企業レポート
オンライン・ショッピングの先駆者
ダイレクト・セールス・トレーディング社(DST)
「体が大きい者が小さい者に常に勝るとは、限りません」
ダイレクト・セールス・トレーディング社(DST)のタヴィポル・チャロエンキッティクンパイサル社長は、厳しい競争を繰り広げているタイの小売業界において、自社の立場をこう語る。
タヴィポル氏は一九九七年十月、それまでとは違った買物の仕方をタイに普及させる狙いからDSTを設立。インターネットで商品のオーダーを受け、配達するサービスを開始したのは同社がタイで第一人者であるという。
「デリバリー・サービスはピザ・ハットが弊社より先でしたが、日用品などを配達するアイデアは、私が開拓しました」
ダヴィポル氏はDSTの他に、サイアム・ウォール・リーシング・カンパニーというリース会社を営業している。しかし、同社は経済危機の打撃を強く受け経営不振に陥り、異なる業務で巻き返しを図るためDST設立へ踏み切ったに至ったという。同社の登録資本金は百万バーツ。
速達による商品デリバリーサービスで他の大手スーパーマーケットに対抗する一方、ダヴィポル氏は一九九九年に千万バーツを増資し、消費者がインターネットで商品を物色し、そこでオーダーできる電子商取引を始める。アドレスはWWW・DSTMART・COMで、取り扱い商品は日用品、食料品など約五千種を揃えている。
消費者は電話とインターネットで商品を購入することができる。電話の場合、同社から商品カタログが自宅に送られ、注文するとそこから最も近い支店から二時間以内に自宅に配達される。
インターネットの場合は、商品をネット上で見ることができ、オーダーする際はまず氏名、電話番号、住所などを登録し、それから注文する商品と支払い方法を選びメールする。DSTはメールを受け取った後、電話で確認を取り、商品を配達する。現在のところ電子決済(インターネット上でクレジットカードや電子マネーなどで支払いするサービス)は行っておらず、配達された時点で現金払いかクレジットカードによる支払いのみとなっている。
なお、注文は最低三百バーツから受け付けており、配達料として二十バーツがそれに加算される。
ダヴィポル氏によれば、現在およそ一万人の顧客が同サービスを定期的に利用しており、それらの多くはバンコク郊外に住む会社員であるという。また、オーダー数は一日平均で千あり、一度に三千バーツ分の商品を購入する顧客も少なくないそうだ。
大手企業の中にもインターネットを利用したオンラインショッピングを計画しているところが多い。タイ最大の消費財コングロマリット、サハ・グループは、昨年一月にインターネット契約をし、現在オンライン・ショッピング事業の立ち上げ準備を急いでいる。また大手小売のセントラル・デパートメント・ストア、トップス・スーパーマーケット、ビックCスーパーセンター、パワー・バイ、スーパースポーツ、マークス・アンド・スペンサー、モール・グループなども、同事業を開始する意向を示している。
セントラル・グループのスティラック・チラティバット副社長は、情報社会に必要なインフラがタイに整備されていく中、小売業の経営の仕方に大幅な変化が現れ始めていると述べた。現時点ではタイのインターネット人口は他国と比べ少ないが、将来的には電子商取引は普及すると推測している。
このような大手企業がオンラインショッピング事業へ進出を始めている中、DSTはどのように対抗していくのだろうか。ダヴィポル社長は「商品数では、スーパーマーケットに劣りますが、DSTにはオンライン事業のパイオニアとしての経験と実績があります。また競争が厳しくなるにつれ固定客の確保や、配送サービスを行うマーケットをどこに置くかなど、新規参入者に直面するハードルは高くなっていくのではないでしょうか」
DSTは現在、バンコク都内に十一支店を構え、バンコクとその近隣県で配送サービスを実施している。顧客確保策としては、アクセス数が多いインターネットのウェブ・サイトであるCUBOOK、マス・コミュニケーション・オーガナイゼーション・タイランド(MCOT)、KSCインターネット、THAIURL・COMなどへリンクを積極的に広げている。また将来的な計画として、ナコーン・パトム、ナコーン・ラーチャシーマー、コーンケーン、ウドーン・ターニーの四県で事業拡大する意向で、これに加え都内の支店数も今年から来年にかけて拡大する予定だ。
(チャットケーオ・ティアンケーオ記者)
|