総 合

海外出稼ぎ  求められる労働者の保護

契約違反、不法就労斡旋の業者も


 チュラロンコン大学アジア研究所が、タイ人の海外就労に関するセミナーを開催。近年、著しく増加しているアジア地域への出稼ぎを中心に、労働環境や法律の問題点について意見が交換された。

 海外就労には民間の斡旋会社が多く利用されているが、「法外な斡旋手数料を請求された」、「待遇が契約と異なっていた」などの苦情が少なくない。アジア研究所の所長を務めるスパン・チャンタワニット準教授は、斡旋業者が法律に抜け穴を利用して、労働者を海外に送り出した後に契約を変更していると指摘、法律の整備が急務であると述べた。

 同研究所によれば、民間会社の斡旋手数料は、日本へ行く場合が最も高く、次いで台湾、シンガポール、マレーシアの順。しかし、これらの国々への就労希望者五百三十五人及び就労経験者四百六十一人を対象に調査したところ、労働許可が取得される割合は全体の四一%にすぎず、残りは不法就労だったという。また実際に海外に就労した人のほとんどが、斡旋手数料を支払うため収入をすべて本国に送金しながら、苛酷な状況下で働いていた。

 海外就労者を保護する法律としては、七九年制定の移民法と八五年制定の職業紹介法がある。しかしこの二つには労働者の保護に関する規定がなく、職業紹介の手順しか定めていない。タマサート大学のニコム・チャンタウィトン教授は「国内では労働者を保護する法律が整えられ、いくつかの国際的基準も導入された。しかしこれらは海外で働くタイ人には適用されていない」と述べ、労働者を保護する必要があると訴えた。外務省条約局のポンチャイ・ダンウィワタナ氏も「現在、シンガポール、日本、台湾、マレーシアとはタイ人労働者の雇用に関する双務条約は結ばれていない。海外就労者の保護を細かく規定した国際法もない」と述べている。

 タイ人の主な海外就労先は、かつての中東からアジアへと移り、現在日本と台湾が最も人気がある。労働社会福祉省雇用局によれば、アジア圏内での海外就労は九四年から急増し、九五年は前年の二倍を越える十一万八千六百人、昨年は十六万三千九百八十六人に上るという。

 日本では約三万七千人が不法就労している一方、台湾では合法的に建設労働者を受け入れているため、近年、台湾への就労者が増加している。またシンガポールでは外国人労働者の待遇は良いものの、技術を持つ者しか要求されていない。シンガポールへ多くの労働者を送るには、政府が職業訓練を提供する必要があるとの意見も出された。

 不法就労を斡旋する会社の取り締まりも求められている。業者から法外な斡旋料を請求され、さらに実際派遣先に行くと仕事はなく、労働者が外国で途方に暮れるケースも後を絶たない。

 九月二十五日には民間の斡旋会社を通じ、スウェーデンに出稼ぎに行ったタイ人四十一人が「契約どおりの賃金が支払われなかった」として帰国している。スウェーデン警察に訴え、帰国できたこれらの人々は、斡旋会社に一人当たり六万バーツから十万バーツを支払って渡航したものの、就労ビザもないまま苛酷な条件下で働かされていたという。



[BANGKOK SHUHO]