アジアの風に恋をして
しつけ
一月初めの毎日新聞一面左端に、「入学前にしつけして!」、「新一年生の父母に要請 宮城県教委」とした記事があった。私は、「えっ、なにこれ、しつけしてないの(親は)子供たちに?」。意外な見出しに驚いた。リードには、以下のように書いてあった。
「宮城県教委はこの春に小学校に入学する県内の新一年生の父母に向け、今年下旬に行われる入学説明会などの場で、各校長らを通じて家庭でのしつけの要請を行う。小学校で整理整頓ができないなど、『基本的な生活態度があまりにも身についていない』という現場教師の声などを踏まえた初めての措置。今後の小学校の現場運営で家庭と連携を深めることを狙っている。文部省によると、都道府県レベルでの要請は全国初めてという。」
本文には、具体的に書かれている。「県教委は、昨年十二月半ば、県内三四五の公立小学校(政令市の仙台市を除く)校長あてに、『お子さんが健全に成長していくために』と題する文書を配布し、新一年生の父母にしつけを要請するよう通知した。内容は、@基本的な生活態度Aお子さんとの触れ合いB友達との関係―の三つを柱にした計二〇点。特に第一項目の、基本的な生活習慣については、小学校現場の声を反映させたもので、『人の話をきちんと聞ける態度を養う』という点を強調した。これは『席に落ち着いて話を聞けない子が増えている』との教師の実体験を踏まえた。(以下略)」
@、A、Bに書かれた至極当然な内容のことが、改めて入学児童を持つ家庭に県教委から要望として文書で出されたわけで、私は、最近の〃荒れる学校〃と家庭と児童との関係の断絶さの深さを改めてこの記事で思い知らされた。間もなくして、今度は、「AERA」が一月十八日号で、「身勝手な子、非常識な親―家庭のしつけが消えた」とする特集記事を出した。リードには、「親の身勝手さを見習う子どもたち 電車の中、教室、レストランなどで目に余る、子どもたちのマナーの悪さ、傍若無人ぶり。自分のこともできず、周りへの目配りもない。いったい家庭でどんなしつけをしているのか。」
〃しつけレポート〃が「毎日」と「AERA」から出てきていたので、私はタイでのそれに少し関心を持った。関心を持つ時を同じくして、作家の高村薫さんが二月十四日付け毎日新聞の「時代の風」というコラム欄に、「落ち着きがない子供たち 外界への無関心さを投影」とする一文を寄せていた。
私は、タイ人の家庭を一日覗いたことも、寝泊まりしたこともない。あえていうなら、数時間の訪問位である。だから、タイ人の子供のしつけについては、知らない。が、私の秘書(二児の母)が、時たま子供を事務所に連れて来た時など、母親としての彼女は、子供に「ワイ」を執拗にさせる。子供は、言われた通り私に合掌の「ワイ」をする。日本でも、「こんにちは」、「ありがとう」は言わせはする。が、タイ人親のような半ば〃強制的〃に「ワイ」をさせる〃親の権威〃の姿勢なり言い方は、日本人親にはないと思う。タイ人親の方が強いしつけ方に思えてくる。また、タイ人親子の絆の深さを、私は、朝方ジョギング中に見ることがある。それは、小学生はもち論のこと中学生男子でさえ母親と手をつないでおしゃべりしあいながら勤めや学校へ連れ立って行く姿である。込んだバスの中でも、タイ人の若者は高齢者や婦女子にさっと席を譲る。〃しつけの訓練〃は、タイ社会で嫌見なく活かされている。
生まれた時から、小乗仏教の教えに従い人として成長していくタイ人の生活文化とそれとは異なる日本。〃しつけ論〃を同じ土俵で論じることは無理である。が、親が子供をしつける基本の教えは、国籍、信条等には関係ないだろう。今、日本の親と子供との関係は、余りにもぐちゃぐちゃになり過ぎてしまったのだろうか(?)。
(OVTAタイ事務所所長) 開原 紘
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