少年院連続脱走事件 都内で400人以上逃走中
警察当局 犯罪に対する警戒呼びかけ
三月十八日、バンコク都内バンナ地区のバンカルナ少年院で約千人が暴動を起こし、六百人が脱走して以来、各地の非行少年更生施設で脱走が相次いでいる。三月二十九日には、都内バンケン地区のバンメッタ鑑別所では三回目の脱走事件が起きた。四月十三日から三日間のタイ正月ソンクランには、施設に収容されている多くの少年が帰宅を希望しているため、各施設では再び脱走者が出ることを警戒し、監視を強めている。
バンコク都内では三月十八日に起きたバンカルナ少年院の脱走事件を初めに、バンメッタ鑑別所で十九日に四百三十一人、二十一日に二百人、二十九日に九十五人が脱走した。このほかナコンラチャシマ県、ウボンラチャタニ県でも同様の事件が起きている。バンカルナ少年院では脱走事件後、ほとんどの少年に五日間の一時保釈が認められており、これを知った他の非行少年更生施設の少年が追随したものと見られている。
二十九日に脱走したバンメッタ鑑別所の脱走した少年らは、一時保釈が認められなかったことを不満として脱走を企てたと語っている。今回連れ戻された少年の中には、三回脱走を試みた少年も十八人含まれていた。同鑑別所内では複数のリーダー格の少年が脱走を計画、指揮しており、本来はソンクラン前日に施設に放火して脱走する予定だった。しかし事前に職員がこの計画を知り、警察と国軍に協力を依頼、四月七日から国軍による教練と警察による警備が導入されることになったため、計画を早めたという。同鑑別所では更生が困難と見られるリーダー格の少年を地方の少年鑑別所に移し、組織的計画的な脱走を阻止したいとしている。
バンカルナ少年院では収容者千四百三十人のうち約三百人が、保釈期限を過ぎた現在も戻っていない。バンメッタ鑑別所でも一部が連れ戻されたものの、依然として百二十六人が逃走している。中央家庭裁判所は当初、自主的に戻れば処罰しないと表明していたが、その後警察に逮捕を要請、二十八日にはバンカルナ少年院の脱走者三百人とバンメッタ鑑別所の先の脱走者六十人について逮捕状が出されることとなった。
非行少年更生施設では近年の麻薬犯罪取り締まり強化に伴い、少年の麻薬犯罪者が多数収容されている。収容者数は一昨年と比較して三倍に膨れ上がっており、その八割は麻薬犯罪者だ。収容者急増の原因となっている麻薬犯罪者を、治療を兼ねた別の更生施設に移すべきとの意見も出されているが財政的に難しく、各施設では増え続ける麻薬犯罪者により過密化が進んでいる。バンカルナ少年院では職員による行き過ぎた体罰が明らかになっており、職員と少年のストレスも高まっている。
中央家庭裁判所のドゥアンマン・シラパアチャ主席判事は「非行少年更生施設は予算不足から、十分な数の職員が配置されておらず、その質にも問題がある」と述べ、バンカルナ少年院とバンメッタ教護院に対する三千三百万バーツの施設改善費割り当てを決定した。またパウィナ・ホンサクン国務相は精神科医や専門の職員が不足し、適切な矯正指導が行われていないことを指摘、政府により多くの予算を割り当てるよう求めている。
脱走した少年については保護者を中心に、劣悪な環境に置かれているとして同情する意見も少なくない。しかし施設側では、更生が見られない少年や脱走常習者も多いため、規律を教えるためにも安易な一時保釈は認めるべきではないとしている。バンカルナ少年院でも、先の一時保釈は受け入れ先が確実な軽犯罪者に限られている。
バンコクでは現在、四百人以上の少年が施設に戻っていない。二十二日にはバンカルナ少年院から脱走した少年が、都内トンブリ地区の寺院でシンナーを吸って仲間を殺害し、翌日逮捕された。脱走者による犯罪はこれ以外に報告されていないが、脱走する際オートバイを盗んだ少年も複数目撃されている。
バンカルナ少年院を管轄するバンナ警察署のソンタヤー・チャイヨー巡査は「都内では普段より犯罪に気を付けた方がよい」としながらも、最近は家庭崩壊から非行に走る少年が増えており、これらの少年は恩情を持って更生させる余地があると述べている。外国人旅行者も警戒した方がよいのではないかとの質問に対し、同巡査は「脱走した少年の再犯を恐れている人は、実際あまり多くない。逮捕には努力するが、非行少年を更生させるシステムが整っていない以上、社会が暖かく受け入れることも大切」と語っている。
(小林ゆかり記者)
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