アジアの風に恋をして

APEC研修


 二年間にわたるタイ国での初のAPEC(アジア太平洋経済協力)人材養成技能研修事業が無事終った。労働省の外郭団体である当OVTA(海外職業訓練協会=本部・千葉)タイ事務所は、この事業の事務局だった。

 このプログラムは、一九九五年十一月大阪でのAPEC会合で採択されたもの。APEC域内の日系企業に協力を求め、同企業の有する研修施設を活用し社外の現地人の人々に対して技能を身につけさせ併せて地域社会に貢献する目的で行われた事業である。かかる経費、例えば、設備や教材費用、日本人指導員への諸経費等は、一定限度の範囲で国(労働省)から交付された。

 タイの多くの日系企業の中から実施協力の名乗を挙げたのは、シャープ、キャノン、トヨタ、新日鐡、岡谷鋼機、ダイキン工業の六事業所。APEC人材養成事業としての目的に合う施設、体制といった点の書類審査をパスした各社は、独自に研修生を募集。各事業所先では、小・中卒集団を主として受け入れ研修指導したところ、女性を含む新規の職業訓練校卒を二年間たっぷり教えたところ、また、現職の社外従業員や技術系職員に基礎技術の〃復習〃を徹底的にやったところ等と各社各様であった。

 私は、四月二十二日に行われたキャノン(アユタヤ)の研修修了式に出た。

 ソンポン労働社会福祉大臣を来賓とした式場では、電気技術基礎コース修了の十六名(内女性一名)、機械技術基礎コース修了の十名の緊張した顔があった。が、一方で二年間やりとおしたという満足感の表情も研修修了生の顔から見られた。式次第にのっとり修了証が大臣から直接修了生に手渡された。この修了証には、OVTA代表としての私のサインもある。だから、私も少し気合いが入って見ていた。私は、修了証を大事に胸にかかえる彼らを見て、「一生の宝物にするだろうな」と思った。

 OVTAタイ事務所の所長としてスピーチが回ってきた。決まりきった修了祝辞の挨拶のあと、私は、次の通り言った。

 「修了生の皆さんにお願いします。どうぞ、ここで学んだ勉強と体験を今後の人生に役立てて下さい。そして、当研修をまだ受けることができないあなたの故郷の友人、知人に技術・技能を少しでもいいですから教えてあげて下さい。日本には、同期の桜とか同じ釜のメシを食うということわざがあります。寮生活を通じて知り合えた友をいつまでも忘れないで下さい。たまには、手紙や電話で情報交換してはいかがですか?」

 キャノン現地法人の日本人スタッフのガンバリで、研修修了生二十六名は社外の事業所に就職内定した。今後、彼らの〃その後〃を追う仕事が出てきそうである・・・。      

(OVTAタイ事務所所長)
開原 紘


[BANGKOK SHUHO]