総 合

カレン族武装グループ、タイ領内の病院占拠

タイ国軍  犯人全員を射殺


国内世論は政府の対応を支持

 ミャンマーと国境を接するタイ西部ラチャブリ県で、二十四日午前七時頃、カレン族ミャンマー人武装グループが県立病院に乱入。病院職員と患者約二百人を人質に取って立てこもったが、翌二十五日、午前五時半頃突入したタイ国軍特殊部隊により全員射殺された。途中解放された一部の人々を含め人質に危害は加えられなかったが、銃撃戦で警察官数人が負傷、七十八歳の女性患者が心臓発作を起こして死亡したほか、三人の重症患者が死亡している。

 武装グループはタイ政府に対し「武力によるカレン族ミャンマー人の入国阻止をやめ、タイ国内で難民として保護すること」、「タイ側に逃亡してきた負傷者の治療」、「カレン族を弾圧するミャンマー政府への圧力」、「逃走用のヘリコプターの派遣」を要求。政府は「難民の保護と治療は自首を条件に受け入れる」と回答したが、犯人はこれを拒否していた。

 ラチャブリ県近くのミャンマー領内では、雨季が明けた昨年十一月頃から、ミャンマー国軍による反政府カレン族に対する攻撃が激しさを増しており、多くがタイ領内に難民となって押し寄せている。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、これまで千人以上のカレン族ミャンマー人がタイ側に避難しているという。特に一月中旬には、戦闘のたびに数百人が国境を越えてきた。これらの中には武装組織「神の軍隊」の兵士も含まれていたため、タイ国軍はカレン族ミャンマー人の入国を阻止。威嚇発砲で帰還しない場合は、砲撃も辞さないと表明していた。

 病院を占拠した武装グループは、反ミャンマー政府組織に属する年齢十五歳から三十歳位の十人。そのうち七人は「神の軍隊」のメンバー、三人は「勇猛ミャンマー学生戦闘組織(VBSW)」のメンバーと見られている。昨年十月、バンコクでミャンマー大使館占拠事件を起こした五人も両組織に所属していた。

 「神の軍隊」はジョニーとルターという十代前半の双子をリーダーとする急進的な武装勢力で、三年ほど前カレン民族同盟(KNU)より分離した。ジョニーはミャンマー大使館占拠事件の主犯格とされているが、今回の犯行グループには含まれていなかった。一方、八九年ミャンマー航空機乗っ取り事件を起こし、さらに昨年ジョニーと共にミャンマー大使館を占拠した「勇猛ミャンマー学生戦闘組織(VBSW)」のメンバー、通称ベーダが今回の病院占拠にも加わっていたことが確認されている。

 ミャンマー大使館占拠事件では、ジョニー、ベーダを含む五人の犯人がタイ政府が用意したヘリコプターでラチャブリ県に向かい、国境付近で解放された。この事件直後、ミャンマー政府はタイ政府の対応を不満として、タイ・ミャンマー国境を約二カ月に渡って一方的に閉鎖している。

 チュアン首相は、今回武装グループが病院を標的にしたことを厳しく非難。タイ政府は人道的に難民を保護する用意はあるが、国内で問題を起すことは容認できないと述べた。事件後、複数の大学が行った世論調査でも七割以上の回答者が、犯人を射殺した政府の対応を支持している。



[BANGKOK SHUHO]