アジア最大の地下経済
裏GDP御三家は 麻薬、売春、賭博
タイの「地下経済」の規模は国内総生産(GDP)に対して五一・六%に及び、その比率はアジア太平洋地域で最高となっている。これはオーストラリアにあるジョハンナズ・ケプラー大学経済学部のフレドリック・スツネイダー教授が、タイのチュラロンコン大学経営学大学院が主催したアジア太平洋金融協会の講演で発表したもの。
スツネイダー教授は地下経済規模推計の権威で、世界各国の地下経済の推計を二十年来続けている。今回、発表したのはアジア太平洋地域にある十八ヶ国・地域の九八年、九九年の平均値。地下経済のGDPに占める比率は高い順にタイ、スリランカ、フィリピン、ネパール、パキスタン、バングラディシュとなっている。対象国の中では日本の比率が一番小さい。
「地下経済」とは脱税、賭博、麻薬取引、売春など公式統計には報告されない経済活動のこと。先進国ではこの中で特に脱税の割合が高い。アジア太平洋地域ではないが、イタリアやベルギーでは税金・社会保障の負担が大きいため、それを逃れようとして地下経済の割合が二三―二八%と高くなっている。
一方、タイのような途上国では麻薬取引、売春、賭博の割合が高いとされる。タイ経済の実際の規模は、公式統計のGDPに加えて、その半分の規模の地下経済が動いていることになる。通貨・金融危機後に陥った長い経済低迷の中で、この闇の部分に支えられているタイ人が相当にいるということだ。
タイの地下経済の規模は大きいが、それでも全体で見ると九〇ー九五年平均に比べて縮小している。そのときは七〇%を越えて、ナイジェリアと並んで調査対象の七十六ヶ国・地域中二位だった。もちろんアジアでは一番だ。地下経済は一般に経済バブル期に拡大する。タイもこの頃から経済がバブル化を始め、地下経済も膨張したのだ。
これはあくまで筆者の推測だが、この時の地下経済の拡大は、先進国と同様に脱税が多かったのではないか。それがバブルが弾けて経済活動が停滞し、政府の脱税取締も厳しくなっていることから脱税行為は減少した。それに代わって増えてきたのが麻薬取引、売春、賭博などの行為だ。通貨危機から四年、麻薬密輸や売春のニュースが目立つようになっている。このまま表経済が回復しなければ、一旦縮小したタイの地下経済は今後再び拡大するかも知れない。仮に政府が地下経済を規制すれば、タイの景気は間違いなく沈滞する。タイは当分の間、アジアの地下経済大国という汚名を返上することはできないだろう。
●地下経済推計法
地下経済の推計は先進国と途上国では異なる。先進国の場合は主に「通貨需要アプローチ」が使われる。先進国における地下経済の取引は、その発覚を恐れて現金で行われるため、公式統計には現れない通貨が実際の市場には流通している。公式統計上の通貨の動きと、市場の通貨の動きとの差から、地下経済の規模を推計することができる。
途上国の場合は先進国とは異なって信用取引が発達していないので、一般の経済活動でも現金の使われる割合が高く、通貨アプローチは誤差が大きくなる。そこで「物質インプット法」が利用される。この方法では電気の需給に注目する。本来、電気は需要と供給が同じでなければならないが、実際には供給と需要に差が発生する。この差の部分から地下経済の規模を推計するのである。経験的に電気需給は国内総生産と比例関係にあるため、このような推計が可能になる。
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98-99年地下経済の規模 |
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(GNP比%) |
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タイ |
51.6 |
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スリランカ |
43.3 |
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フィリピン |
42.4 |
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ネパール |
37.2 |
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パキスタン |
35.8 |
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バングラディッシュ |
34.6 |
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マレーシア |
30.7 |
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韓国 |
26.5 |
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インド |
22.4 |
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イスラエル |
21.4 |
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台湾 |
19.2 |
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インドネシア |
18.4 |
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香港 |
16.4 |
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オーストラリア |
14.1 |
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シンガポール |
13.2 |
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中国 |
13.1 |
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ニュージーランド |
12.6 |
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日本 |
11.1 |
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平均 |
25.8 |
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(水谷 昇 記者)
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