総 合

タクシン首相が消えた!

隠密外国旅行に野党批判


側近にも内緒、外交官らは「慣例無視」

 タクシン首相(タイ愛国党党首)のニュージーランドでの休暇に、野党がかみついている。  同首相は、今月四日夕方から「行方不明」となり、翌日、マスコミ関係者が自宅、別荘などを訪れ、潜伏先をつきとめようとしたが、徒労に終わった。

 最初は、他県で休養しているとみられていたが、その後、空港関係者からの報告で、四日夜、夫人とその兄とともに、シンガポールに渡ったことが判明。これに先立ち、タイ愛国党報道官が「どこにいるかは分からないが、外国に行ったとは考えていない」と発言していたこともあり、この〃雲隠れ〃は、さまざまな憶測を生むことになった。

 (1)タイ愛国党内で学者議員グループが党内意思決定システムの刷新を求めたこと

(2)サノ同党最高顧問が新熱望党との合併に難色を示していること

(3)タノン元財務相の国家経済社会開発庁長官起用へ反対意見が相次いでいること

――などに嫌気がさして、「海外逃亡」したのではないか、との見方が強まるなど、タイ愛国党の内部問題がいっそうクローズアップされることにもなってしまった。

 このなか六日、シンガポールの空港でタクシン首相を見かけたタイ人から、「首相はシンガポール経由でニュージーランドに向かった」との連絡が新聞社に多数入ることになり、これで、首相がニュージーランドの高級リゾート地『ミルブルーク・リゾート』に滞在していることが公となるに至った。

 外交常識では、私用・公用を問わず、政府要人が渡航する場合には、最終目的国の大使館に連絡をすることになっている。しかし、今回、ニュージーランド政府には何の連絡も入れておらず、このため、今回のお忍び旅行には、各国の外交官からも非難が続出することとなった。「一国のトップが海外渡航するにあたり、何の連絡もしないのは、ほんんど前例がなく、それは相手国に敬意を表していないに等しい」というのが、その理由だ。

 また、「訪問国への連絡は、外交上の礼儀みたいなもの。旅先では病気にならないとも、また事故を起こさないとも、限らない。そうなった場合は、訪問国の政府をあわてさせることになってしまう。首相は自分の役職の重みを理解しているのか」とも関係筋は批判している。

 一方、今年のソンクラン(タイ正月)休暇は、土日と重なったため、最大で五連休となり、海外旅行を楽しむタイ人が急増した。このことに対して、タクシン首相は、「海外旅行は通貨の流失につながり、愛国的な行為とはいいがたい」と苦言、「連休は最大四日」とする〃お達し〃を出すことになった。

 アカポン民主党議員はこの点を追求、「今回のタクシン首相の休暇の過ごし方は、決して愛国的なものとはいえない」と皮肉った。

 さらにウィタヤ民主党議員も、「首相の失踪はタイでは初めて。一国の首相が側近に知らせることなく、海外に行くような国が世界中にあるのか」と痛烈に批判している。

 結局、タクシン首相は九日、政務のため、首相府に姿を見せることになった。外交官らのひんしゅくを買い、また野党からは「無責任」と強い批判を受けることになったが、一般市民の反応は「あれだけ一生懸命働いているんだから、休息は必要」、「私費で行った以上特に問題はない」と寛大なものが多く、今回の一件が首相にとって大きな失点となることはなさそうだ。



[BANGKOK SHUHO]