総 合

バンコクひとり歩き@

ホアランポーン寺


 私は今回、何かの縁で、ちょとディープなスポット二ケ所を観光することになった。共通点は『貢献』と『死』。このキーワードを頭に、私は足どりも軽くバンコクの街を歩き始めた。

 まず、最初に向かったのは、ホアランポーン寺。ラマ四世通りとシープラヤ通りの交差点にあるマンダリンホテルに近接するこの寺は、観光客が訪れる寺とは趣きを異にしている。

 寺院内には斎場が十五程あり、その斎場を囲むようにして、中央に一段高い火葬場が設けてある。この日も葬儀が十件ほどあり、いくぶん重々しい空気が流れていた。と、ここまでのところは、他の寺院と大差はない。

 ところで、一般にタイ人のタンブン(タイ語で〃お布施〃のこと)は僧侶の生活や寺の改修、慈善事業などに当てられる。しかし、ここホアランポーン寺では、その一部が、交通事故や犯罪などで、身より無く亡くなった人々を奉るための費用として使われるのだ。このため、ホアランポーン寺でタンブンすることは、通常のタンブンよりも徳を積むことになると考えるタイ人も少なくない。そこで私もタイ人に習い、ホアランポーン寺でタンブンすることにした。

 タンブンは寺の隣にある『義徳善堂』ですることになる。民間レスキュー隊として知られる義徳善堂だが、その事務所内に、一般の人々からのタンブンを受け付けるカウンターがある。タイではタンブンは徳をつむことであり、それにより来世の地位が豊かになるとの仏教の教えもあるそうで、ここでもタイ人の姿が途絶えることはないようだ。私もタイ人にならって徳をつもうということで、カウンター前をうろついてみた。

 お布施カウンターには、常時五、六人の係員がおり、その時も途切れなく訪れるタイの善意者の対応におわれていた。意を決してカウンター前についた私はタイ語で「寄付したい」と書いた紙を係員に見せた。外国人の訪問に一瞬とまどいをみせた係員は、英語のできる係員を呼んできてくれた。

 英語のできる係員のお姉さんにピンクの紙を渡され、名前を記入しお布施を渡す。とりあえず百バーツを出した私に、隣にいたタイ人の奥様が「五百バーツよ」と圧力をかける。「相場が五百バーツなのか」とも考えたが、持ち合わせのない私はとりあえず百バーツですませることにした。係員のお姉さんは、紙に書かれた私の名前を確認しながら、領収書のようなものを返してくれた。

 一方、ピンクの紙はカウンター後ろにある十五ほどの黄色い棺に自分の手で何か願いを込めて貼り付けるのだ(棺の中に遺体が入っているかは不明)。この棺は事故などで亡くなった身寄りのない人々のためのもの。この棺は火葬され、々かなえられるということなのだそうだ。私は、残り少ないタイ生活が無事に過ごせますようにとの願をかけ、寺を後にした。



※次号は国立シリラート病院の『犯罪博物館』の紹介です(編集部)。

鈴木美江


[BANGKOK SHUHO]