移動図書館日記

〜巡回寺子屋教室イサーンをゆく〜



96年7月11日(木)=午後=クアン小(4)

    ここでクローンゲーオ先生・プリッサナー先生・ニッタヤー先生三人が声をそろえて言った。

 「つぎは小学校の先生にもゲームに参加してもらいましょう」 p> 上級生を担当している男の先生と下級生をうけもっている女の先生が前にたった。

 じゃんけんで男の先生が勝ち、男子チームの先攻ときまった。クローンゲーオ先生が男の子たちにたずねた。

 「どのカードがいいですか」

 「少年の絵のカードにしまーす」

 「制限時間は三十秒です。よーい、はじめ!」

 ニッタヤー先生の合図で男の先生がカードをみながら、たくみにヒントをだしてゆく。 「ここに(といって目を指さす)かけるもの」

 「メガネ!」

 (移動図書館のワゴン車のほうをみながら)「荷物をつむ、あそこにあるもの」

 「車!あっ、ワ、ワゴン車!」

 一回戦の半分の時間だったが、得点は八点にたっした。

 ついで女子チームはアイスクリームの絵のカードをえらんだ。

 「男の子チームはなかなかの成績でした。でも女の子チームも負けていられません。がんばろう!」

 ニッタヤー先生が女の子たち活をいれる。

 「ガンバル、ゾ!」

 女の先生がアイスクリームのカードを手にした。

 「手紙にはるもの」

 「えーと、ほら、あれ、切手!」

 「ここに(と自分の指をさす)はめるもの」

 「あ、あ、あー、指輪!」

 ………

 「ピー」

 三十秒たち、ニッタヤー先生が終了の合図の笛をふいた。

 女子チームも八点と、好成績をあげた。

 クローンゲーオ先生が一・二回戦の得点を全校児童たちに質問した。

 「男の子は九点と八点で合計は何点ですか」

 「十七点!」

 「女の子チームは九たす八点で、合計は?」

 「十七点!」

 「男の子と女の子と同点でした。それでは決着をつけるためにもうひとつゲームをしましょう」

 前にたっている白板に四枚の花形のカードがならべられた。男子チームは黄色、女子チームは紫色のカードを選択。そして男女チームそれぞれから代表の児童がひとりずつ前へでた。カードをふせて前にしてたつ。

 「一、二、三……」

 全校児童たちは声をそろえて数をかぞえてゆく。

 「……八、九、十!」

 ここで同時にカードの裏をあけると┃。

 「爆弾」の絵と「九、九九九」の数字がいっせいに子供たちの目にとびこんできた。男子チームのカードは「爆弾」、女子チームは「九、九九九」で女子チームが勝利をおさめた。

 白板にはまだ二枚のカードがのこっている。花形のカードをつかったゲームは二回戦にはいった。

 男の子たちは赤色、女の子たちは水色のカードにきめた。今回も「一、二……八、九、十!」でカードの裏を表にかえした。

 男子チームはふたたび「爆弾」の絵のカードをつかんでしまった。女の子のほうは「一〇、〇〇〇」で女子チームが二連勝した。勝負がきまった瞬間男女ともたちあがり、喚声をあげたり、拳をふりあげたり、とびあがったり、友人同士手をとりあったりして勝ちをよろこび、負けをくやしんだ。

 クローンゲーオ先生が笑顔で子供たちにたずねた。

 「さあゲームはこれでおしまい、どう?たのしかったかな」

 「はい、とってもおもしろかったです」

 「では、きちんとならんで。あいさつをしましょう」

 「先生!ありがとうございました!」

 子供たちは各教室へ一気に散っていった。上級生の一部がのこり、ゴザをかたづけた。 しばらくすると子供たちはカバンをもって教室からでてきた。下校時間である。

 運動場のあちらこちらにいる子供たちの様子をながめていると、右手のひじあたりにザラザラしたものをわたしは感じた。ふりかえると男の子の坊主頭がすぐ目の前にある。

 アヌーン君だ。

 わたしと目があうと、ニヤリとわらった。自分の体よりおおきなカバンを背負っている。なにか話したそうなので、すこしだけきいてみた。

 「きょうはもう家に帰るのかい?」

 「ハイ、ソウデス」

 「そのでっかいカバンには何がはいっているの?」

 「ノート、デス」

 ちいさい声だが、いたずらっぽい笑顔ではっきりとこたえた。

 まもなく午後三時半。全校児童による下校の式が運動場中央の国旗掲揚塔ではじまる時間だ。アヌーン君もその列にくわわるべく、あるいていった。

杉浦 直樹


[BANGKOK SHUHO]