タイの花木走獣

パン吉の夢 26


 寺に行って、パンは救われた。

 寺の療養所に入った当時は薬草カプセルを飲み下すのも一苦労だったという。それが、一週間も経たない内にひもじいとも思うようになり、三度三度の飯を待ち遠しいとも感じるようになった。そして、二週間目にはベッドを降りて歩き始めたのだった。

 その報告を電話で聞いて、私は喜んだ。

 ソムチャイによれば、寺の住職はマラの粉末をパンに飲ませているとのことであった。

 「あの病気にはマラが効くんだそうだ」

 マラは苦瓜である。タイの野原にごまんと自生する苦瓜の中でも住職が選んだのは、マラ・キー・ノクという類で、それがエイズ患者に力をつけると思われていた。

 キー・ノクとは、小鳥の糞であるから、特別に小さい苦瓜なのであろう。

 それがエイズ患者を強壮にさせるというのは、免疫力を回復する力があるのだろうか。

 「小鳥の糞のように小さい苦瓜」の粉末をカプセルにつめた薬を飲む内に、パンは益々元気になり、とうとう家へ帰ることが出来たのだった。

 家に帰ったパンは嬉しそうな声で電話してきた。

 やがてチェンコーンの田舎から届いたEMS便が届いた。包みを開けると、細い小さな字を連ねたお礼の手紙と一緒に薬袋に一杯の 「小鳥の糞のように小さい苦瓜」のカプセルが転がりでた。 「この薬は本当に効きます。ソムチャイ兄さんも首が痛い時には、飲んで見て下さい」

 透明なカプセルを割ると、中には乾草色の粉末が一杯詰められていた。

 指にとって、嘗めてみると、ほのかに苦い。

 良薬は口に苦しか。

 いかにも効きそうな味の草色の薬は、それからしばし「レヌカー・アンド・カンパニー」の薬箱の中で一世を風靡したのだった。      

つづく

レヌカー・M


[BANGKOK SHUHO]