新熱望党
タイ愛国党との合併構想で亀裂
幹部議員が猛反発、「新党設立も辞さず」
タイ愛国党と新熱望党との合併構想が暗礁に乗り上げている。これは、新熱望党内部で反対意見が根強いことから、これまでの〃橋渡し役〃だったタイ愛国党のサノ最高顧問が難色を示したことによるものだ。さらに、合併後のポスト配分調整でのいざこざを同顧問が嫌ったとの見方もあり、政界再編成につながる、この大型合併は、その実現が危ぶまれることにもなっている。
チャワリット党首、早期実現は断念
六月三十日にタイ六県で実施された下院議員補欠選挙(七議席)は、タイ愛国党が三議席を獲得したほか、チャートタイ党二議席、新熱望党一議席と、与党側が圧勝。ナコンナヨク県では投票やり直しとなっているが、ここはチャートタイ党の基盤のため、野党第一党・民主党候補の〃全滅〃がほぼ決定した(以上、非公式発表)。
今回の選挙でもタイ愛国党の強さが目立ったが、タクシン同党党首(首相兼教育相)はさらに党勢を拡大するため、他の与党政党との合併を積極的に推し進めている。
タイ愛国党は今月十四日に党大会を開催するが、ここでは与党第四党・セーリータム党(十四議席)との合併が正式に発表されることになっている。
そして、これと平行して調整が進んでいたのが与党第三党・新熱望党(党首・チャワリット副首相兼国防相)との合併だ。同党は、軍を退役したチャワリット氏が十一年前に立ち上げた政党。九六年の総選挙では政権党となっている。現在の議席数は三十八。この合併が実現すればタイ愛国党は三百議席を超える巨大政党となる(下院定数は五百議席)。
両党の合併は、政権発足時から政界ではささやかれていたが、チャワリット党首が、今期限りでの政界引退を宣言したことで、調整が急ピッチで進むことになった。
早ければ六月中に決定するのでは、ともみられていたが、新熱望党の一部有力議員が強く反発。チンチャイ副党首は、「仮に合併するとしたら、改めて新熱望党を設立する」と発言するなど、態度を硬化している。
また今回から下院総選挙は、小選挙区・比例代表並立制が導入されたが、「候補者を選ぶ小選挙区と違い、比例代表では政党を選んでいる。仮に合併した場合、比例代表での当選議員の扱いはどうなるのか」との議論もわきあがった。憲法、政党法では、このことに関する明確な規定がないこともあり、「選挙後、わずか半年で、政党を解散するのは選挙民をバカにしている」と反対派は息巻く。
このなか、タイ愛国党でタクシン党首に次ぐ実力者のサノ最高顧問が、「今の状況で合併しても問題を生むだけ」と、新熱望党との合併に難色を示すようになった。サノ顧問は、タイ愛国党に移籍する前は新熱望党で幹事長を務めており、現在でも両党の〃橋渡し〃の役割を演じている。両党の合併にも最初は賛意を示していた。
現議員のまるごと移籍を望むチャワリット党首に対して、サノ顧問は、現時点で合併に反対している議員を、最初から排除したい考えのようであり、両党の意見調整は困難さを増すことにもなってしまった。
また現地紙の報道によれば、サノ顧問の「心変わり」の背景には、合併後、新熱望党議員へのポスト割り当ての件もあったとみられている。
タイ愛国党では、先の教育相秘書官の人事でタクシン首相の妹が抜擢されたほか、下院委員会の委員長人事でも、サノ顧問の派閥が優遇。このため党内の学者議員グループが、「適材適所を無視した人事」と、党内の意志決定システムの変更を訴え、署名運動を始めたが、これがサノ顧問の逆鱗に触れることになった。
このため同顧問はテレビ番組でのインタビューで、「タイ愛国党のシステムで改善するところはない。それほど知識を使いたいなら別の仕事を探せばいい」とこの動きを牽制。さらに、「新たな議員が増えれば、そうでなくても少ないポスト配分がますます困難になる」と、合併に消極的な姿勢もみせはじめることになった。
これを受け、チャワリット党首は、「急いで合併する必要はない」と、合併を議題にした会議の開催を延期。今回の大型合併はどうやらまだ先の話となってしまったようだ。
(倉林義仁記者)
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