総 合

スチンダ元首相
チュアン首相に同情発言

5月事件の正当性も主張


 九二年に起きた流血の惨事「五月事件」の時に首相の座にあったスチンダ・クラパユン元陸軍司令官の発言に、政治活動家などが強く反発している。

 スチンダ氏は先に、同氏の六十七歳の誕生日を祝いに集まった人々を前に、「私が再び九二年と同じ状況に置かれ、同じ立場にあったなら、同じことをするだろう」と、この事件で肉親を失った人々の感情を逆撫でするような発言をするとともに、農民たちに突き上げられているチュアン・リークパイ首相には「同情する」と述べた。

 五月事件は、九一年二月にクーデターでチャチャイ・チュンハワン首相(当時)を追放し、全権を掌握した軍部が、公約を破って政治に表舞台に出てきたことが最大の原因とされる。

 軍部は九二年に総選挙を行ったが、首相選びが難航すると、一部政治家の要請という形で、それまで政治的ポストには就かないと公言していたスチンダ陸軍司令官(当時)が首相に就任した。このため、反スチンダ運動が市民の間に起き、大規模な抗議集会が、サナムルアン(王宮前広場)近くのラチャダムヌン通りなどで展開された。これを軍部は武力で制圧、大勢の市民が死傷し、また行方不明になった。

 スチンダ氏は、その当時自分が置かれた状況と、現在のチュアン首相の立場が同じものだとして、同情の言葉を述べたものとみられる。スチンダ氏は、現在、政府庁舎前で抗議集会を開いている農民は数百人であり、五月事件の際の数万人規模の抗議運動よりはましだとも述べている。

 このようなスチンダ発言に対し、政治活動家のスリヤサイ・カタシラ氏は、チュアン首相を独裁的だと決めつけるとともに、独裁者(スチンダ氏)は独裁者(チュアン首相)の気持ちが理解できるものだと述べて、両者を「同じ穴の狢」だと批判。市民団体「キャンペーン・フォー・デモクラシー」の副事務局長を務める同氏は、さらに、「スチンダ氏は政治家になりたいのであれば、民主党と手を組めばよい」と皮肉っている。

 またスチンダ氏は、「現在の状況も五月事件も、既得権益を守ろうとする一握りの者が陰から農民や市民を扇動し反政府運動を展開しているのは同じだ」と決めつけ、「このような状況の中でも為政者(当時の自分や現在のチュアン首相)は国全体の利益を考えていかなければならない」と述べている。

 しかし、政府に対する抗議運動という一点では共通しているものの、民主的な手続きに従って問題を解決しようとしている現政府と、それを武力による解決を選んだ当時の軍部とを同一視することは到底できない。裁判で有罪判決こそ受けていないが、多くの市民から「大罪人」のレッテルを貼られたスチンダ氏の同情発言を、チュアン首相が迷惑と受け止めていることは想像に難くない。


[BANGKOK SHUHO]