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携帯電話業界に地殻変動

シン、デジタルフォンに資本参加の意向


アジアに大型合併の動きも

 タイの携帯電話業界で地殻変動が起きつつある。最大手のアドバンスト・インフォサービス(AIS)を傘下に持つシン・コーポレーションは第三位のデジタルフォンに資本参加すると発表した。デジタルフォンはAISに比べれば矮小だが、競争関係にある携帯電話事業者が他社と提携するということは、今までの常識では考えられなかったことだ。一方で、テレコムアジアが導入したPCTが爆発的にヒット、端末の供給が間に合わない状態が続いている。二〇〇六年の完全自由化を待たずして、携帯電話産業は混沌とした時代を迎えたようだ。

 シンは二四日、タイ証券取引所(SET)に対し、デジタルフォンと資本提携交渉中が進行しており二月にも交渉がまとまる見通し、と報告した。シンはデジタルフォンを梃(てこ)入れすることで、グループの通信・IT事業と相乗関係が生まれることを期待している。シンは資本参加を前提とした経営実態調査に行っており、話し合いがまとまる公算は高い。

 デジタルフォンの加入者数は伸び悩んでおり、経営的にも決して楽ではない状態が続いている。現在の加入者は二十万人程度と、百万人以上の加入者を誇る上位二社には遠く及ばない。デジタルフォンは通信会社サマートとテレコム・マレーシアの合弁会社で、「ハロー1800」ブランドの携帯電話サービスには若年層を中心に約二十万人の加入者がいる。

 一方、AISの加入者は約百二十万人で、基本契約料だけで月間六億バーツの収入がある計算になる。AISにはシンガポールテレコムが二〇パーセント資本参加しており、金融資源は潤沢だ。第二位のトータルアクセス・コミュニケーション(TAC)は百十五万人の加入者を数えるものの、親会社のユナイテッド・コミュニケーション・インダストリー(UCOM)同様、巨額の債務を抱えている。

 AISが事業拡大を急ぐのは、二〇〇六年の通信完全自由化を待たずして、競争激化するのが確実視されるからだ。タイ電話公社(TAT)とタイ通信公社(CAT)が共同出資し、携帯電話会社を設立する計画もあり、上位二社も安泰とはいえない。先日、国家周波数管理委員会が、二〇〇〇メガヘルツ帯を新会社に割り当てる決定を下したばかりである。

 シンとデジタルフォンの提携計画に対しTACは、提携が実現すれば、現在デジタルフォンに提供しているローミングサービスを打ち切ると宣言している。「ローミング」はネットワークが利用不能の場合、自動的に他社のネットワークを利用するという機能で、ネットワーク構築が遅れているデジタルフォンにとって、ローミングができなければ大きな痛手となる。デジタルフォンはTACと同じ周波数帯を使っており、ネットワークもかなりの部分をTACに依存している。

 AISにとってはデジタルフォンと提携することで、デュアルモードサービス(一台の端末で二つの異なる携帯電話ネットワークを利用できるサービス)を提供でき、既存サービスの付加価値も高まる、という思惑があるようだ。

 激しくなる一方の携帯電話戦争の間隙を縫って、日本のPHS技術をベースにしたPCTが人気を呼んでいる。昨年末よりサービスを開始したテレコムアジアの子会社、アジアワイヤレス・コミュニケーションでは、日本から輸入する端末の供給が間に合わず、嬉しい悲鳴を上げている。日本では下火のPHSだが、タイでは通話料が割安なことや、自宅の電話番号が使えるという利便性が受けているようだ。

 アジア全体に視野を広げると、欧米同様、通信企業の大型合併の機運が盛り上がっている。シンガポールテレコム(シンテル)はケーブル・アンド・ワイヤレス(C&W)の香港現法と合併交渉に入っている。シンテルは二十か国で通信プロジェクトに投資するなど、海外進出意欲は盛んで、最近ではドイツテレコムとも提携交渉を進めている。背景には、今年四月にもシンガポールの通信市場が外資に開放されるという危機感があるようだ。

 シンテル、C&W香港、AIS連合の携帯電話加入者総数をあわせると四百万人にのぼり、アジアにも「セルラー・ジャイアント(携帯電話の巨人)」が誕生することになる。




[BANGKOK SHUHO]