総 合

米国同時テロ

タイ政府、省エネ対策検討へ


ガソリンスタンド---深夜営業規制
テレビ---深夜番組の放映中止

 米国のアフガニスタンに対する軍事行動が予想されるなか、タイではタクシン首相が、米国に対する軍事的援助を公式に発表したことで、一部市民の間からは「テロの対象国になるのでは」との不安の声も上がっている。また、戦闘状態の長期化による原油価格高騰が懸念されるなか、タイ政府はさまざま省エネ対策を打ち出している。

タイ南部でテロの危険性

 在タイ日本大使館では、テロ事件の翌日、緊急連絡網を通じて、在タイ日本人に、米国大使館や米国関連施設に不用意に近づかないことなど注意を呼びかけたが、その後、タイが米国支援の姿勢を明確にしたことで、米国系大企業及びイスラエル公館も「危険スポット」に追加された。

 この背景には、アフガニスタンを実行支配するタリバンが、米国の軍事行動を支援した国に対しても報復するとの声明を発表、さらに、タリバンの最高指導者・オマル師が、全世界のイスラム教徒に対して、米国に対する聖戦を呼びかけたことがある。

 このため、日本大使館ではさらに、イスラム過激派が活動している南部への旅行もできるだけ控えるようアドバイス。南部はこれまでにも国鉄ハジャイ駅が爆破されたり、学校が連続放火されたりと、タイからの独立を主張する国土分離派などのテロ活動が頻発しているほか、(1)今回のテロ事件の黒幕と目されているウサマ・ビンラーディン氏の配下が潜伏していることをタイ軍部が認めていること、(2)米国でのテロ攻撃に参加したテロリストのうち、三人がフィリピン経由でタイに入国している可能性が高いこと――も、大きな不安要因となっている。

 なお今回、タイが米国に対する軍事協力を発表したことで、国内のイスラム教団体やNGO団体からは、「中立を守るべきだ」との批判も上がっている。さらにイスラム教徒らによる集会では、今回の事件の真犯人を「米国人自身」「米国在住のユダヤ系住民」とする発言もでており、タイが実際に軍事支援を行った場合、一部のイスラム過激派がテロ行為に及ぶ可能性も否定できない。

 しかしタイ国内でのテロに関する、日本人会への問い合わせはこれまでのところ、二−三件にとどまっているということで、日本人の間ではテロに対する危機意識はかなり薄いようだ。

 一方、今回の米国でのテロ事件はタイの経済・社会にもさまざまな影響を与えている。

 米国の軍事行動が長期化することで原油価格が急騰するとの懸念から、タイ政府は省エネ策を検討。ガソリンスタンドの深夜営業中止、一部地域での街灯使用中止、広告及びビルへの照明中止、午前〇時以降のテレビ放映中止などが候補にあがっている。

 各テレビ局ではすでに具体的に放映時間短縮の検討に入っているが、このなかで、iTVは、火曜日と水曜日の午前一時四十五分から生中継で放映しているサッカー『UEFAチャンピオンズ・リーグ』だけは〃特例〃として温存する意向という。

 また二十四時間営業のスーパーマーケットのなかにはすでに省エネに協力しているチェーン店もある。「TOPS」は現在、タイ国内五店舗で二十四時間営業をしているが、このうち三店舗で午前六時から午前〇時、二店舗で午前八時から午前〇時に営業時間を変更した。

 しかし、これらの省エネ対策により、「街が暗くなる」ことは確実で、治安の悪化、特にレイプなど女性が犯罪に巻き込まれる危険性の高まることが危惧される。さらに、従業員の人員整理にもつながることになるため、慎重な対応を求める声も少なくない。

 また、今回のテロ事件がタイの観光業に与えた影響も決して少なくない。タイ政府観光庁では、今年の観光客誘致目標を一千三十万人としていたが、すでにこれを下方修正。さらに、日本や台湾など米国以外の市場を重視するとともに、米国旅行を予定していた観光客をタイへ誘致する努力をしていく方針を発表している。

 日系旅行会社(プーケット県)の日本人マネージャーによれば、ハワイに行くはずだった団体客がそのままプーケットに旅行先を変更するケースもあったという。

 しかしその一方で、社員旅行でタイを予定していた団体が、飛行機に乗ることを怖がり、まとめてキャンセルするなど、政府観光庁ではこの「テロ恐怖症」の払拭に全力をあげるとしている。

(倉林義仁記者)



[BANGKOK SHUHO]