総 合

出口見えない上院選
選挙法改正論議、活発に

憲法裁判所 立候補資格取り消しに違法判決


通常国会は日程通り(6/24)開会

 タイ初の直接選挙となった上院選挙だが、違反行為が続出。このため、四月二十九日にタイ全国七十六県中三十六県で再選挙、そして六月四日には九県で再々選挙が実施された。しかし、ここでもまた選挙違反行為が発覚、今月十八日に四県で第四回目の投票が行われる予定となっていた。しかし、ここで憲法裁判所が十五日、「選挙管理委員会には立候補を取り消けす権限はない」との判断を下したことで、不在投票のやり直し、及び投票日の延期を余儀なくされることになっている。このため一時は、今月二十四日の通常国会開会が危ぶまれることにもなった。このほか、投票システムでも「有権者の負担が大きすぎる」との声も聞かれるなど、年内に実施予定の下院選挙に向け選挙法の改正論議が活発になってきている。

 中央選挙管理委員会(以下、中央選管)の規定では、二回当選を取り消された立候補者は、その後の再選挙で立候補資格を失うことになっている。しかし、これに対して、該当者が異議を申し立てたため、憲法裁判所で審議されることになり、今月十五日、同裁判所は「中央選管に立候補資格を取り消す権限はない」との判決を下した。

 このため、今月十八日にノンカイ、マハサラカム、ウドンタニ、ウボンラチャタニの四県で実施される予定だった第四回目の投票は延期を余儀なくされることになった。というのは、このうち三県で四人が今回の選挙で立候補資格を取り消されていたためだ。このため、十日、十一日に実施された不在投票は無効となり、改めて七月一日と二日に不在投票を実施、投票日は七月九日に延期されることになった(このうちウボンラチャタニ県だけは取り消し者がいなかったため、予定通り六月十八日に投票を実施)。なお、この判決の効力はその以前の選挙には遡及しないため、第三回目以前の選挙は有効となっている。

 これにより問題となったのが、通常国会の日程だった。今月二十四日に開会が予定されていたが、上院を招集することができないため、国会を開会できるかどうかで意見が分かれ、憲法裁判所の判断を仰ぐことになった。そして同裁判所では二十二日、「下院のみ開会可能」との判断を示したが、法律専門家でもあるミーチャイ前上院議長は、「憲法をよく読めば、国会を開くことができないことは明白、憲法裁判所は政府の圧力に屈した」と、条文に基づかない解釈は後でより大きな問題になりかねない、と指摘する。

 現行憲法は、これまでで最も民主的と評価が高いが、理想に走り過ぎ、タイ人の政治意識がそれについていかない、との面も否めず、今回の上院選でもさまざまな問題が表出することになった。

 先の憲法裁判所の立候補資格取り消しについての判決にしても、市民からは「一回でも選挙違反行為をしたら立候補資格を取り消すべきだ」との声が上がっており、同裁判所の判決に対しては、中央選管、及び市民団体から「政治浄化の流れに逆行する判決」との批判が上がっている。

 また今回、投票のやり直しが続き、なかなか上院定数である二百議席がそろわなかったことへの対策として、「次点を繰り上げてはどうか」との意見も多いが、これには中央選管が反対している。

 年内の実施が確実となっている下院選挙では五百議席が選出されることになる。しかも、憲法の規定により、選挙日から三十日以内に第一回目の議会を召集しなくてはならない。「二百の議席の上院でこれほどてこずるなら、下院選挙ではコメディになるだろう」との声も政府内からは聞かれている。このため、下院選挙に向けて選挙法律改正論議が活発化するのは必至の状況だ。

 このほか、投票方式でも問題点が指摘。海外選挙での郵送投票システムの導入が提言されているほか、地方出身者の投票も問題になった。

 例えばタイ北部チェンマイ県に戸籍があり、バンコクで働いていた場合には、投票日にわざわざ実家へ帰らなければならない。中央選管は「選挙は国民の義務」と力説するが、それでも出稼者にとって帰省費用が大きな負担となることは事実だ。

 森首相は、「(衆院選挙に関心のない有権者は)寝てしまってくれればいい」と発言、猛反発を招いたが、選挙が権利である日本と違い、タイでは選挙を義務と規定、投票を棄権した場合には、公民権の一部が停止される。このため、「現在の在住地で投票ができるようにすべき」との要望は後を立たない。

 一方、上院議員選挙の見通しであるが、今回、憲法裁判所の裁定により、先に立候補資格を取り消された者が再び立候補することから、中央選管では、「違反の起きる確立は七〇%」と悲観論が支配的となっている。このためすでに第五回目の投票も視野にいれており、投票日も七月二十三日に内定するなど、予断を許さない状況だ。

 さらにこれまでに使用した選挙関連費用は二十憶バーツに達しており、また今回の四県のみの再選挙でも三千二百万バーツが必要となっている。このため、「予算がもったいない」との声も聞かれ、選挙システムの変更は避けられないところとなっているが、ある現地誌は「一番悪いのは不正をする人間であることを忘れてはならない」との論評、その変更が政治浄化に逆行するものであってはならない、と警告している。

(倉林義仁記者)



[BANGKOK SHUHO]