総 合

順番の掟 


 カラオケに行ったとき、日本人は必ず一人一曲ずつ歌う。リモコンを順番に回し、決して自分の歌を続けて二曲以上入れたりしない。しかしタイ人や中国人は、平気で自分の歌を十曲くらい入れてしまう。そして堂々と歌う。

 先日、マレーシアのクアラルンプールでカラオケボックスに行った。メンバーは日本人一名(私)、歌わないフィリピン人一名、中華系マレー人一人、マレー人四人の計七人。店にはマレー語と中国語と英語の歌があった。

 唯一の女性である私にまず、リモコンが渡された。バンコクではなかなか見つからない香港や台湾の最新ヒット曲がいっぱいあってうれしくなった。大好きな張恵妹の歌を一曲を入れてリモコンを隣りのマレー人に渡し、気持ちよく歌った。

 歌い終わってふと、リクエスト曲が表示されている画面を見ると、マレー語の歌が十曲くらい並んでいる。やられた。マレーシアもそうだったのか。

 中華系マレー人の陳さんと私だけが、中国語派である。リモコンがテーブルに置かれたとき、マレー語の歌は二十曲を越えていた。店に入ったばかりだが、時間は深夜十二時。このままではもう歌えないまま帰る可能性が高い。

 そこでリクエスト画面を中国語表示に変え、優先曲機能を使った秘密工作を開始した。マレー人が二、三曲歌い終わるたびに、中国語の歌をリクエストの先頭に移動させるのだ。こんな作業を何度も繰り返すくらいなら、最初から順番にリクエストを入れればいいのにと思う。

 しかしそのうち、どの曲をどの人が歌ってもよいことに気づく。三本のマイクは歌いたい人が勝手に取る、途中で他の人に渡したり、二人で一本を使ったりもする。私もメロディーが単純なら、アルファベット表記のマレー語の歌に加われた。順番や誰の歌ということにこだわるより、こうしてみんなで歌った方がずっと楽しい。私達は結局、午前二時すぎまでかけ、リクエストした曲を全部歌って帰った。


(林小姐)


[BANGKOK SHUHO]