移動図書館日記

〜巡回寺子屋教室イサーンをゆく〜



96年7月9日(火)=午後=コークヤイ小(前編)

  三つのうちから一番おおきな絵をえらんで印をつけるというプリント学習は子供たち全員できていた。ただしぬり絵がやや乱雑だった。ひとつの絵を一色でぬりつぶす子供がめだった。

 一・二年生、三・四年生、五・六年生とも読書になれてきた。一冊の本を読む時間がみじかくなり、読書感想ノートのかき方もしっかりしつつある。  

「口をむすんで。しずかに!つぎは合同でゲームをしましょう」  午後三時、ふたたび全校児童が一堂に会し、クローンゲーオ先生・プリッサナー先生・ニッタヤー先生がジェスチャーゲームの方法について説明した。

 そしてプリッサナー先生が一歩前へあゆみでた。

 「男子チームと女子チームは代表者をひとりきめてください」

 全校児童が拍手をおくるなか、男女チームの代表の男の子と女の子がひとりずつ前にでた。

 正面の白板には五枚のカードがおいてある。それぞれ表にヘリコプター・UFO・傘・少年・アイスクリームの絵がイラスト風にえがかれている。

 「まず先攻・後攻をきめてもらいましょう」

 プリッサナー先生の指示で代表の男女はじゃんけんをした。

 男の子が勝ち、

 「男子チームは後攻でいきます」 と宣言した。

 「男の子チームはどのカードにしますか」

 プリッサナー先生が男児たちによびかけると、男の子たちはヘリコプターの絵のカードをいっせいにゆびさし、大声で言った。

 「ヘリコプター!」

 「それでは女の子たちはどのカードをえらびますか?」

 「アイスクリーム!」

 代表の女の子が白板からアイスクリームのカードを手にとった。

 ゲームの進行役はプリッサナー先生だ。

 「制限時間は一分間です。用意……はじめ!」

 代表の女の子はカードの裏をみながら必死にヒントをだしてゆく。そのたびに女子チームから口々に回答がとびだす。

 豚・電話・飛行機など十問ちゅう八問正解した。

 「女子チームは八点!」

 プリッサナー先生が得点を発表すると、女の子たちは手をたたき、喚声をあげた。

 ついで男子チーム。代表の男の子が声をはりあげてヒントをいい、男子全員が夢中で答えをいう。

 「拳銃をもっている人」

 「えーと、警官、警察官!」

 「毎朝ぼくたちが行くところ」

 「がっ、学校!」

 男子は七問できた。

 「次は小学校の先生にも参加してもらいましょう。だれがいいですか?」

 プリッサナー先生がたずねると、子供たちはふたりの先生の名前をよび、男の先生と女の先生がひとりずつ前へ。

 「二回戦は制限時間を三十秒にします。男の子チームはどのカードにしますか」

 「傘の絵のカードです」

 男子チームを代表して男の先生が傘のカードをつかんだ。男子チームは六つ正解した。 いっぽう女子チームはUFOのカードを選択した。

 「これこれ、これはなに?」(と女の先生は自分のスカートをつまむ)

 「スカート」

 「こういう形でつかうもの」(と女の先生は片手で傘をもつしぐさをする)

 「傘!」

 女子チームも六問正解。プリッサナー先生が子供たちにといかけた。

 「二回戦は男子・女子とも六点です。男の子チームは一回戦の七点といまの六点で合計何点ですか?」

 「十三点!」

 「女の子チームはさっきの八点とこんどの六点をあわせると全部で何点?」

 「十四点、です!」  

「ということは女の子のチームが一点だけ勝っています」

 プリッサナー先生の得点発表の結果に女の子たちはおおきな拍手でよろこぶ。男の子たちはしきりに残念がるが、ニッタヤー先生がすかさず男子たちをはげます。

 「男の子チームのみんな、まだまだあきらめてはだめですよ。最後の大逆転ゲームがのこっているからね。女の子たちも油断禁物ですよ」

 三人の指導員たちが白板にこんどは紫や黄色など花形のカードを四枚ならべた。男女チームとも一枚ずつえらび、「一、二、三……、八、九、十!」で同時に裏をみせた。

 男子チームは「一〇、〇〇〇」、女子チームは「爆弾の絵」。こんどは男の子たちが大喚声と拍手のうず。女の子チームからは悲鳴にちかい声がもれる。

 いよいよ、最終戦。

 「一、二の、三!」でカードをひっくりかえすと、男の子チームのえらんだカードの裏には「九、九九九」の数字が、女の子のほうには「爆弾の絵」が。その瞬間、耳がいたくなるほど迫力のある子供たちの声が学校じゅうにこだました。またまた男の子チームが勝利し、連勝で男子チームが勝負をきめた。

 盛況のうちに午後三時半となった。もりあがったゲームの余韻がのこるなか全校児童はクローンゲーオ先生・プリッサナー先生・ニッタヤー先生にきちんとあいさつして、各教室へひきあげていった。

杉浦 直樹


[BANGKOK SHUHO]