総 合

理想求める新生・上院  
中央選管、「妥協せず」

再々選挙は6月4日の見通し


 タイの議会は上院と下院で構成されている。日本の衆議院に相当するのが下院であり、法案審議では下院の議決が優先される。九七年に新憲法が制定されるまでは、上院議員はどちらかといえば、名誉職の意味合いが強かった。

 上院議員は国王が任命することになっているが、その名簿を作成するのは首相であることから、政権に近い者が選ばれがちだった。また軍人にとっては、上院議員の地位が「ステイタスシンボル」であることから、人選時には水面下での動きが活発になるなど、軍関係者は常に多数派となっていた。

 しかし九七年にタイ憲政史上最も民主的といわれる新憲法が制定されると、上院議員は直接選挙で選ばれることになり、しかも権限が拡大されることになる。法案審議での下院の優越はかわらないが、この下院を監視する機能が強化された。

 なかでも特記されるのが、議員・閣僚・最重要政治職を罷免する権限が上院に与えられたことだ。これは上院の五分の三以上の票で、罷免を決議することができ、また罷免された者はその後五年間、政治上の役職に就くことが禁じられるという厳しいもの。これは下院の監視を強化することで、政治を浄化しようという、憲法起草者らの理想がかたちになったものだ。

 しかし上院の権限が強化されたことは、各政党が自党の息のかかった者を送り込もうと躍起になることにつながり、このことが選挙違反行為を多発させることにもなった。

 三月四日の投票では七十八人が当選取り消しとなり、七十八県中三十五県でやり直しが決定。再選挙の投票は四月二十九日に行われたが、その直後から選挙違反が続々と報告されており、中央選管関係者からは「二十県近くで再々選挙の見通し」との声も出ている。

 「新憲法は革新的すぎる」との意見はこれまでにもよく聞かれているが、今回の中央選管の対応には「厳格すぎるのでは」との声もささやかれ始めている。もちろん厳格な対処を称賛する者も少なくないのだが、その一方で、〃強権〃に対する不安が出始めていることも確かだ。

 権力分散が民主主義の基本システムのひとつであることを考えると、その民主主義の基盤である選挙を、五人の選挙管理委員会が仕切るわけであるから、過度の権限集中を危ぶむ見方が出るのも当然といえよう。

 再選挙の結果だが、今月十日までで十五県二十九人の当選が確定している。残り四十九人全部の結果が確定するのは今月第三週になる見通し。しかし、これまでのところ、再々選挙になる公算が大きい。

 中央選管は六月二十四日に始まる通常国会に間に合わせるために、六月二十日までに最終決着をつけるとしていることから、再々選挙は六月四日の実施がほぼ確実となっている。



[BANGKOK SHUHO]