やはり、目が届かない・・・
不手際相次ぐ選管委
広報、政党助成金問題などに批判
九七年に発布された新憲法の規定により、地方選挙・全国選挙は内務省に代わり、選挙管理委員会が〃仕切る〃ことになっているが、これまで巨大組織の内務省が担っていたこの大仕事を、わずか五人の選挙管理委員会が肩代わりするわけであり、「予想通り」いろいろな不手際が起きることになっている。
現在、取り沙汰されているのが上院議員の被選挙権資格。上院議員に立候補した国立ラチャパット教育大学の評議会評議員数名が、いったんは受理された後、「資格なし」として取り消されたことで、論争を呼び起こすこととなった。
選挙管理委員会の言い分は「『公務員とみなされる者は上院議員のなれない』との憲法条文に抵触すると判断したため」というものだが、同職は名誉職の意味合いが強く、まったくの無給。このため、「無給なのに公務員というのはおかしい」と立候補を取り消されたラチャパット大学の評議会評議員らは反論、現在、憲法裁判所に審査を要請しているところだ。
さらに「立候補資格に関する事前の説明がしっかりしていれば、辞職してから立候補するという選択肢もあった」との批判も相次いだ。現地新聞でも「一年近く準備期間があったのに、事前の広報が不足していた」と論評され、同委員会の人手不足・予算不足が浮き彫りになるなど、総選挙の先行きに暗雲が立ち込めることにもなっている。
さらに政党助成金支給でも選挙管理委員会の「失態」が取り沙汰。政党法に基づき各政党には助成金が支給されることになっているが、新規政党でまだ議員がいない政党が、連立与党政党よりも多額の助成金を受けていることが判明するなど、委員会の審査基準を疑問視する向きも多い。
例えば与党第三党・チャートタイ党が八百八十万バーツ、与党第二党・チャートパタナ党は百三十九万バーツであるのに対して、議員がひとりもいない新政党である農民党、及び人民権力党が、それぞれ八百五十万バーツ、三百十万バーツを支給されるなど、一般市民の間からも「どうして」の声が出ている。
分配の基準は党員数・支部数・議員数によって決まるが、新政党の場合、助成金ほしさに、支部を乱立、手当たりしだいに党員を駆り集めるなどの「突貫工事」をしているとの指摘がある。これらの党員のなかには、複数の政党に登録されている者もいるようであり、さらに空き家となったタウンハウスが支部に指定されているケースがテレビで報道されるなど、ここでも予算不足・人手不足のため、目が届かないという結果となっている。
新憲法の理念は「クリーンな政治」を実現することだ。このため、民主政治の基本である選挙への政治家の影響力を排除するために、政治的に中立機関である選挙管理委員会を新設、選挙を主導させることにした。しかし現実として、予算・人員面の問題などから、かえって混乱を招くことにもなっている。急進的な憲法の理想に、実務面が追いついていかない格好であり、今後の政治改革に不安を残すことになった、ともいえそうだ。
(倉林義仁記者)
|