移動図書館日記

〜巡回寺子屋教室イサーンをゆく〜



96年7月10日(水)=午前=ファインヒンラード小(後編)

   一分ほどの瞑想につづいて読書がはじまった。とたんににぎやかになる。熱心に文章を読んでいるのは五人くらい。低学年はぜんぶで二十七人いるが、大半は絵をながめているだけだ。

 そこでクローンゲーオ先生が十人あまりの一年生をあつめて、絵本の読み聞かせをしている。自分では読めない一年生たちもクローンゲーオ先生に読んでもらうと、わき目をふらずに聞いている。

 読書のあとはプリント学習をおこなった。プリントにとりくんでいる最中、男の子がひとりクローンゲーオ先生のところへやってきた。

 「先生、オシッコにいってきます」

 クローンゲーオ先生の許可をもらい、裸足のまま便所へはしっていった。

 時間割表をみればわかるが、イサーンの村の小学校では、昼休みいがい、授業と授業の合間に休憩時間がない。授業ちゅうにのどがかわいて水をのみたいときや便所にいきたいときは先生の許しを得てからゆく。無断で教室をでると、もちろん先生にしかられる。

 午前十時五十分、全校児童が男女ふた組にわかれ、対抗戦でジェスチャーゲームがはじまった。

 クローンゲーオ先生が女子チーム、プリッサナー先生は男子チームの応援についた。笛をもったニッタヤー先生は時計がかり。

 「用意、はじめ!」

 ニッタヤー先生の合図でゲームがはじまった。

 「水などをいれて、ひやすもの」

 「えーと、えー、冷蔵庫!」

 「これ」(と言って右手で電話の受話器をもつしぐさ)

 「でん、電話!」

 「……」(無言のまま両手の親指と人差し指をまるめて円をつくり、目の前にもってくる)

 「メガネ、メガネだ!」

 「朝、水浴びするときにつかうもの」

 「タオル」

 「ちがう、ちがう。ほら、あれだよ、あれ」

 「セッケン!」

 「そのとおり。つぎは、あー、ここよ、ここ。今みんながいる所」

 「……学校!」

 男女チームとも一点をあらそう白熱したゲームを展開している。女子チームの回答数が四個、五個とふえて男子チームの正答数にせまってくると、男の子たちは時間を気にしだし、たちあがって大騒ぎ。

 「ニッタヤー先生! はやく笛をふいて。笛、笛!」

 結局男の子チームの勝利でゲームは幕をとじた。

 移動図書館の活動がおわり児童たちがひきあげると、幼稚部の子供たちが食事のはいったビニール袋や弁当箱をぶらさげて講堂へやってきた。どの子も昼食はもち米とおかず一品。卵焼き・ゆで卵・川魚(体長五センチほど)などが主流で、もち米の量は十分だが、おかずはかなり貧弱だ。しかしみなおいしそうにたべている。

 さてわたしたちも空腹を感じはじめた。急ぎ足で車にのりこみ、食事へむかった。

杉浦 直樹


[BANGKOK SHUHO]