルイヴィトンの財布を持っている人も結構いる。携帯電話もそれらと同列なのである。高くて見栄えがすれば良いのであって、高級機種の機能を使い切っている人はほとんどいない。通話、メッセージ、着信音・トップ画面のインストールくらいだ。
ちなみにタイの男性にとって色が白くて背の高い女性は家事などできなくても良き妻で、日本人女性は最高のブランドといえる。心といった見えないものには大した価値はないようだ。
小型がセールスポイントのT191
ここで話しをマーブンクロンに戻そう。週末のマーブンクロンの携帯売り場は、人でごった返している。タイの景気はマクロ経済指標で見るとまだそれほど良くないのだが、とてもそんな雰囲気ではない。売れ筋商品は達磨のような形をしたNOKIA3310で、本体価格は五千五百バーツ前後。これは機能、品質とも満たされ、価格もそれほど安くない。これを持っているからといって他人に対して優越感を感じる人はあまりいないだろう。しかし女性を中心に持っている人が多く、皆が持っているから安心して持てる機種だ。
他人に対して少しだけ優越感を感じられるのは小型の8250だ。これは以前は一万三千バーツほどしていて、高級機種のひとつだった。これが一万バーツ程まで値下げされ、売れ筋になっている。小型折畳式のMOTOROLAV3688も以前は一万三千バーツだったが、今では七千バーツで売られている。これらの機種は、新機種導入前の在庫処分のようで、二、三ヶ月前に比べて三、四割安くなっており、低価格機種からの買い替えも少なくない。
「ついに携帯を買うぞ」という初心者にはMOTOROLAのT191が目を引くようだ。小型ながら三千七百バーツと安く、低価格機種では一番人気だろう。実は筆者も最初にこれを見たときその安さに驚き、これを買おうと思った。先週まではシーメンスのA36という今や三千バーツを切る機種を使っていたのだが、相手にこちらの声が裏返って女性のように聞こえるときがあることと機能が物足りないこと、それにあまりにも安くて人前に出し難いことから買い換えたかったのだ。年末に地下鉄入札でシーメンスが三菱グループをひっくり返したこともシーメンスに引っかかるものを感じていた。
シーメンスに代る有力候補はコストパフォーマンスが良さそうなT191だった。だが、職場の日本人同僚とマーブンクロンに行って気が変わった。その人はNOKIA8850という最高機種が欲しいらしく、その値下がりを待っているのである。現在の価格は二万二千バーツもする。それを持っているとカッコイイというのである。
(水谷 昇 記者)
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