移動図書館日記
〜巡回寺子屋教室イサーンをゆく〜
第六章慣れてきた子供たち(第四週)
96年7月22日(月)=午前=ノーンパヨーム小(前編)
すずしい。朝から小雨がぱらついている。移動図書館の巡回がはじまって、こういう天気は初めてだ。午前九時に事務所を出発したとき雨はあがっていたものの、空一面を雨雲がおおっていた。
ノーンパヨーム小学校の正門にちかい老朽校舎はすでに解体されていた。教室をうしなった四年生たちは高床式校舎の下へ移動した。六年生とおなじように、机といすを地面の上にじかに置いて勉強している。臨時の青空教室だ。
同小の先生の話では、校舎の一部が損壊したため取り壊した。政府の予算がおりるのを待って新築する。
午前九時三十分、高床式校舎の下へ全校児童があつまった。
「一・二・三! 口をとじましょう」
クローンゲーオ先生の号令でぴたりとしずかになる。
「おはようございます」
あいさつがすむと、児童たちはおたがい向き合う。
「あいさつの歌。二回!」
子供たちの元気な歌がおわると、クローンゲーオ先生の指示で児童たちはさっそく三班にわかれた。
「いまは午前九時半すぎ。十時四十五分になったら皆ここへもう一度集合してください。たのしい催し物を用意してあります。きょうは雨がふりそうなので、高学年・中学年・低学年ともこの高床式校舎の下で本を読みましょう」
中央部分に一・二年年、その左右にそれぞれ五・六年生と三・四年生がゴザを敷いてすわった。
五・六年生は八〜十人ずつ四つの組になり読書からはじまった。この間にプリッサナー先生が児童をひとりずつ自分のそばへ呼び、声にだして絵本を読ませた。
「読む力がどれだけあるか、文盲の子はいるか、調べてみました。全員きちんと読めていました」とプリッサナー先生。
三十分ほどで読書はおわり、プリント学習にはいった。今回のプリントはクロスワード形式の計算の勉強。たて・よこ五つずつ計二十五のマスがあり、空欄に数字あるいは+|×÷をかきいれてただしい数式を完成させる。表は四つあり、ひとつ終わるとプリッサナー先生に提出して採点してもらう。全部できあがるとプリントの下にあるイラスト風の絵を色鉛筆でぬってゆく。
できあがる速度にかなりの個人差があるが、どの子も正解がかけている。指を折ってかぞえながらマス目に数字をかきこんだり、プリント用紙の裏をつかい筆算しながらかく子などさまざま。
さっそく本を読みだした三・四年生たち。ほとんどの児童が小声にだしているものの、
熱心に読書にとりくんでいる。二十分経過してもだれひとりとして飽きずにしずかに読んでいる。移動図書館の巡回は四週目。だいぶ慣れてきたか。
午前十時をまわると読書はおしまい。つづいて「グー・チョキ・パーの歌」(ジャンケンの歌)の歌詞をニッタヤー先生が黒板にかき、歌の指導がはじまった。
歌詞にあわせて「グー・チョキ・パー」をすばやく手で表現してゆく歌遊び。歌詞をタイ語のまま書くと次のようになる。
「ガーンクライ カイ パーマイ カイ ヌンバイ ソーンバーツ ハーシップ ハーシップ ソーンバーツ ヌンバイ カイ パーマイ カイ ガンクライ」
ガーンクライははさみ(チョキ)、カイは卵(グー)、パーマイは絹の布(パー)の意味。ソーンバーツは二バーツ(バーツはタイの貨幣単位)のことでチョキを、ハーシッ
プは五十バーツでパーをそれぞれあらわす。ヌンバイは(卵が)一個の意で、うたうときには人差し指を一本だけたてる。
歌詞にそってふりつけをいれてゆくと、「チョキ グー パー グー 人差し指一本 チョキ パー パー…」と、たとえばこんな具合になる。
児童たちはニッタヤー先生と三十分ほど「グー・チョキ・パーの歌」をたのしんでからふたたび一・二年生、五・六年生と合流した。
移動図書館の活動で子供たちに人気のたかいのは音楽。毎回かならず歌や歌遊びをとりいれてある。
杉浦 直樹
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