5月流血事件調査報告書
検閲箇所を見直し
「黒塗り」公開の批判受け
スラユット陸軍司令官 全文公開を提言
国防省情報委員会は今月五日、九二年に起きた「五月流血事件」の調査報告書を再度公開することを決定した。この報告書は先月二十九日、閲覧を要求していた六人に公開されたものの、全六百五ページのうち六〇%が黒く塗りつぶされていた。五月流血事件被害者親族会は報告書の完全公開を求め、チュアン・リークパイ首相兼国防相及び首相秘書事務局に嘆願書を提出。またソポン・ラタナコン元最高裁判所長が率いた調査団による報告書についても閲覧希望を申し出た。
チュアン首相兼国防相に公開を命じる権限はないが、国防省のサナン報道官によれば、首相は調査委員会にできるだけ多くを公開するよう要請しているいう。同報道官は「国の安全保障と人権保護の観点から全文は公開できないが、次回の未公開部分は二〇%程度にとどまる」と述べている。また報告書には前回公開されなかった百十四ページに及ぶ書類も添付されており、次回はこれも公開の対象となる。ただし報告書と同時に公開されるかどうかはまだ決まっていない。
「五月流血事件」は九二年、「首相に就任しない」との約束を反故にして、四月に首相となったスチンダ陸軍司令官(当時)に国民が反発、退陣を要求する抗議集会やデモが盛んになったところ、五月十八日未明からバンコクのラチャダムヌン通りで国軍と警察よる無差別発砲が行われた事件。二十日深夜に国王陛下が調停して収まるまでに、政府の公式発表では四十四人が死亡、三十八人が行方不明になったとされているが、被害者の親族は「死者と行方不明者は数百人に上る」と訴えている。
被害者の親族は、報告書の中に行方不明者を探す手掛かりを求めている。しかしサナン報道官は「次回はほぼすべての情報が公開されるため、一般の人々は満足するだろう。しかし行方不明者に関する記述はもともと報告書にないので、親族の期待に沿うものではない。前回公開されなかった添付書類も行方不明者には言及していない」と述べている。
次回の公開に先立ち、国防省情報委員会では報告書に氏名が記載されている人物に、公開の承諾を求めることとなった。現在、同委員会は問い合わせの書簡を送付した複数の国軍高官と政治家からの回答を待っている。回答は今月二十日が期限とされているため、報告書の公開は二十日以降となる見込みだ。
承諾が得られなかった人物については、記載部分は公開されないことになる。しかし情報委員会によれば、デモ制圧を指示したスチンダ元首相ほか退役、現役を含めた国軍高官四十人が、自分の氏名が記載された部分の公開に口頭で同意しているという。全文公開を提言するスラユット・チュラノント陸軍司令官は「すべて公開しても安全保障上の問題はない。被害者の親族に限らず、観光客に公開してもよい」とさえ語っている。
(小林ゆかり記者)
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