総 合

睡眠薬強盗に注意

「見知らぬ人の親切」に落とし穴


 タイの日本大使館によれば、昨年、日本人が犯罪に巻き込まれ大使館に駆け込んできた件数は千三百三十八件。このうち一番多かったのが路上や路線バスなどでのスリやひったくりで百九十四件、それにホテルでの盗難(百三十二件)、貴金属販売などの詐欺行為(七十八件)、睡眠薬を使用した犯罪(五十六件)と続くが、なかでも睡眠薬強盗は生命の危険を伴うことから特に警戒が必要といえるだろう。

 二ケ月間の海外研修のため訪タイしたS君(大学四年生)は、タイ国のことを少しでもよく知ろうと、タイ人と知り合うチャンスを求めてサイアムスクエアの階段に座り、道路を行き交う人たちを眺めていた。

 しばらくすると二人組のタイ人が笑顔で近づいてきたため、談笑。「非常にフレンドリーだった」ためすっかり信用したS君は、誘われるまま近くのパブでビールを飲みながら、さらに会話を楽しむことになった。ここの支払いはタイ人が済ませたという。

 その後、タイ人男性のひとりが「中国寺院を案内してやろうか」と提案、すこし酔っていたS君は何の疑いもなしに同行することにした。まだバンコクに着いたばかりで土地には不案内だったが、「空港の近くということはなんとなくわかった」と、事件後S君は話している。

 寺院に到着すると、タイ人から「喉がかわいたろう」と、ヤクルトを一本差し出された。。すでにキャップが剥がされていたため、「なぜだろう」との考えが一瞬脳裏をよぎったが、それでも、「人の親切を無にしたら悪い」と一気に飲み干した。

 しばらくすると、猛烈な睡魔が襲ってきて気絶、そして意識が戻った時にはガソリンスタンドの片隅で倒れていた。今度は本当に親切なタクシー運転手に宿泊しているホテルまで送り届けてもらったが、かなりの量の睡眠薬を飲まされたようで、その後二日間はまっすぐに歩けない状態が続いた。パスポート、現金、カメラなどの貴重品が消えていたのはいうまでもない。

 最近ではどのガイドブックにも数々の犯罪例が載っているが、それでもだまされる旅行者は後をたたない。睡眠薬強盗事件では一時、売春婦が自分の乳首に睡眠薬を塗り込み、それを口にした買春客が意識を失っているすきに、現金・貴重品を盗むという事件がパタヤを中心に連発した。なかには死亡するケースもあった。

 見知らぬ人の親切はまず疑ってかかるくらいの慎重さがあっても、いいかもしれない。


[BANGKOK SHUHO]