タクシン首相---
次期総選挙視野に党勢拡大へ
セリタム党と合併、新熱望党・国家開発党とも調整
サノ・タイ愛国党最高顧問は難色
セリタム党との正式合併が決まったタイ愛国党であるが、さらに新熱望党、及び国家開発党との合併に向けて、調整が進められているようだ。タイ愛国党のサノ最高顧問が合併に難色を示していることがブレーキになっているものの、タクシン首相は、次期総選挙対策の一環として、合併に極めて積極的であり、年内にタイの政局が大きな転換期を迎える可能性も出てきた(倉林義仁記者)
タイ愛国党(党首・タクシン首相)は今月十四日、結党三周年を記念する党大会を開催、ここでセリタム党との合併が正式に決定された。ただ、政党の解散・合併手続きに関する具体的な法律条文がないため、セリタム党の正式解散は、憲法裁判所の公式解釈待ちとなるが、これでタイ愛国党の議席は二百六十三議席となり、単独で下院(五百議席)の過半数を超すことになった。
一方、新熱望党(三十六議席)との合併であるが、所属議員二十四人が、早期合併を求める嘆願書をチャワリット党首(副首相兼国防相)に提出しているものの、一部の幹部議員が合併に反対しており、党内調整に手間取っている。このため、しびれを切らしたチャワリット党首からは、「合併に反対な者は離党すればいい」との発言も飛び出すようになった。
このほか、タイ愛国党ナンバー2であるサノ最高顧問が、合併に難色を示していることも、大きな障害となっている。同顧問が合併に反対している理由としては、党内での影響力低下を恐れてのもの、との見方が一般的だ。
今回の総選挙でタイ愛国党が圧勝した背景には、サノ顧問が派閥議員とともに新熱望党を離れ、タイ愛国党に参加したことがあり、今も、同顧問の影響下にある議員は七十人近いとみられている。このため、同派は、閣僚及び閣僚秘書官・顧問ポストを十三、下院委員会委員長ポストを八と、重要ポストの多くの手中に収めている。
現地紙の報道では、サノ顧問が「サノなくしてタクシンなし」との発言をしたとも伝えており、タクシン首相が合併を押し進めているのは、将来的な党内分裂の「保険」のため、との観測も流れている。つまり、他政党との合併により全体の議員数を増やすことで、サノ派議員の〃価値〃を低下させようということだ。
さらに、タクシン首相の積極的な合併構想は、次期総選挙をにらんだものとする見方もある。
タクシン首相は、タイの政治・経済・社会を改革するためには、タイ愛国党が八年間(下院議員の任期は四年)、政権を担当する必要がある、として、すでに次期総選挙での勝利も念頭に入れているようだ。今期だけをみれば、単独で二百六十三議席、連立与党全体で三百二十七議席という議席数は十分ともいえる。しかし、次期総選挙では、連立与党各党は敵・味方に分かれて戦うことになる。そのため、合併によりポスト配分で苦労するとしても、次期総選挙のことを考えれば、敵となりうる政党は少なければ少ないほどよいというわけだ。
このため、タクシン首相は、サノ顧問の意向を無視するかのように、記者団の前で、国家開発党(二十七議席)のコン党首とスワット幹事長に「私たちは何で与党と野党に分かれるているんだ」と話しかけるなど、同党との合併の可能性も意識的に示すなどしている。また、タイ字紙「マティチョン」はタイ愛国党筋の情報として、タクシン首相と国家開発党との間には、「連立政権に参加した後に合併する」との合意ができているとも伝えている。
ここで連立見直しの好機と考えられるのが、タクシン首相の資産隠し疑惑に対する憲法裁判所の判決だ。これまでのところ、有罪の可能性が高く、その場合には五年間の公職追放となり、首相及び下院議員を辞任することになる。
しかし憲法裁では、公職停止の五年間を九七年十一月の閣僚辞任時から数えるとの解釈をしているようであり、その場合、来年の十一月には政界に「復帰」することが可能となる。さらに、判決時期も、同裁判所長官が先日、九月以降にずれ込む可能性に言及しており、公職追放期間が一年間程度となる見通しもでてきた。
このため、タクシン首相としては、少しでも早く、自分の影響力を落とさないための基盤固めをしたいところであり、このため新熱望党、国家開発党との年内合併が現実味を帯びることにもなっている。
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