『コバルト60』被ばく事故
犠牲者は3人に
中絶を検討する妊婦も
バンコクに接するサムットプラカン県の廃品リサイクル場に放置されていた放射線治療機器に残存していた放射性物質「コバルト六〇」に、廃品回収業者ら数人が被ばくするという事件が今年の二月下旬に起きたが、三月二十四日、被ばくした男性が都内ラチャテウィ病院で死亡した。これで重体と報じられていた三人の被ばく者全員が死亡するという最悪の結果となった。
最初の犠牲者が出た時は、その火葬にあたり、当初予定されていた都内トンブリ地区の寺院周辺の住人が「火葬の際に放射能を含んだ灰が空中に漂う」とのデマを信じ、火葬に猛反対。タライ回しにされた挙句、故郷のカラシン県まで運ばれ、埋葬された(火葬はやはり反対があったため取りやめ)。このためアティット科学技術環境相は急きょ、火葬に関して過敏反応をしないようにとのコメントを発表することを余儀なくされている。タイの後進性を示す出来事といえそうだ。
その一方で、被ばく女性の中絶問題が現在、注目を集めている。これは妊娠三ケ月になるサムットプラカン県に住む女性(三三)が、前出のラチャテウィ病院をたずね、出産の不安を訴えたことでマスコミに取り上げられることとなった。
同女性はすでに血液検査をはじめとする精密検査を受け、「異常なし」と診断されているが、それでもお腹の子どもに放射能の影響がないかどうかを心配し、再検査を求めている。この女性は三人目の犠牲者となった被ばく者の自宅のとなりで美容院を経営していることもあり、強い不安を感じているようだ。
病院側は母体の健康には問題がないとしながらも、子どもの方は断言ができないと診断。このため現在医学局で特別委員会を設置し、中絶をすべきかどうかを検討しているところだ。
タイは日本と違い、中絶はたとえそれが三ケ月以下であろうと違法行為。中絶が許可されるのは、(一)レイプされた場合(二)出産により母体が危険にさらされる場合――に限定される。それだけに医学と法律の両面から考えなければならず、より慎重な討議が必要となる。
今回のケースでは女性は出産を希望しているものの、それでも「障害を持って生まれてきたら、子どもも家族も不幸」と心情と吐露する。中絶に関しては夫も同意しているというが、「ふつうに生活していたのにどうしてこのような目にあうのか」と怒りを隠せないでいる。
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