経 済

観光産業

個人旅行キャンセルは微減


有事でも根強いタイの人気

 十一日に発生した米国での同時テロ事件以来、社会不安とともに世界経済への様々な影響が懸念されている。その中で即時的に影響が出てきたのが観光業界で、タイもその例外ではない。そこで特に日本人旅行者の動向について、日系航空会社・旅行代理店に話を聞くと、タイの意外な強さが浮かび上がってきた。   

 「団体旅行のキャンセルはテロ直後はそれほどなかったが、その週末から増えてきた。それからの一週間で約千名、九月―十一月の予約の七%程度がキャンセルされた」と言うのは日本からの団体旅行を中心に扱っているJTB(日本交通公社)バンコク支店だ。

 キャンセルの主な理由は、この不安な時期に敢えて海外旅行する必要性がない、企業旅行などで接待を受ける側が行きたがらない、社内旅行の自粛が求められている、といったもの。

 当面については「デリケート顧客はすでにキャンセル済なので、今後のキャンセルは減ってくるだろう」と見ているが、「湾岸戦争の時は全世界的に三、四割がキャンセルされた」ことを考えると先行きは不安だ。

 またビジネス目的の出張者は「会社から不要・不急の出張は止めるように通達を受けているようだ。どうしても行かなければならない場合は米国系航空会社を避けるように言われているらしい」(日本航空バンコク支店)

 個人旅行がほとんどというHISツアーズでも「十四日からの一週間で約六百名、九月の予約の一割弱がキャンセルされた。ノースウェスト、ユナイテッドを使った低価格ツアーのキャンセルが多い」と言う。

 旅行代理店では顧客の不安を考慮してキャンセルについては「テロが起きた週のキャンセルはチャージなし。その後についてもホテルなどと交渉するようにしている」(HISツアーズ)、「九月末まではキャンセル料金が掛らないようにしている」(JTB)と便宜を図っている。

 観光業界では一般的に「世界経済は停滞傾向にあったが米国での重大なテロがそれに追い討ちをかけた。経済回復に半年以上かかるだろう」(日本航空)と見られている。だが、タイの観光業界に限っては他国のそれとは若干異なるようだ。テロの再発を恐れて日本発の米国行き旅行客が激減しているのに対して、タイの場合は根強いファンがいる。

 「航空券とホテル券だけの自由旅行のキャンセルは少ない」(HIS)、「個人パッケージは一、二%のキャンセルで収まっている」(JTB)

 JTBでは「キャンセルが出ているとはいっても、一方でキャンセル待ちをしてた顧客の新規申し込みも急増している。日本人にはタイが比較的安全な国だという認識があるようだ。タイ・日本間はほとんどフル・ブッキング状態で、売り上げも差し引きすると減少幅は小さい。日本では米国行の旅行が大量にキャンセルされているので、それをタイに振り替えたいが、大型団体だと航空券さえ取れない」と語る。

 「観光業は平和の上に成り立っている」(HISツアーズ)

 タイ政府が厳戒なテロ対策を実施し、観光者の安全を保証することができれば、世界不況、戦争勃発で他国に行く予定だった観光客をタイに誘致できる可能性もある。災い転じて福となるか。タイ政府の取り組み次第と言えそうだ。

(水谷 昇 記者)



[BANGKOK SHUHO]