総 合

内相・副首相・議員を辞任

サナン民主党幹事長、資産隠し疑惑で「失脚」寸前
国家汚職制圧委員会 「虚偽申告」と公式発表


サナン氏法律顧問 「憲法裁判所で潔白を証明する」

 新憲法の規定により閣僚・国会議員は就任時と退任時に、自分自身・配偶者・未成年の子女の資産・負債を国家汚職制圧委員会(以下、汚職制圧委)に報告することが義務づけられている。これは在職中に政治上の地位を利用しての不正蓄財がないかどうかを調べるためのものだ。

 九七年のチュアン現政権発足時も、この規定に従い、それぞれ資産・負債を報告しているが、この時、サナン民主党幹事長が虚偽の申告をしたとの疑惑が、昨年十二月の内閣不信任案審議で野党側により取り上げられた。その時は不信任案可決には至らなかったが、野党側はその後も攻撃の手をゆるめず、汚職制圧委の調査を要求したため、本格的な取り調べがスタートすることになった。

 しかしサナン氏は連立政権のマネージャーと呼ばれる実力者。副首相と内相を兼任するなど、その政治力は強大なため、「断固とした決断はできないだろう」との見方が一般的だった。

 ところが汚職制圧委は三月二十八日、「サナン氏の資産・負債申告には虚偽申告が含まれていた」と公式に発表、閣僚・議員・党役員などすべての政治職を罷免するよう憲法裁判所に求めたことで、政界に大きな衝撃が走ることとなった。

 サナン氏の「命取り」となったのは、資産・負債申告時、約四千五百万バーツをAASオートサービス社から借り入れたと報告したことだ。これが先の不信任案審議で野党側から「資産を少ないように見せかけた」と糾弾されることになった。

 そしてその後、AASオートサービス社が商業省に提出した財務報告書にサナン氏への融資が記載されていなかったことが判明。これに対して、同社幹部は「帳簿に記録がないのは個人的な貸し借りだったため」と苦しい釈明をしているが、個人的な貸し借りにしてはあまりに金額が大きく、タイのマスコミでも懐疑的な論調が支配的だった。

 「あれは借り入れ金だった」とサナン氏はあくまでも「潔白」を主張しているが、それでも「このままでは総選挙に与える悪影響が大きすぎる」と判断したのか、翌二十九日、副首相・内相・下院議員を辞任し、政治職は民主党の幹事長職のみとすることを発表。「地位を利用して憲法裁判所の審議に圧力をかけていると思われたくないため」と同氏は辞任理由を説明している。

 サナン氏に対する罷免が正式に決定するかどうかは、これから始まる憲法裁判所での審議次第ということになるのだが、ここで「クロ」と裁定された場合には、サナン氏はすべての政治職を罷免されるだけでなく、以後五年間あらゆる政治職に就くことができなくなる。

 しかし憲法裁判所が罷免要請を棄却したとしても、今度は上院に舞台を移して、罷免審議が始まる可能性が高く(新憲法では上院に閣僚・国会議員の罷免権を与えている)、どちらに転んでもサナン氏がこれまでどおりの政治力を発揮することは難しくなりそうだ。サナン氏からも「仮に五年間、政治職に就けないとしたら、政界から足をあらい実業家になる」と弱気ともとれる発言が出ている。

 民主党内部では「まだ最終的な結論が出たわけではない」と擁護する発言が目だっているものの、その一方では、すでに後任幹事長・内相の選出に入っているとの報道もあり、権力闘争が水面下で活発になりつつあるようだ。

 一方、今回の辞任騒動を受け、連立与党内部では早くも不穏な動きが出始めている。

 与党第三党・チャートタイ党報道官は「政府は解散・辞職により責任を明確にすべきだ」と自ら糾弾、連立政権の亀裂の深さを露呈することにもなっている。チュアン首相は、「(サナン氏の件は)あくまでも個人的な問題。政権とは関係ない」と強弁してはいるものの、今回のサナン氏の辞任劇が下院の解散時期に影響を与えることは間違いなさそうだ。

(倉林義仁記者)



[BANGKOK SHUHO]