経 済

証券市場 抜本的改革に踏み込まず

世界的潮流に乗り遅れる


 一九九三年以来低迷状態にあるタイの株式市場をテコ入れするため、タイ証券取引所(SET)はさまざまな新しい試みを実施する予定だ。手始めとして上場基準の緩和や投資優遇税制がおこなわれる。ただ、海外で証券取引所が連携する構想が活発化しているもかかわらず、SETの動きは鈍く、世界的潮流に取り残される可能性もある。

 SETは変化する資本市場ニーズに対応するため、上場基準の緩和を実施する。従来の業績基準を改め、情報開示(ディスクロージャー)を重視するのがその大筋。また審査過程も大幅に簡素化されることが決まった。

 上場を希望する企業は大別して@直近の経営年度に三千万バーツ以上の純益を計上していることA株式時価総額が十五億バーツ以上であることB直近の経営年度の売上高が二十億バーツ以上であること――の三基準の中から経営状況に適した基準を選択できるようになる。

 これに伴い、不要な基準は廃止されることが決まった。株式額面や累積損失に関する基準はなくなり、上場前の経営陣交替に関する規制も大幅に緩和される。さらにSETは、企業上場を促進するため、上場企業に優遇税制を適用することも提案している。

 ただ上場基準が緩和されても、体力的に劣った企業が上場できるようになるだけで魅力的な市場にはならない、という厳しい見方もある。多様化する投資家のニーズに応え、多様なサービスを提供することこそ、市場活性化への近道との意見が主流になりつつあるからだ。

 また新市場として、中小企業や新興企業の上場を可能にする代替投資市場(MAI)を設立する構想があるが、SET上場企業の相当数が投資に適さない状態である以上、新たな市場を設ける意義があるのか、との批判がくすぶっている。経済危機以前に設立された店頭市場も上場企業が数社しかなく、閑散としていたため、開店休業に追い込まれたという経験があるからだ。

 タイ政府は証券市場がタイ経済の未来を占ううえで、重要なカギを握っているとの認識を示しているものの、大胆な証券政策を打ち出すにはいたっていない。世界中で国境を越えた証券市場の協力が進んでいるが、タイ証券当局は足下の経済政策にとらわれて身動きができない状況だ。

 地場証券会社には危機感が募っており、証券当局に何らかの手を打つように要請している。また、証券市場の不調は、海外投資が制限されている保険会社や銀行、ファイナンスカンパニーの経営を間接的に圧迫しており、対策が急がれている。SETは、相場のテコ入れ策として、長期的投資に対する優遇税制などを提案しているが、効果を疑問視する向きも少なくない。



[BANGKOK SHUHO]