巨額の不正海外送金が発覚
資金洗浄防止法の初適用となるか
このところタイでは資金洗浄(マネー・ロンダリング)疑惑が持ち上がり、一大疑獄へと発展しそうな様相を見せている。
タイ警察中央捜査本部は八月三十一日、UOBラタナシン銀行小口顧客部門のシリンラ・マハマッド・アシスタントディレクターを脱税および海外への不正資金移動の容疑で逮捕した。翌日にはシリンラ容疑者の姉で主犯とみられるロザリン・チョーパラディットにも逮捕状を出したが取り逃がし、現在、その夫のピチェット・チョーパラディットと共に行方を追っている。
中央捜査本部ではロザリン容疑者らが資金洗浄を行っていたものと見て捜査している。九月二日には同事件への関与が濃厚として、中央捜査本部経済犯罪調査部(ECID)ナンバー2のワラポン・フトラクン副部長を国境警備隊地域事務所に配転させた。ラポン副局長の銀行口座にはロザリン容疑者から巨額の振り込みがあり、また同口座には何度も巨額の預金がされていた。同副局長はロザリン容疑者らの行為を見逃す代償に現金を受け取っていたようだ。
ロザリン容疑者らは一九九八年から二〇〇〇年までに、総額二億二千二百万万米ドル(当時の金額で約七十億バーツ)に上る資金をバンコク銀行を通じて米国、中国、香港、シンガポールの複数の企業に送金した。送金回数は百九回に渡り、一回の最高金額は六十万米ドル。送金元の名義にはロザリン容疑者らが経営者となっているペーパーカンパニーのラタナコシン・インターナショナル、タナサップ・タヴィー、イースタン・ペトロパワーの三社を利用していた。
二〇〇〇年十月に資金洗浄防止法が実質的に運用されるようになってから、海外への送金で二百万バーツを超えるものは詳細な情報提出が義務付けられている。このためロザリン容疑者らは銀行に対し、送金の目的は海外からの借入金の返済として偽の契約書を作成。その信憑性を高めるため中に本物の契約書を混ぜていた。また石油を密輸するなどの方法も用いていた。
しかしタイ中央銀行は、三社による海外への資金移動の異常を関知し、ECIDに捜査を申し立てた。そこでECIDでは調査委員会を設置し、証拠を探してきた。
この事件にはバンコク銀行幹部を含む約二十人が関わっていたものと見られている。また首謀者として有力政治家の愛人が捜査上に浮かんでいる。さらに三社のペーパーカンパニーには百社以上の企業が顧客となっており、それらが資金洗浄の依頼主である可能性がある。このため中央捜査本部では中央銀行、資金洗浄防止事務局、関税局、歳入局と協力して捜査を進めている。
洗浄が必要な資金は、麻薬密売、売春、賭博、密輸などの犯罪行為で得た不正資金であり、犯罪行為の最終出口と言える。巨額な資金の動く資金洗浄には政治家や高級公務員など権力者が絡んでいることは間違いない。今回の事件では資金洗浄防止法が初適用となりそうだ。タイは資金洗浄の温床として米国などから批判されてきた。今後どこまで踏み込んで捜査できるかタクシン政権の沽券に関わる問題といえる。
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