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宝石で騙される若者旅行者

邦人狙った経済犯罪


 日本人をターゲットにした犯罪事件が、タイで多発している。当紙は五月末に関連記事を掲載したが、それ以来被害にあった日本人から多くの手紙、Eメールが寄せられた。その中でも二十代の旅行者が宝石詐欺にあったケースが最も多く、手口はほとんど同じであった。これらの実例を挙げながら、もう一度その手口と対策について分析してみることにする。

 実例@―バンコクに五日間の予定で旅行していたAさんとその妹は、安いお土産物を買うためカオサン通りを歩いていたところ、「どこへ行くの?場所を教えてあげる」と流暢な日本語を話すタイ人に話しかけられた。行きたい場所を告げると「そこは今閉まっている」と言われ、翌日バリへ行くことを話すとワット・インタラヴィハーン、バンコク・トレード・センター(二二二ラン・ルアン通り)、ワット・モンクットへ行くよう勧められた。男はトゥクトゥク運転手と交渉し、運賃を五分の一にしてくれたとAさんは述べている。

 ワット・インタラヴィハーンでは、別の男に「写真を取ってあげる」と話しかけられた。一緒に写真を取ろうと言うと「両親が瞑想中なので写真には写れない」と拒否、その後バンコク・トレード・センターに行くことを告げると「今日は年に一度の宝石フェアの最終日だ。日本で売れば二倍、オーストラリアで売れば三倍になる」と言われた。

 そこでバンコク・トレード・センターに行くと、リーナと名乗った女性店員が先程の男と同じことを説明、「日本のミキモトやティファニーがいつも買い付けに来る」「大勢の客がこの宝石フェアに来る」などとも話し、客のパスポートコピーとクレジットカードの控えをAさんに見せた。さらに「二人で宝石を買えば無料でアユタヤに招待する」と言われ、Aさんと妹は合計十三万千九百バーツ(約四十万円)をクレジットカードで購入した。二人はアユタヤで夕食を取り、翌朝タイを発った。

 帰国すると、自宅へ宝石が届いていた。二人はミキモトへ電話した。そこで同社から「タイの宝石店とは一切関係ない」と説明され、Aさんは始めて詐欺に遭ったことに気が付いたという。Aさんはクレジット会社に事情を説明し、引き落としを止めるよう頼んだが無駄だった。日本のタイ国政府観光庁にも連絡したが、力になってもらえなかった。そこでバンコク・トレードセンターにファックスを送った。

 すると数日後「宝石と引き換えに、代金をクレジットにてお返しします」との手紙が届いたので、Aさんは約四十万円分の宝石を店宛てに郵送してしまった。だがそれ以来返事は無く、結局お金も宝石も騙し取られた結果となった。

 実例A―実例@とほぼ同じだが、Bさんは代金を返してもらうために、貴金属を持ってタイにもう一度来た。すると店主は「代金はクレジットで返す」とあっさり答え、Bさんのクレジットカードを使って自分の名前をサインしてBさんに渡した。Bさんはこの方法でお金が振り込まれるものと勘違いして店を出た。その夜に間違いに気づいたが、店は既に閉まっており、翌朝には日本へ帰らなければならなかった。

 実例―Bワット・ポーに向かっていたCさんは、見知らぬタイ人に「今日は休みだ」と言われ宝石店へ。十二万バーツ相当の偽物貴金属を買わされた。Cさんは在タイ日本大使館に助けを求め、タイ警察はこの宝石商を詐欺容疑で検挙、Cさんへ十万バーツを支払うことを命じた。

 実例Bでは最終的に被害額がほとんど返されたが、多くの詐欺事件は未解決のままとなっている。それは証拠が不十分だったり、一端帰国してしまうと、日本から思うように捜査依頼ができないからである。騙す側もそれを十分承知しており、翌日帰る旅行者を特に狙っている。

 宝石詐欺には、共通する手口が幾つも見られる。@日本語または英語が話せるタイ人が親切に話しかけてくるA二十代ぐらいの若い旅行者をターゲットにするケースが多い。B観光予定場所を知らせると「そこは今日閉まっている」と言うC「宝石フェアに関する説明(二―三倍で売れる、今日が最終日など)が同じDミキモトなどの大手宝飾業者の名前を出し、安心させるE買わされる代金は平均で約四十万円F詐欺が判明すると「代金はクレジットで返す」と説明するなど。

 宝石詐欺事件は急増する傾向にあるが、タイで最も多いケースはスリ、置き引き、ひったくりである。これらにはプロの手口と思われるスリが多い。またホテル等の部屋における盗難や、トランプ賭博に誘い、八百長で現金を巻き上げる被害も多数発生している。

 在タイ日本大使館では、犯罪防犯対策として以下のことを気を付けるよう呼びかけている。@バッグ等貴重品類は常に身体から離さず、特に旅券は肌身に付けるA人目のある所では不用意に現金を出さないB宝石等の装身品は必要な場所のみで身に付けるC出張する際は、事前に出迎えの者の名前、年齢、会社などはチェックしておくD別の人が迎えに来たり、予定変更になった場合には、自分で現地連絡先に確認するE不審に思ったら旅券をそのまま渡したりせず、先ずフロントへ速やかに連絡の上確認するF見知らぬ人の誘いには安易に乗らないG現金を支払う前、カードにサインをする前に、本当にこの買い物をしてよいのかどうかを再度確認するHクレジット・カードを持参する場合は、万一に備え、限度額が二十〜三十万円程度のカードを利用するI見知らぬ人から勧められた飲食物は口にしないJゲストハウス等の施設を利用する際は、貴重品は身につけて携行する。

 海外旅行中には「楽しさのあまりつい気が緩む」ことが度々ある。しかし上記にある犯罪手口、安全対策、またその国についての文化、治安などの情報収集は最低しておきたい。またこの心構えは観光客のみに限らず、長期滞在者も常に気に止めておくことが必要だ。

(工原 友博記者)



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