タイ政局
新熱望党、大半が議員辞任
政府に早期解散を要求
連立政権 「続投」意見が支配的
野党第一党・新熱望党議員の大半が政府に早期解散を迫るため議員を辞任、このため野党議席は四十六議席に激減した。連立政権では今後の政局運営を検討しているが、世論調査でも早期解散には否定的意見が支配的なため、これまでのところ、解散はせず、来年度予算案の審議、及び選挙法の改正を進めていく方針のようだ。しかし、その一方で、これまであやふやになっていた下院解散日程、及び「解散をしない理由」を明言することも必要となっており、この野党の〃捨て身〃の作戦が今後の政局運営に少なからず影響することは避けられない状況となっている。
新熱望党は、チュアン政権に早期解散の圧力をかけるため、六月二十八日、四十八人の議員が辞任。さらに、同党の最大派閥であるサノ派議員四十三人は新熱望党を離党することを正式に発表した。憲法規定によれば、「議員はいずれかの政党の党員でなければならない」ことになっており、このため、議員資格も同時に失われることになり、これまでのところ、野党議席のうち、九十一人議席が失われることになった。
このため六月二十九日現在での、野党議員は四十六人。内訳は、議員辞任を拒否した新熱望党議員が二十三人、社会行動党十九人、プラチャーコンタイ党三人、タイ党一人となっている。
連立与党内部では、基本的には「続投」を希望する議員が多いとみられているが、連立与党幹部による緊急会議では、スワット国家開発党幹事長(工業相)が、野党議員が六十―七十人残っていれば政権担当に問題はないが、これが十―二十人となった場合には、解散が避けられない、との見方を示した。
さらにスワット幹事長は、続投する場合には政府はなぜ解散しないのかを国民に明確に示す必要がある、と提案。具体的には(1)やり残している仕事を優先順位を付けて発表する、(2)解散の具体的日程を明示する――ことなどを挙げており、これにはチャートタイ党バンハーン党首も賛同している。
現在のところ、与党にとっての最優先議題は来年度予算案だ。新予算年度は十月一日からスタートが、それまでに予算が決定しない場合には、一時的に旧予算を使用するため、新規投資の開始が先延ばしとなり、景気回復のマイナス要因になってしまう。
野党側は、「予算を運用するのは次期政権となるため、来年度予算審議は新政権に任せるべき」という意見だが、
政府は、「それでは間に合わない」として、予算審議終了後の解散すべきと反論している。野党はさらに、予算を通じて与党政党の選挙区の便宜を図る可能性も否定できないと、不信感をあらわにしており、これも早期解散を政府に迫る理由のひとつとなっている。
とはいうものの仮に現時点で下院を解散した場合には、下院選挙で問題が多発することも事実だ。憲法によれば、下院を解散した場合、六十日以内に総選挙を実施することが規定されている。
ところが、下院選の「前哨戦」ともいえる上院選挙も第一回目の投票からすでに四ケ月が経過しようというのに、一部の県でやり直しが四回も続いており、最終的に定数二百議席が揃うのがいつになるのか分からない状況だ。このため、選挙法改正をともなう選挙システムの見直しは避けられないところであり、これも政府が早期解散を否定する根拠ともなっている。
一方、今回の新熱望党の作戦であるが、バンコク及び近郊在住者一千七百三十九人を対象とした世論調査では、五八・六四%が「野党としての責任を放棄している」と批判、賛成の二七・一五%を大きく上回った。今後の国会審議で、定足数に満たず、法案審議ができなかった場合には、与党議員のみならず、辞職した新熱望党議員も国民の反発を買うことになろう。
また前出の世論調査によれば、六〇・九九%が、「経済は好転している」「法案の審議を終了してから解散すべき」として早期解散には反対しており、これも賛成の二九・九八%を圧倒した。
現政権の任期が切れるのは今年の十一月。チュアン首相は、任期切れまで政権を担当することはないと発言するだけで、これまで具体的な日程に言及したことは一度もないが、バンハーン党首は、先日、「解散に最適なのは十月」と発言、連立与党の多くもこれに同調しているとみられる。
今回の新熱望党議員の辞任劇にしても、めっきり存在感が落ちている同党が総選挙に向け、何らかのアピールをするための苦肉の策との見方が一般的であり、早期解散に直結するものではなさそうだ。しかし、上院議員の一部からは、選挙法改正が終わったら即刻解散すべきだ、との意見も出ており、今後の国会運営では、これまで以上により具体的なスケジュールを国民に明示することが必要となろう。
(倉林義仁記者)
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