移動図書館日記
〜巡回寺子屋教室イサーンをゆく〜
96年7月11日(木)=午前=コー小
正門をはいってしばらくすすむと左側にあったずの木造平屋の校舎が三分の二ほどけずりとられていた。コンクリート造り二階建てに新築するという。居場所をうしなった一・二・三年生は食堂を臨時教室としてつかっている。
全校児童は二階建て校舎前の木陰に整列。「あいさつの歌」をおたがいむかいあって斉唱してから、運動場の木陰などへ分散していった。
コー小学校の子供たちは物静かで規律ただしく、しかも優秀だ。たとえば五・六年生。髪・腕・足など身体の名称をイギリス語でかきこむプリント学習はみんなじつによくできていた。すでに巡回した四つの小学校とくらべてみても群をぬいている。
ドーンハーン小学校で全問正解だった子がふたりいたほかは、他の三校とも満点の児童はひとりもいなかった。それに対しコー小学校では三十五人ちゅう全問正解者はなんと八人もおり、そのほかの子供たちもだいたい一問か二問まちがえている程度だった。
三・四年生でおこなった識字率調査でもかなりたかい数字がでた。三年生は九人全員、四年生もほとんどの子供がしっかりと文章を読むことができていた。ニッタヤー先生によると、詳細はつぎのとおり。
◆三年生(九人)
〇=八人
△=一人
×=なし
◆四年生(十三人)
〇=九人
△=一人
×=三人
◎合計(二十二人)
〇=十七人(七七・三%)
△=二人(九・一%)
×=三人(一三・六%)
〇が七七・三%という数字は、対象児童が三人のノーンセーンシラー小学校をのぞくと、調査した七つの小学校のなかではワングン小学校についで二番目にたかい。
文盲(×)の三人の内訳は男児ふたり・女児ひとり。女の子は「知恵おくれ」(小学校の先生の話)で、前回すこしふれた。
小学校の先生によると、この女の子はサッシトーンという名前で、六年生に兄が在籍している。父母が離婚して父はいない。母親と母方の祖父母とすんでいるが、母親も知的障害者である。母親は遠方への出稼ぎでほぼ一年じゅう不在。低賃金・無保証の日雇い稼業に従事している。
両親(あるいは父親か母親のどちらか)が他県への出稼ぎなどで、子供と親が離れ離れの生活をしいられている例はイサーンではめずらしくない。コー小学校も例外ではなく、家庭環境に問題のある児童がめだつ。
サッシトーンちゃんとおなじ四年生に極貧の男子児童がふたりいる。ひとりは両親が出稼ぎへいったきりほとんど帰郷してこない。いつも年老いた祖父母とくらしている。
もうひとりは父母が離婚し、かれをすててどこかへいってしまった。やはり祖父母と生活している。
ふたりとも家庭環境は最悪で、みなし子のような暮らしぶりである。孤独感がただよい、さびしそうで、くらい顔つきをしている。
このほかにも、両親が離婚して父母とも行く方しれずの男の子(六年生)や父親がおらず身体障害者の母親しかいない女の子(五年生)など家庭的にめぐまれていない子供たちはかなり多い。
三班にわかれて読書・プリント学習などをしたあと、午前十一時五分男女対抗戦形式でジェスチャーゲーム。女子チームが先勝すると二回戦目は男子チームが雪辱するなど逆転の連続で、最後は子供たち全員たちあがってゲームにのめりこんでいた。
移動図書館がおわったあと、十人ぐらいのまずしい児童へ古着を贈った。
杉浦 直樹
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