海賊版ソフト利用で賠償金
知的財産権侵害認識の有無は関係なし
海賊版ソフトウェアを利用していたため、巨額の賠償金を支払わされる企業が相次いでいる。ソフトウェアメーカーの国際業界団体であるビジネス・ソフトウェア・アライアンス(BSA)は七月三日、地場資本のパンヤ・コンサルタントがマイクロソフトやアドビ、アップルなどの海賊版ソフトウェアを利用していたことを認め、三百万バーツの賠償金を支払うことで合意したと発表した。四月末にも某日系大手企業が約百万バーツを支払うことで合意している。
某日系企業関係者は「問題のソフトはパソコンを購入したときに内蔵されていたもので海賊版を使っていたという認識は薄かった。しかし訴訟になると相当な費用と時間がかかるので賠償金の支払いに応じた」と語っている。
BSAは今年三月からタイ警察とともに、海賊版ソフトを利用しているとの情報をつかんだ企業を抜き打ちで立ち入り調査を始めた。現在、海賊版利用が深刻と判断される複数の企業に賠償金の支払いを求めている。BSAの動きを後押ししているマイクロソフトも最近、タイの主要新聞に「海賊版ソフトを利用してコストを浮かせても、結局は巨額の賠償金を払うことになる」と警告する広告を掲載した。上記二社への賠償要求はBSA、マイクロソフトが海賊版対策で本気の姿勢を示したものと言える。
タイでは著作権法が整備されているものの、これまでその運用は厳格ではなかった。特にコンピューターソフトについては野放し状態で、正規料金では数万バーツするようなものでも海賊版なら百五十バーツ前後で手に入れることが出来る。
ただし、タイ国内のソフト市場の規模はそれほど大きくはない。BSAが行なった委託調査では昨年の海賊版ソフトウェア利用率は七九%と高率だが、被害総額は五千三百万ドルに過ぎない。これは日本では十六億ドルに及ぶ。
タイの問題は国内での海賊版の利用よりも、その海外持ち出しの方が重大といえる。九七年の通貨危機によるバーツ相場下落と近隣国の政治不安の結果、タイを訪れる外国人観光客が急増。皮肉にも最新版まで何でも揃う海賊版ソフトが人気の土産物となった。そして今では海賊版ソフトの小売店はバンコクだけではなく、プーケットやチェンマイなど地方の観光地でも軒を連ねるようになっている。タイの海賊版ソフトは観光客を通じて世界中に輸出されているのである。それによるソフトウェアメーカーの被害は計り知れない。
海賊版ソフトに最も神経質なのは米国政府・企業だ。主要なコンピューターソフトの多くが米国企業によって作られたものであり、海賊版による被害も大きい。音楽や映画のソフトも同様のことが言える。このため米国政府はタイ政府に対して、海賊版ソフトの取り締りを強化しなければ、タイに供与している特恵関税を廃止すると圧力を掛けている。最近のBSAの強硬な姿勢は、その米国政府・企業の急先鋒といえるだろう。
米国景気の減速で輸出が伸び悩んでいるタイにとっては目に見える形での対応を迫られることになろう。国際企業でありグローバルスタンダードの厳守が当然と言える日系企業は特に注意が必要だ。
(水谷 昇 記者)
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