ウタイ下院議長の職権乱用容疑
最高裁で有罪判決---
執行猶予2年、辞任要求には応じず
危惧されるタイ愛国党のイメージダウン
職権乱用罪で起訴されていたウタイ下院議長(タイ愛国党)の最高裁判決が先月三十日にあり、禁固一年、罰金二万バーツ、執行猶予二年の有罪判決が言い渡された。「実刑」ではなかったため、議長職を辞任する必要はないものの、「立法府のトップをして相応しくない」との声が多く、世論調査でも辞任を求める意見が圧倒的となっている。しかし、ウタイ議長は「続投」を宣言、またタクシン首相(タイ愛国党党首)も同議長を擁護していることから、上院や野党の批判が強まることになっている。タクシン首相の資産隠し容疑に対する憲法裁判決が迫るなか、タイ愛国党はまたひとつ頭痛のタネを抱えてしまったようだ。
職権乱用罪でウタイ下院議長を訴えていたのはポット元商業事務次官。九三年十月、当時、商業相だったウタイ氏から休職を命じられたことを不服として、刑事裁判所に提訴していた。
休職処分を受けたポット氏は、チュアン首相(当時)に〃直訴〃。同首相は、公務員を監督する文民委員会がウタイ商業相の命令を無効としたのを受け、同相に対して、命令の撤回を指示したが、ウタイ商業相がこれに従わなかったため、ポット氏は刑事訴訟を起こすことになった。
裁判は九八年の一審判決で、禁固一年、罰金二万バーツ、執行猶予二年の有罪判決が下され、上告審(九九年)でも同判決が支持されていた。
今回、ウタイ下院議長が執行猶予つきではあるが、有罪判決を受けたことで、上院、野党、民主化団体からは、議長ポストを辞任するよう求める声が高まっている。
しかし、憲法規定では実刑を受けない限り、政治上の役職を辞任する必要がないため、同議長は「辞任はしない」と明言。ポット氏が休職処分になるきっかけとなったのは、同氏が民間企業に与えていた石油事業の認可を取り消し、刑事裁判所に起訴されたことによるものであることから、ウタイ議長は、「国民のためにならない官僚をクビにする権限が大臣にないとしたら、責任のある仕事ができなくなる」として、一連の判決に対する不満をあらわにしている。
また、タクシン首相(タイ愛国党党首)も、「実刑ではなく執行猶予となったからには、法律上、議長を辞任する必要はない」として、党としてウタイ議長の進退に関与しないことを公表している。
しかし、国民人気の高いプラモート上院議員は、「立法府のトップである下院議長に、執行猶予つきとはいえ有罪判決を受けた者が居座るのは適切ではない」として、「もしウタイ氏が辞任しないとしたら、現政権にとって大きなマイナス点になるだろう」と警告する。
一方、野党側の反応であるが、野党第一党・民主党のアピシット副党首は、「下院議長として、どうすべきかを考え直してほしい」と、間接的に辞任を求める声明を発表。と同時に、「今回のウタイ氏の対応は、まるで人が分かってしまったみたいだ」ともいぶかる。
ウタイ氏は、これまでで最も民主的との評価が高い現行憲法を起草した憲法起草評議会の議長を務めており、民意重視の姿勢を明確にしてきた。さらに、ケジメをつける人物との評価も受けていた。それが今回、国民の間に議長辞任を求める声が多いにもかかわらず、ポストに固執していることで、本人および所属政党であるタイ愛国党のイメージダウンを引き起こした感も否めない。
アサンプション大学の世論調査でも、六〇%が「議長を辞任すべき」と回答、「辞任の必要はない」の二一・三%を大きく上回った。さらに、「辞任しない場合、タイ愛国党のイメージダウンになるか」との質問では、「イメージダウンにつながる」と回答が三九・二%に達している。
タクシン首相は「世論調査の結果をあまりシリアスに考える必要はない」とウタイ議長を擁護するが、首相自身も資産隠し容疑の憲法裁判所判決で有罪が濃厚となっており、このため党のイメージアップに躍起になっている時だけに、タイ愛国党またやっかいな問題を抱えることになってしまったようだ。
(倉林義仁記者)
|