総 合

パクムーン・ダム
住民の抗議行動が長期化

政治利用を懸念する声も


 タイ東北部ウボンラチャタニ県のパクムーン・ダム施設周辺では、一週間ほど前からに千人を越える地元住民が陣取って、当局に放水路の開門を要求している。住民らは「ダムが産卵する魚の遡上を妨げている」と主張。ムーン地区の生態系をこれ以上壊さないためにも、魚が遡上できるよう放水口を開く必要があるとしている。

 これに対し当局は「ダムは魚の産卵を阻むものではない」と説明しているが、住民たちは聞き入れず、居座り続けている。

 現在ダムでは発電機一基が停止したままとなっているが、大勢の住民が陣取っているため公社職員が近づけず、再機動できない状態が続いている。タイ発電公社のスピン・パンヤマーク総裁補によれば、このままでは東北部への電力供給に支障が出る恐れがあるという。電力供給が止まれば、灌漑システムが作動しなくなりダム上流の村が洪水に見舞われるだけでなく、ダムの放水口も損傷する恐れあるという。

 チュアン・リークパイ首相は「第三者に直接被害が及ぶようであれば、抗議に集まった住民を立ち退かせる必要もあるが、このような平和的な座り込みを禁止することは不可能」と表明。「ダムは魚の遡上を妨げない」との調査報告を再度説明し、放水路を開くかどうかについてはタイ発電公社の判断に委ねている。

 タイ発電公社は座り込みを続ける住民うち十四人を、発電事業妨害の罪で告訴した。訴えられた市民団体「貧者議会」のメンバー、パクディ・チャンライアットさんは「抗議に集まった住民を脅して散会させようとしている」と、公社の姿勢を非難している。

 抗議運動には住民のほか、大学生で構成されるタイ学生連盟など様々な市民団体も加わっている。バンヤット・バンタタン副首相兼内相は「チュアン政権のイメージダウンを狙う団体が住民を煽って過激な行動に走らせる恐れがある」と、この抗議運動が政治に利用されることを懸念している。

 問題が長期化する中、先の上院議員選挙における当選者らは「地方当局に任せるのではなく、政府が解決に乗り出すべき」と主張している。その一人、サワイ・プラムマニー氏は「県当局と発電公社だけに任せておくのではなく、政府が何らの方針を打ち出して解決に努力する必要がある」と表明。当局と住民は互いに不信感を抱いているため、中立の委員会を設置し、両者の意見を公正に検討することが望ましいとしている。



[BANGKOK SHUHO]